ジャマイカのコックピット・カントリーには、急な丘と、その間のくぼみが繰り返し現れます。多数の火口が並んだ場所でも、隕石が落ちた跡でもありません。石灰岩が水に溶け、地下へ排水する場所と、周囲に残る岩の丘が発達したカルスト地形です。
谷底をたどれば必ず川へ出られるような地形とは違い、周囲を丘に囲まれたくぼみが数多くあります。水が地表の川だけを通らず、岩の中へ入ることが、この独特な輪郭を生んでいます。
川に沿った一本の谷ではなく、閉じたくぼみの集まり
普通の河川がつくる谷では、低い場所が下流へ連続し、支流の谷も本流へ合流します。一方、コックピット状のくぼみでは、周囲は斜面に囲まれたまま。集まった雨水の出口が、地表の谷として下流へ続いているとは限りません。
水の出口が地表の谷として明瞭でなくても、地下への通路があれば排水できます。地下へ水が抜ける地形では、谷を一方向に伸ばすだけでなく、くぼみを深めたり広げたりする作用が働きます。
特定の地下水系の測量図ではありません。線は割れ目や通路をまとめた概念で、くぼみがすべて洞窟の天井崩落でできたという意味でもありません。
二酸化炭素を含む水が、石灰岩の割れ目へ
雨水は大気から二酸化炭素を取り込み、土の中でも、根や微生物の活動に由来する二酸化炭素に接します。この水に溶け得るのが、石灰岩の主要成分である炭酸カルシウム。岩の成分が水に入り、別の場所へ運ばれる反応です。
強い工業的な酸を流し込まなくても、自然の水は長い時間をかけて石灰岩を変えます。ただし、岩の表面全体が同じ速さで薄くなるわけではありません。割れ目や水の集まる場所で溶解が進み、通り道が広がると、さらに水が集中しやすくなります。
くぼみの間に残った、急な石灰岩の丘
水が集まる低い部分の溶解や侵食が進むと、その間の岩体が丘として残ります。丘が一本ずつ押し上げられたと考える必要はありません。周囲が低くなれば、残った部分は相対的に高くなるためです。
コックピット・カントリーでは、こうした丘と閉じたくぼみの組み合わせが広く繰り返されます。熱帯の石灰岩地帯を代表する景観ですが、同じ石灰岩でも、地層の厚さや割れ目、地下の水位、雨の条件が違えば、全く同じ形になるとは限りません。
また、くぼみをすべて洞窟の天井が落ちた穴として説明するのも不正確です。カルストには崩落による地形もありますが、地表からの溶解や斜面の変化だけでも、低い場所は広がっていきます。
地表の分水界と、地下水の行き先のずれ
丘の上から眺めれば、どちらのくぼみへ雨が流れ込むかは分かります。しかし、地下へ入った後の水は、岩の割れ目や通路、下にある通水性の異なる層に従って移動します。地表の尾根だけでは、その先の水の行き先を決められません。
西インド諸島大学の地質学的な説明では、石灰岩の分布や下位の地層、構造が、水の流れを考える重要な条件とされています。景観の似た範囲と、一つの地下水系の範囲、行政上の保護区域は、目的の違う境界なのです。
水が地下へ抜ける地形でも、起こり得る浸水
地下に出口があるからといって、どれほど雨が降っても水がたまらないわけではありません。流入が地下の通路から排出できる量を上回れば、地下水位が上がり、低いくぼみへ水が現れ得ます。
排水口のある容器でも、入る水の方が多ければ水位が上がるのと同じ関係です。ただし、天然の通路は一本の管ではなく、岩の割れ目や空洞が組み合わさったもの。場所ごとの反応は、そのつながり方によって異なります。
コックピット・カントリーの丘とくぼみは、地表だけの彫刻ではありません。目に見えない地下の排水が、目に見える地形をつくる過程の一部です。川が少なく見える場所でも、水の働きまで小さいとは限らないのです。