バハマの衛星写真では、小さな島々よりも、その周囲に広がる水色の海が目立ちます。しかも、水色は海岸から均等に薄まるのではなく、ある場所で急に濃い青へ切り替わっています。
この模様の下にあるのが、炭酸塩の堆積物でできた広大な浅い海の台地です。島は、そのごく一部が海面から顔を出した場所にすぎません。水の色をつくる光の性質に、海底の高さと砂の成り立ちが重なって、バハマ特有の景観が生まれています。
島々の周りに沈む、グレート・バハマ・バンク
バハマには、グレート・バハマ・バンクやリトル・バハマ・バンクと呼ばれる浅海域があります。ここでいうバンクは海底の浅い高まりで、地質学的には、炭酸塩の堆積物が積み重なったプラットフォームに当たります。
海上に出た島だけを地図で追うと、互いに離れた陸地の集まりに見えます。しかし海岸線のところで、大きな地形が終わるわけではありません。島と島の間へ続く台地のうち、現在の海面より高い部分だけが、陸として見えているのです。
台地の縁から外れると、海底は深い海へ落ち込みます。そのため海の表面には、水色から濃い青への明瞭な境界が現れますが、そこに水を仕切る壁があるわけではありません。
実測断面ではなく、水深・傾斜・島の高さは任意です。光線は海底から戻る成分だけを示します。下段はウーイドの内部構造の模式図で、実際の粒径や層数、個々の粒の形状を再現していません。
白い海底と短い光の道がつくる水色
浅い海では、太陽の光が底へ届き、砂などで反射・散乱した一部が水面へ戻ります。バハマの明るい炭酸塩の砂は、海底から多くの光を返す条件をつくっています。
ただし、白い砂の上だから、そのまま白く見えるわけではありません。光は往復する間に水の影響を受け、赤い波長などが吸収されやすいため、青や緑を含む色が目立ちます。
深い海になるほど、海底へ届いて再び戻る光は少なくなります。浅瀬の明るい底を見ている状態から、水の中での吸収や散乱が主になる状態へ変わることが、台地の縁で色が切り替わる大きな理由です。
サンゴのかけらだけではない、海中で育つ砂粒
バハマの砂を、すべて砕けたサンゴだと考えるのは正確ではありません。貝や有孔虫などの殻、石灰質の藻類の破片に加え、ウーイドと呼ばれる小さな丸い粒も重要です。
ウーイドは、中心の粒の周りに炭酸カルシウムの層が重なった砂粒です。岩山から砕かれて運ばれる砂とは違い、海の中で鉱物が付加され、粒そのものが育つ過程を持ちます。
その形成には、水の化学的条件だけでなく、微生物の働きも関係すると研究されています。では、砂が集まる場所も、そうした条件だけで決まるのでしょうか。実際には、粒を動かす波や流れの強さが砂の浅瀬の分布を左右し、粒を生み出す作用とは別の役割を果たします。
潮の流れがつくる、砂の筋と青い水路
広い水色の中にも、細かな筋や曲がりくねった濃い青が見えます。海底が一枚の平らな板ではなく、砂の起伏や、水が通り抜ける水路を持っているためです。
潮の満ち引きで動く海水が島や浅瀬の切れ目へ集中すると、堆積物が動かされ、周囲より深い水路が保たれます。NASAが紹介したロング島西側の写真でも、明るい潮間帯を、濃い青の水路が切る様子が確認できます。
また、暗い模様がすべて深い穴を意味するわけでもありません。海底の植生などで戻る光が変わるため、水深だけから海の色を一意に決めることはできません。バハマの模様には、海底の形と、表面を覆うものの両方が映っています。
浅瀬がつくる堆積物と、台地が広がる長い時間
表面の白い砂の下には、過去に積もった炭酸塩の地層があります。現在の浅瀬は、古い地形がただ水没しているだけでなく、新たな堆積物がつくられ、周囲へ運び出される場所でもあります。
海洋掘削計画の調査では、グレート・バハマ・バンク西側の斜面から試料を採り、海面の変動と堆積の関係が調べられました。台地が海に覆われていた時期には、浅海で生じた物質が斜面へ供給されやすく、露出した時期には、その供給が弱まる傾向が認められています。
海面が下がれば浅瀬が陸になり、上がれば再び海の堆積の場になる。そうした変化を繰り返しながら、台地は上へ積み重なるだけでなく、縁の外側へも広がってきました。
水色の輪郭に表れる、海面下の地理
バハマの水色は、単に水がきれいであることを示す色ではありません。光を返す浅い海底が広く続いていること、その底を明るい炭酸塩の物質が覆っていることが、同時に効いています。
さらに、その砂は生き物の殻や海中で成長する粒に由来し、潮が筋や水路へ配り直しています。小さな砂粒をつくる働きが、長い時間を経て、宇宙からも区別できる海底の台地につながっているのです。
地図に描かれる島だけでは、バハマの大きさや形はつかみ切れません。海に沈んだ部分まで含めて見ると、水色の広がりこそが、この地域を支える地形の大部分だと分かります。