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マダガスカルに固有の動物が多い理由 島の分離と海を渡った祖先

公開日

アフリカの東に浮かぶマダガスカル島には、キツネザルやアイアイなど、ほかでは野生の姿に出会えない動物が暮らしています。アフリカのすぐ隣なら、ライオンやキリンがいる大陸の動物相と似ていてもよさそうです。しかし、海峡は陸上の動物にとって、地図上の距離以上に大きな境界でした。

独特の動物が多い背景には、島の長い孤立があります。ただし、大陸から分かれたときに今の動物の祖先を全部載せていた、というわけではありません。島ができた後、海を越えて到達し、島の中で多様化した系統もあるのです。

大陸からの分離と、動物の到着は別々の出来事

マダガスカルは、巨大大陸ゴンドワナが分裂する過程で、アフリカとのつながりを失いました。その後もしばらくはインドと結び付いていましたが、約8000万年以上前にはインドとも分かれ、長い隔離の時代に入ります。

ところが、現在のキツネザル類につながる祖先が島へ渡った時期として研究で考えられているのは、それより後の時代です。島の分離時期と系統の進化史を比べると、「分かれる大陸に乗って運ばれた」だけでは説明できないことが分かります。

島の分離と、生物の渡来を分ける
大陸の分裂マダガスカルがアフリカから離れ、その後インドとも分離
海を越える移動分離後にも、一部の祖先がまれに島へ到達
島内での多様化環境や集団の隔たりに応じて系統が分かれる

キツネザル類などの渡来を考える基本的な関係です。すべての動植物が同じ経路や時期に到達したわけではありません。

この区別は、島の生物を考える基本になります。陸地がちぎれたことで分かれた生物もいれば、海ができた後に到達した生物もいます。同じ島の動物だからといって、すべてが同じ交通手段、同じ時期にやって来たわけではありません。

海を越えた祖先と、植物の塊に乗る漂流仮説

飛べない小型の哺乳類が、広い海峡をどう渡ったのか。その有力な説明の一つが、洪水などで流れ出した植物や土の塊に乗る漂流です。根が絡んだ大きな塊なら、動物とともに植物や少量の水分を運ぶ可能性があります。

もちろん、これは成功が容易だったという話ではありません。出発した個体の大部分が死に、島へ届いても繁殖できなければ、その系統は残りません。長い時間の中で、少数のまれな成功が起きれば、後の生物相につながりうるという考え方です。

2010年に紹介された海洋循環の研究は、古い時代の海流が、現在とは異なってアフリカからマダガスカルへの漂流を助けた可能性を示しました。ただし、その計算が特定の動物の実際の航海を証明したわけではありません。到達可能性の検証と、渡来そのものの直接証拠は別です。

渡来は一度だったのか、化石が見直したキツネザルの歴史

キツネザル類の祖先が何回島へ渡ったかは、単純に確定した話ではありません。従来は一度の渡来から多様化したという説明が広く使われてきましたが、アフリカで見つかった化石から、アイアイの系統とほかのキツネザルの系統が、別々に到達した可能性を論じる研究もあります。

デューク大学が2018年に紹介した研究は、歯や顎の化石の特徴を比較し、アイアイの祖先について従来とは異なる系統関係を検討しました。大切なのは、アイアイが「変わった姿だから別便だった」と推測したのではなく、形態の比較から進化の枝分かれを組み直したことです。

海を越える出来事そのものは、普通は化石に残りません。研究者は、化石の年代、体の特徴、遺伝情報、地理的な隔たりを組み合わせ、最も筋の通る来歴を探っています。渡来回数まで断定せずとも、大陸分裂だけでは足りないという点は十分に重要なのです。

到着後の多様化を促した、食べ物と暮らし方の違い

祖先が島に到着しても、すぐに多数の種になるわけではありません。集団が分かれ、異なる環境に適応し、長い時間をかけて繁殖上の隔たりなどが生じることで、多様化が進みます。

島では、大陸にいた競争相手や捕食者が同じようにそろっているとは限りません。そのため、到着した系統が利用できる食べ物や空間に、別の余地が生まれることがあります。キツネザル類でも、体の大きさ、活動する時間、食べ物などにさまざまな違いが見られます。

アイアイの細長い指や、木の中の餌を探す行動も、単に奇妙な特徴として並べるより、どの資源を利用する体なのかという関係で捉えると理解しやすくなります。進化は珍しさを目標に進んだのではなく、各環境で生き残り、子孫を残す過程だったのです。

一つの島に並ぶ、湿潤な森林と乾燥した地域

マダガスカルは大きな島で、島内の環境も一様ではありません。東部の湿潤な森林と、南部の乾燥した地域では、雨の量も植生も大きく違います。島の中のどこへ行っても、同じキツネザルや同じ森に出会えるわけではありません。

海が大陸との交流を制限していても、島全体が一つの均質な環境になるわけではありません。地形や気候の違いが島の内部にも集団の隔たりを生み、大きな隔離の内側に小さな隔離が重なることで、多様化の条件がつくられてきました。

過去の自然環境も、全島が一様な深い森だったと決めつけることはできません。2016年に公表されたネズミキツネザルの遺伝情報の研究は、人間が来る以前の環境にも多様な配置があった可能性を示しました。現在の森林保全の重要性と、昔の景観を単純化しないことは両立します。

固有種が多い島で、局地的な変化が大きな意味を持つ理由

固有種とは、特定の地域に自然分布が限られる種です。その範囲が島の中の小さな地域だけなら、そこで起こる生息地の変化が種全体に及びかねません。

長い隔離は、独自の生き物が生まれる条件になりました。一方、ほかの地域から同じ種が戻ってくる可能性も小さくします。マダガスカルの生物相は、古い大陸の名残、まれな渡来、島内での分化が重なった、置き換えの利かない歴史なのです。

参考資料

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