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ドナウ川はどこから黒海へ流れるのか ヨーロッパを横断する流域の広がり

公開日

ウィーンやブダペストを流れるドナウ川は、どこから来て、どの海へ向かうのでしょうか。出発点はドイツ南西部の黒い森、出口は東の黒海です。ヨーロッパ中央部から東部へ大きく横断するため、途中には数多くの国や都市が並びます。

ただしドナウ川の広がりは、地図上の一本の線だけでは表せません。アルプスやカルパチア山脈、バルカン半島の一部に降った水が、支流を通じて本流へ集まります。川そのものと、水を集める範囲である「流域」を分けると、この大河の規模がつかみやすくなります。

黒い森の二つの川から始まるドナウ

ドイツのドナウエッシンゲンで、ブリーガハ川とブレク川が合流し、ドナウ川という名の流れになります。街には象徴的な「ドナウの泉」もありますが、川のつながりを説明する合流点とは同じ場所ではありません。

どこを源と呼ぶかには、川の名前の始まりを採る方法と、最も遠い源流までさかのぼる方法があります。ドナウの場合も、合流点の上流に二つの河川があるため、「一つの泉から全長にわたって同じ名前の川が流れる」という姿ではないのです。

そこからドナウはおおむね東へ向かい、オーストリアなどを経てハンガリーの平野へ進みます。途中で南へ大きく曲がる区間もあり、最短距離で黒海へ直進しているわけではありません。周囲の山地と低地の配置が、道筋を決めています。

本流が接する10か国と、流域を共有する19か国

ドナウ本流は、国の内部を通る場合と、国境をなす場合を合わせて10か国に接します。一方、国際ドナウ川保護委員会が示す流域は19か国にまたがります。この二つの数は、数え方の間違いではありません。

たとえばスイスをドナウ本流が横切ることはありません。それでもスイス東部に源流を持つイン川はドナウへ合流するので、その集水域はドナウ流域の一部です。

水を集める範囲を決めるのは国境ではなく、主として地形の高まりです。ある尾根の片側の雨はドナウへ、反対側の雨は別の川へ向かう。この境目を分水界と呼び、流域の地図では、行政区画とは違うヨーロッパの区切りが現れます。

本流に沿わない土地からも集まるドナウ川の水
ブリガッハ川とブレーク川が合流してドナウ川となり、イン川、ティサ川、サヴァ川などを合わせて黒海へ至る。緑の範囲は支流も含めた流域の概念。

支流を抜粋した接続図です。国境・方位・流域の正確な形や面積は示していません。本流が直接接する国の数と、支流を含む流域の国の数は異なります。

名前の上では支流でも、水量を支える大河

パッサウで合流するイン川は、合流点でドナウ本流を上回る平均流量を持つと、国際ドナウ川保護委員会は説明しています。川の名前が続く側が、常に水量でも大きいとは限らないのです。

さらに中流域では、ティサ川やサヴァ川などが加わります。それぞれが広い範囲の雨や雪融け水を集めるため、ドナウは支流の合流を重ねながら性格を変えます。源流の小川をそのまま拡大しただけの流れではありません。

山地で雪が解ける時期と、別の支流域で雨が多い時期は必ずしも一致しません。下流の水量には、上流一か所の天候ではなく、広い流域の異なる条件が組み合わさって表れます。

平原と峡谷で変わる、川の流れ方

国際ドナウ川保護委員会は、流域を上部・中部・下部に分けています。上部は源流からブラチスラヴァまで、中部はそこからセルビアとルーマニアの国境にある鉄門峡谷のダム群まで、下部はその先の黒海側です。

山地に近い区間と広い低地では、河床の勾配も、流れが広がれる幅も違います。平野では蛇行や氾濫原が発達しやすく、山地を抜ける峡谷では流路が絞られます。現在はダムや河川改修も加わり、自然の勾配だけで水の動きが決まる状態ではありません。

一本の川を上流・下流という距離だけで分けるより、どの地形を通り、どの支流が加わるかで区切ると、都市、農地、湿地の配置にも理由が見えてきます。

黒海の手前で枝分かれするドナウ・デルタ

黒海へ近づくと、ドナウ川はキリア、スリナ、スフントゥ・ゲオルゲという主要な分流へ分かれます。その周囲には湖や湿地、細かな水路が広がり、一本の川の終点というより、水と陸が入り組んだ地域になっています。

デルタは、川が運んだ土砂の堆積によって発達します。ただし上流で土砂がどれだけ運ばれるか、ダムにどれだけとどまるか、河口で波や流れにどう動かされるかによって、形は変わります。

ここへ届くのは、水だけではありません。上流から運ばれた土砂や栄養分も、河口の環境に関わります。黒海沿岸の湿地を守るために、海から遠い国々の河川管理が重要になるのは、19か国にまたがる流域が一つの水系で結ばれているためなのです。

参考資料

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