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アマゾンの二色の川はなぜすぐに混ざらないのか ネグロ川とソリモンエス川

公開日

ブラジルのマナウス近郊では、黒っぽい川と茶色い川が合流し、その後もしばらく二色の帯になって流れます。「混ざらない川」として知られる、ネグロ川とソリモンエス川の合流点です。

ただし、二つの水が油と水のように分離し続けるわけではありません。実際には混ざっていますが、非常に大きな流れが均一になるまでに時間と距離がかかります。色の由来と混合の速さを分けると、写真の不思議な境界を説明できます。

ネグロ川の黒さは、主に水に溶けた有機物の色

ネグロ川の水は、濃い紅茶のような色をしています。森林の落ち葉などの植物由来物質が分解され、色を持つ有機物が水に溶け込むことが、黒っぽく見える主な理由です。

暗い色だから泥だらけ、とは限りません。NASAの解説も、ネグロ川を、土砂が比較的少なく、腐植した植物由来の物質に色付けされた水として紹介しています。

コップの水を絵の具で濁らせる場合と、紅茶を抽出する場合を比べると、違いを想像しやすいでしょう。どちらも見た目は変わりますが、水中を漂う粒子と、水に溶けた色の成分は同じものではありません。

ソリモンエス川の茶色をつくる、上流から運ばれた土砂

ソリモンエス川は、ブラジルでアマゾン川の上流部に使われる名称です。上流のアンデス側などから運ばれた細かな鉱物の粒子を多く含み、白っぽい茶色に濁っています。

ネグロ川の黒と対比して、このような川は白水の川と呼ばれます。しかし、白いペンキのような色を意味する名称ではありません。黒水に比べ、浮遊する土砂によって明るく濁って見える水です。

水の色には、合流点の天気だけでなく、遠い上流の地質や植生が反映されています。ネグロ川とソリモンエス川は、異なる環境を通ってきた水を、一つの場所へ運んでいるのです。

比較する点 ネグロ川 ソリモンエス川
代表的な見え方 紅茶のような暗い色 土砂による明るい茶色の濁り
色の主な由来 溶けた植物由来の有機物 水中を漂う細かな鉱物粒子
合流点までの背景 森林や古い大地を含む流域 アンデス側などからの土砂供給
混合 境界でも進行し、下流へ流れながら広がる
水の特徴の概略。水温や流速、濁りは季節・場所・深さによって変わります。

二つの流れが接しても、瞬時に一色にならない理由

二つの水を小さな容器に入れ、スプーンでかき混ぜれば、すぐに同じ色になります。しかし、大きな河川には、水路全体を同時にかき回すスプーンはありません。横に並んだ流れは、接する部分の渦などによって少しずつ混合します。

分子が自然に広がる拡散だけで、巨大な川幅全体を短時間に均一にすることはできません。流速の違いから生じる渦や、川底の地形による立体的な流れなどが、水を横方向・深さ方向へ運びます。

合流点では、川幅、流量、流速、合流する角度、温度や土砂濃度に関係する密度差などが重なります。水温の差だけで永久に境界が保たれる、という単純な仕組みではないのです。

接することと、均一になることの違い
合流直後異なる水が横に並び、境界で混ざり始める
下流への移動渦や深さ方向の流れが混合を広げる
さらに長い距離水の性質が均されていく

表面に色の境界が残っていても、水中では混合が進行しています。毎日同じ距離で一斉に混ざり終わるわけではありません。

表面に見える境界と、水中で進む混合の違い

空からの写真は、主として水面近くの色を捉えています。表面に二色の帯が残っていても、その下で同じ形の壁が続いているとは限りません。水は、深さによって異なる速さや方向で動きます。

より密度の大きい水が下側へ入り込むことや、川底の形に沿って流れが曲がることも、混合に影響します。密度は温度だけでなく、含まれる土砂などによっても変わります。表面の輪郭だけから、二つの川がどの深さでも同じように分かれているとは判断できません。

そのため、研究では川を横切る断面で水温や電気伝導度、流れなどを測定します。絵のように見える二色の境界を、実際には三次元の水の動きとして調べているのです。

「見た目が変わる距離」と「十分に混ざる距離」

1997年9月の現地観測に基づく2009年の論文は、完全な混合に30時間以上、100キロメートル以上を要するという結果を報告しています。観光写真で目立つ境界が続く区間と、測定で水の性質が均されるまでの区間は、同じ長さではありません。

ただし、毎日必ず同じ地点で混合が完了するわけではありません。水位、流量、二つの川の水量の比、川底の条件によって混ざり方は変わるので、この数値は当時の観測条件で得られた結果として扱う必要があります。

「数キロメートルにわたり二色に見える」という説明と、「物理的な混合にはさらに長い距離がかかる」という説明は、両立しえます。何をもって混ざったと判定するかによって、同じ川でも注目する尺度が変わるためです。

黒い水と茶色い水を、汚染の有無だけで分けられない理由

自然由来の有機物や土砂で、水は大きく色を変えます。黒いから汚染されている、茶色いから生活排水が混ざっている、と見た目だけで決めることはできません。反対に、透明なら人がそのまま飲めるというわけでもありません。

ネグロ川とソリモンエス川の色が異なるのは、主にそれぞれの流域から運んできた物質が違うためです。その土砂は氾濫時に周囲の土地へも運ばれるので、水の性質の違いは川の中だけにとどまりません。

二色の川は、混ざらない特別な液体の実例ではありません。異なる来歴を持つ大量の水が、混ざりながら下流へ運ばれていく途中の姿です。境界が美しく見えることと、混合が進んでいることは、矛盾しないのです。

参考資料

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