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メキシコの銅渓谷は一つの谷なのか 火山台地を刻んだ複数の川と峡谷

公開日 / 更新日

メキシコ北西部の「銅渓谷」は、一本の川が刻んだ一続きの谷ではありません。西シエラマドレ山脈の高地を、複数の川と支流が深く削り込んだ峡谷群です。バランカ・デル・コブレという個別の谷の名が、周辺の壮大な峡谷地帯を指す呼び名としても使われています。

そのため、ある展望台で見える谷底が、別の展望台から見た川へそのまま続くとは限りません。高原を一枚の板、峡谷を一本の切れ込みと考えるより、枝分かれした水系が山地を切り分けた姿を思い浮かべると、景観の成り立ちがつかめます。

ひとつの名前の下に集まった、別々の峡谷

チワワ州政府の案内には、ウリケ、シンフォロサ、バトピラス、カンダメーニャなど、複数の峡谷が登場します。「銅渓谷」という総称だけでは、それぞれの川や谷の位置関係までは分かりません。

たとえば、狭い意味でのコブレ渓谷とタラレクア渓谷はウリケの峡谷へつながります。しかし、周辺の名高い峡谷すべてが、一つの河川の支流というわけではありません。観光上の地域名と、雨水が同じ出口へ集まる流域は、違う範囲を指す場合があるのです。

火山が積み上げた岩を、川が削った順序

深い谷の両側をなす岩には、大規模な火山活動で生じた地層が広く分布しています。ただし「溶岩台地」という言葉から、どろどろの溶岩だけが積み重なった光景を想像すると、重要な部分を取り違えます。

西シエラマドレでは、火山灰や軽石などを含む火砕流の堆積物が大きな割合を占めています。その中には、高温のまま堆積した粒子がくっつき、溶結凝灰岩になったものも。溶岩だけでなく、こうした火砕物も含む厚い岩の積み重なりが、峡谷の土台です。

川は、その岩の層を後から掘り下げました。谷壁に何段もの帯が見えるのは、一度の洪水が模様を刻んだからではありません。岩をつくった時代の違いと、それを露出させた侵食の歴史が、一つの断面に重なっています。

一本の長い峡谷ではなく、水系が山地を切り分ける
上から見た概念図。支流がそれぞれ合流する二つの水系と、その間の分水界を描く。峡谷群の総称は、一つの流域とは限らない。

銅渓谷の実測地図ではありません。川の数・配置・出口は説明用で、すべての峡谷が同じ河川へ合流するという意味ではありません。

谷が枝分かれするのは、水が集まる道筋のため

山地に降った雨は低い方へ集まり、小さな流れから、合流先の大きな川へ移ります。その流路は、細い枝を一本の幹へ集めたような形。川が長い時間をかけて岩を削ることで、谷も同じ網目に沿って深くなっていきます。

水系と水系の間に残る尾根は、雨水の行き先を分ける分水界です。尾根のすぐ両側に落ちた雨でも、同じ川へ向かうとは限りません。谷へ入った後は、別々の長い経路をたどる場合があります。

深い峡谷は、単に川が大きいという条件だけでは説明できません。下流へ向かう落差、岩の割れ目、侵食されやすさ、地殻の動きなども関係します。岩をつくる作用と、川が掘り下げる作用は、働いた時期も仕組みも異なります。

崖や滝に表れる、岩の強さの違い

同じ火山性の地層でも、固まり方や割れ目の入り方は一様ではありません。侵食に耐える層が上に残り、その下が削れれば、急な崖や張り出しが生まれます。川の縦断方向に硬い段差が残る場所では、滝になり得ます。

カンダメーニャの峡谷にあるバサセアチ滝は、この地域の深い谷と火山性岩盤を結びつけて考えられる場所です。ただし、峡谷全体を一つの滝が後退してつくったと考える必要はありません。支流の侵食や斜面の崩落も、谷の幅と輪郭を変えてきました。

地図では近くても、移動には大きな上下差

峡谷を隔てた二つの地点は、平面の地図では隣り合って見えます。ところが、その間を移動するには、谷へ下りて川を渡り、反対側を登るか、尾根に沿って大きく回り込まなければなりません。直線距離と移動の難しさが一致しにくい地形です。

また、高原と谷底では標高が大きく異なり、気温や植生の条件も変わります。崖の上からの一つの眺めに、縦に並ぶ異なる環境。銅渓谷の広がりを知る手掛かりは深さの数字だけではなく、川の合流点、分水界、谷壁の地層にもあるのです。

参考資料

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