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ニカラグア湖にサメが来られるのはなぜか 海へつながる川と生物の移動

公開日

ニカラグア湖とカリブ海を結ぶサン・フアン川は、海のサメが湖へ入る道にもなっています。この道を利用するのが、オオメジロザメ。塩分の低い水にも適応できる体を持ち、川を通じて海と湖を行き来するサメです。

「昔の海が湖になったとき、サメだけが閉じ込められた」という説明は魅力的ですが、少なくとも現在の移動の仕組みを説明するものではありません。海側で標識を付けたサメが湖で、湖の出口で標識を付けたサメが海岸で見つかっています。往来は、推測だけでなく調査で確かめられてきたのです。

湖からカリブ海へ続く、サン・フアン川

ニカラグア湖は中米の大きな淡水湖で、地図では太平洋にも近く見えます。しかし、自然の流出河川であるサン・フアン川が向かう先は、反対のカリブ海側です。海までの直線距離が短い方向と、水が流れ出す方向は一致しません。

川を海へ下れば、淡水から河口の汽水、さらに海水へと環境が変わります。逆に湖へ向かうには、サメは川を上流へ進まなければなりません。水の流れは湖から海へ、生物の移動はその両方向へ。この二つの矢印を分けることが、湖と海の関係を理解する出発点です。

湖の出口の川が、サメの海との往来路になる
左の湖から右のカリブ海へ川が続く。水の流れを青、サメの双方向の移動を赤で示す概念平面。

湖と川の形・長さを再現した地図ではありません。赤矢印は個体を追跡した軌跡や現在の個体数ではなく、標識調査で確認された往来の方向です。

別種の淡水ザメではなく、塩分変化に耐えるサメ

オオメジロザメは、ニカラグア湖にしかいない種ではありません。大半のサメが海を主な生息域とする一方、この種には淡水と海水の両方を利用できる能力があります。湖での存在を説明する鍵は、孤立した歴史より、塩分の変化を越えられる生理機能です。

淡水では、体の外より体液の方が濃いため、水が体内へ入りやすくなります。塩類は失われやすく、その調整も必要です。海にいるときと同じ働き方のままでは、体内の水と塩分の釣り合いを保てません。

2019年の実験研究では、飼育したオオメジロザメを低塩分環境へ移し、腎臓などの遺伝子発現を調べています。塩類の輸送に関係する仕組みの変化が確認され、淡水への適応を支える生理機能が検討されました。単に「丈夫なので淡水でも平気」という話ではないのです。

標識の再発見が示した、双方向の往来

研究者トーマス・ソーソンらは、1966年以降、標識を使って移動を追いました。1976年の報告では、カリブ海側の河口域で標識を付けた1,450個体のうち10個体がニカラグア湖で再発見されています。

反対方向にも証拠がありました。湖から川が流れ出すサン・カルロスで標識を付けた146個体のうち、28個体がカリブ海沿岸で見つかったのです。湖から出られないという説明では、この結果を説明できません。

ただし、これらは当時の調査結果であり、現在の湖の個体数ではありません。また、標識個体のうち再発見された割合を、そのまま移動する全個体の割合とみなすこともできません。見つからなかった個体の移動先や生存状態までは、この数字だけでは分からないためです。

往来できることと、多数が暮らすことの違い

海と湖の接続があっても、湖内のサメがいつも豊富とは限りません。移動路の環境、漁獲、河口での生活など、複数の条件が集団の状態に関わります。1982年のソーソンの論文は、この水系のサメとノコギリエイが漁業から受けた影響を扱っています。

したがって、過去に有名だった「サメのいる湖」という呼び名だけから、現在も湖のどこでも容易に出会えると考えるのは適切ではありません。歴史的な移動の証拠と、現在の生息数の把握は、別の調査課題です。

陸の中の湖を、海から切り離さない地理

地図の青い水面が別々でも、生物の行動範囲まで完全に分かれるとは限りません。間の川が移動可能なら、湖と海を同じ個体が利用できます。その通路を開く条件の一つが、塩分の変化に耐える体の仕組みです。

ニカラグア湖のサメは、湖が昔の海だったという物語の証拠ではありません。淡水と海水の境界を越えられる生物が、現在の川を利用する例です。地形の接続と生物の能力が重なることで、陸の奥に見える湖まで海の生物の行動範囲が延びています。

参考資料

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