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オーロラの色が緑・赤・紫に変わる理由 酸素・窒素と高度の違い

公開日 / 更新日

オーロラは緑だけではありません。高い空に広がる赤、下端に混じる紫やピンク、まれに見える青。色を決めるのは、太陽から来た粒子そのものの色ではなく、粒子が地球大気のどの成分へ、どの高さでエネルギーを渡したかです。

代表的な緑と赤は主に酸素、青や赤紫は主に窒素の発光から生まれます。同じ酸素でも、発光までに必要な時間と、周囲の粒子に邪魔される頻度が違うため、高度によって色が変わります。オーロラの色は、上空の大気を遠くから調べる手がかりでもあるのです。

太陽風から磁気圏へ運ばれるエネルギー

太陽は、電子や陽子を含むプラズマを太陽風として絶えず宇宙へ放出しています。地球の磁場はその流れを受け止め、太陽と反対側へ長く伸びる磁気圏を作ります。

太陽風の磁場と地球磁気圏の状態が合うと、磁気リコネクションと呼ばれる過程を通じてエネルギーが磁気圏へ取り込まれます。蓄えられたエネルギーが解放されると、電子などの荷電粒子が磁力線に沿って極域の上層大気へ降り込みます。

粒子が地球の磁場に直接「吸い寄せられて光る」というだけではありません。太陽風、磁気圏尾部、電流、電場が関わる大規模なエネルギー移送です。その終着点で大気が光る現象がオーロラです。

励起された酸素と窒素が放つ固有の光

高速の電子が上層大気の原子や分子へ衝突すると、相手へエネルギーを渡します。酸素原子や窒素分子は、通常より高いエネルギー状態である「励起状態」になります。

励起状態は永遠には続きません。低い状態へ戻るとき、エネルギー差に対応する波長の光を放ちます。元素や分子はそれぞれ固有のエネルギー構造を持つため、酸素と窒素では現れる色が異なります。ネオンサインや放電管が気体によって違う色を示すのと、基本的な考え方は共通します。

太陽から緑や赤の光が運ばれてくるわけではありません。太陽風が届けるのは発光を起こすエネルギーであり、最終的な色を選ぶのは地球の大気です。

主な発光色は、大気成分と高度の組み合わせで変わる
200km以上100~200km約90~120km
赤:酸素原子発光まで時間がかかるため、衝突の少ない高高度で残りやすい
緑:酸素原子557.7nmの光。最もよく観察される帯
青紫・ピンク:窒素分子・イオン高エネルギー粒子が比較的低い高度まで届いたときに目立つ

高度は代表的な目安です。発光域は連続しており、粒子のエネルギーや大気状態によって重なります。

高度100〜200キロで目立つ酸素の緑

最もよく見られる緑色のオーロラは、主に酸素原子が約557.7ナノメートルの光を放つことで生じます。おおむね高度100〜200キロメートル付近で目立ち、人間の目も緑の光に比較的敏感なため、観察しやすい色です。

この酸素の励起状態は、光を放つまで約1秒ほどかかります。低すぎる高度では大気が濃く、発光前に別の粒子と衝突してエネルギーを失いがちです。反対に高すぎる場所では酸素原子の数が減るため、緑の発光は弱くなります。

つまり、緑色が強い高度には、酸素が十分にあり、衝突で発光を止められすぎないという条件がそろっています。色は元素の種類だけでなく、大気密度との兼ね合いで現れます。

高度200キロ以上に広がる酸素の赤

酸素原子は、約630.0ナノメートルの赤い光も放ちます。この発光に関わる励起状態は、緑の場合より長く、光を出すまで数十秒から百秒ほどかかります。その間に別の粒子と衝突すると、光を出さずにエネルギーを失います。

そのため、赤い酸素発光は大気が薄く衝突の少ない高度200キロメートル以上で生じやすくなります。緑のカーテンの上に、淡い赤が広がることがあるのは、この高度差によるものです。

強い磁気嵐では、低緯度側から赤いオーロラが観測される場合があります。低緯度オーロラのすべてを同じ仕組みで一括りにはできませんが、高高度の赤色発光は遠方からも見通しやすく、空の広い範囲を赤く染めることがあります。

下端の青と紫をつくる窒素

酸素の緑の下側に、紫、青、ピンクの縁が現れることがあります。より高いエネルギーを持つ粒子が大気の深いところまで到達し、窒素分子やイオンを励起したときに目立つ色です。

窒素分子イオンは青紫の光を、窒素分子は赤系の光も放ちます。複数の波長が人間の目やカメラで重なり、ピンクや紫として見える場合があります。高度、粒子のエネルギー、大気組成が連続的に変わるため、色の境界も絵の具の帯のように完全には分かれません。

オーロラの下端が鋭く明るく見えるのは、高エネルギー粒子が到達できる最も低い高度付近で発光が集中するためです。カーテンの縁の色には、降り込む粒子のエネルギー情報が含まれています。

肉眼では白く、カメラでは鮮やかに見える場合

暗い場所で働く人間の視覚は、色より明るさを感じる桿体細胞への依存が強くなります。弱いオーロラは、肉眼では白や灰色の薄雲のように見えても、カメラには緑や赤として写ることがあります。

カメラのセンサーは長時間にわたって光を蓄積でき、赤い波長にも人間の暗所視とは異なる感度を持ちます。スマートフォンの夜景モードも複数の露光を合成するため、画面上の色が肉眼より鮮やかになることがあります。

反対に、十分に明るいオーロラなら肉眼でも緑や赤、動くカーテンをはっきり認識できます。「写真はすべて誇張」「肉眼でも必ず写真どおり」という二つの極端は、どちらも実際の明るさと観測条件を無視しています。

太陽から届いたエネルギーが、大気の光へ変わるまで
太陽風電子・陽子と磁場が地球へ到達
磁気圏磁気リコネクションなどでエネルギーを取り込む
極域へ降下荷電粒子が磁力線に沿って上層大気へ
発光酸素・窒素が励起され、固有の波長を放つ

太陽風がそのまま色を運ぶのではありません。地球大気の原子・分子が受け取ったエネルギーを光として放出します。

オーロラの形を動かす磁力線と電流

光のカーテンが縦に筋を引くのは、降り込む粒子が地球の磁力線に沿って移動するためです。薄い発光層を斜めから見ると、折り重なるカーテンのような形になります。

オーロラは通常、磁極を囲む輪「オーロラオーバル」に現れます。磁気活動が強まると輪が低緯度側へ広がり、ふだん見えにくい地域でも観測されます。地理上の北極ではなく、地球磁場の構造が分布を決めるため、同じ緯度でも見えやすさは同一ではありません。

色が高度と大気を示し、形と動きが磁気圏から流れ込む粒子や電流を映します。夜空の光は、太陽から地球まで続く巨大な電磁環境の末端を、目に見える形へ変えたものなのです。

地球以外の惑星にも存在するオーロラ

磁場と大気を持つ惑星では、地球とは異なるオーロラが生じます。木星や土星には強い磁場があり、極域に大規模な発光が見られます。木星では太陽風だけでなく、火山活動の盛んな衛星イオから供給される粒子も重要です。

大気組成が違えば、発光する波長も変わります。木星や土星の上層大気は水素が主成分で、紫外線で強く輝くため、人間の目で地球の緑色オーロラのように見えるとは限りません。探査機や宇宙望遠鏡は、可視光以外の波長も使って観測します。

オーロラは単なる美しい気象現象ではなく、恒星からの粒子、大気、惑星磁場の関係を調べる方法です。地球の夜空で色が変わる理由を知ると、遠い惑星の磁気環境を光から推定できる理由までつながります。

スペクトル観測で見分ける発光成分

肉眼や写真では複数の光が混ざって見えますが、分光器を使えば波長ごとに分けられます。酸素の557.7ナノメートルや630.0ナノメートルといった輝線を測ることで、どの原子・分子が発光したかを確かめられます。

発光の強さと高度分布を、レーダー、人工衛星、地上の磁力計と組み合わせれば、降り込んだ粒子のエネルギーや磁気圏の変化を推定できます。美しい色の分類が、そのまま宇宙天気の観測データになるのです。

太陽フレアが起きれば必ず特定の色になる、という単純な対応はありません。太陽からの擾乱が地球へ届く向き、磁気圏へ取り込まれる量、粒子のエネルギー、大気の状態によって発光は変わります。色は原因を一つだけ示す信号ではなく、複数の条件が重なった結果です。

参考資料

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