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サルーム・デルタはなぜ海より塩辛くなるのか 乾燥と潮がつくる逆河口

公開日

川を上流へさかのぼれば、海の塩気は薄くなる。多くの河口では自然な予想ですが、セネガルのサルームでは逆の傾向が現れます。内陸側の水が、海より塩辛くなるのです。

これは塩の濃い川が山から流れてくるためではありません。淡水の供給が乏しい一方で、広い水面から水が蒸発し、潮によって海水が入り込む。水と塩の出入りの不均衡が、「逆河口」と呼ばれる環境を生みます。

普通の河口と反対になる、塩分の勾配

上流から淡水が届く一般的な河口では、内陸へ向かうほど塩分が低くなります。ところがサルームでは、この並び方が逆になるのです。内陸の水路から海へ近づいたのに、水はむしろ塩辛くなくなる。淡水が海水を薄める河口とは、塩分の勾配が反対になっています。

「逆」は、川全体が一日中逆流するという意味ではありません。指しているのは主に塩分分布と、それを保つ水の交換です。潮の満ち引きによる往復運動と、長い時間で見た水・塩の収支を分ける必要があります。

蒸発するのは水で、塩は残る

水面から蒸発するとき、溶けた塩まで同じ割合で空へ去るわけではありません。水が減れば、残る水の塩分濃度は高くなります。そこへ雨や川の淡水が十分に入れば薄まりますが、供給が少なければ濃縮が進みます。

サルームでは河川からの淡水流入がきわめて小さく、潮が内陸の水路まで海水を運びます。ここで蒸発分を補うのは、塩を含まない水ではありません。海水が入り、水だけが蒸発して塩は残るという出入りが、海より高い塩分を生むのです。

蒸発と弱い淡水供給が、逆向きの塩分勾配をつくる
海と内陸水路を平面で示し、水蒸気として失われる水を上向き矢印で重ねた概念図。潮流は双方向で、内陸側に塩が濃縮する。

地理的な形と塩分値の実測図ではありません。逆河口は常に上流へ流れる意味ではなく、雨季と乾季で塩分や流れが変わります。

水路、島、マングローブが広がる平坦な土地

サルーム・デルタは、一本の川と単純な河口だけではありません。島々の間を水路が巡り、マングローブや干潟が広がります。UNESCOは、この環境と、漁労や貝類の採集を続けてきた人々の歴史を一体の文化的景観として評価しています。

枝分かれした浅い水域では、海からの距離、淡水の小さな流入、蒸発の影響が場所ごとに違います。したがって、デルタの塩分を一つの数字で表すことはできません。「海より塩辛い場所がある」と「どこも常に同じ濃さ」は、別の話です。

干ばつの影響と、雨が戻ってからの変化

1927〜1987年の記録を解析した研究では、雨の少ない時期に塩分が高まり、過去数年の降雨との関係も認められました。その年の雨だけで水域が完全に入れ替わるわけではなく、以前から蓄えられた水と塩の状態が後へ残ります。

一方、2020年に公表された観測研究では、サヘルの大干ばつ期と比べ、降雨の回復に伴って平均的な塩分が低下したと報告されています。それでも、調べたサルーム水域では上流側ほど塩分が増す逆河口の性質が続いていました。濃さの程度が変わることと、分布の向きが変わることは同じではありません。

デルタという名前だけでは分からない水の働き

デルタと聞くと、大河が大量の土砂を海へ押し出す姿を思い浮かべるでしょう。しかし、地形に付いた呼び名から、現在の淡水供給の強さまで決めることはできません。過去にできた地形の上で、別の水の収支が働いている場合があります。

サルームの特徴は、海と陸の境目なのに、海水の方が薄める側に回り得ることです。塩分を決めるのは、海に近いか遠いかだけではなく、どれだけ水が入り、どれだけ水だけが失われるか。その収支が、河口の常識を反転させています。

参考資料

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