グアテマラのセムク・チャンペイでは、段々に並ぶ青緑の水たまりの下を、大きな川が流れています。写真に写る静かな水面と、その下を通るカアボン川は、同じ水が単純に段を下りている姿ではありません。岩の橋を隔てて、異なる経路の水が上下に重なっています。
上の池を満たすのは、周辺の山から来る湧水や小さな流れ。一方、カアボン川の主流は岩の下へ入り、下流側で再び姿を現します。セムク・チャンペイの不思議は、色よりもまず、この二階建ての水の道にあるのです。
大きな川の上に横たわる、石灰岩の自然橋
カアボン川が岩の下へ入るエル・スミデロは、川の終点ではありません。流れは天然の石灰岩の橋の下へ続きます。その上面に並んでいるのが、縁で区切られた青緑の池です。
自然橋といっても、人が渡る細いアーチだけを想像すると実際の関係をつかみにくいでしょう。広い岩体が主流の上を覆い、その表面が別の水の通り道になっている構造です。上から眺めるだけでは、主要な流量がどこを通っているか見落としがちです。
橋の実測断面ではなく、池の数や地下通路の形を単純化しています。上の水も下流側で川へ加わり、増水時の状態はこの図と異なり得ます。
上の池を満たすのは、周囲の森から来る水
グアテマラの保護地域評議会CONAPは、池を潤す周辺の森林内の水源を説明しています。地形の高い側から流れ込む水が、橋の表面にあるくぼみを満たし、縁を越えて隣の池へ移ります。
ここで、主流と池の水を完全に無関係な二つの水系と考えるのも適切ではありません。上の水も下流側で川へ加わり、増水などの条件によって見える状態は変わります。大切なのは、平常時の上の池が、そのままカアボン川の全流量を受け止めているわけではないという区別です。
石灰岩と水の関係は、削るだけではない
石灰岩の主成分である炭酸カルシウムには、二酸化炭素を含む水に溶ける性質があります。雨水が土や割れ目を通るたびに、少しずつ広がる水の道。こうした溶解が、石灰岩地帯に洞窟や地下の流れを発達させる一因です。
一方、溶けていた成分が条件の変化によって再び沈殿し、岩をつくることもあります。水は石灰岩を減らすだけでなく、別の場所で固体として残す場合もあるわけです。ただし、この一般的な性質だけから、セムク・チャンペイの橋全体がいつ、どの順序で完成したかまで断定することはできません。
同じ場所でも変わる、水面の色と見え方
池の青緑色は、液体そのものに一定の塗料が入っているような色ではありません。水の深さ、透明度、底の見え方、入射する光などが、観察した色へ関係します。日差しや雨の前後によって、写真の印象が変わるのもそのためです。
また、上の池が静かに見えることと、下の主流が穏やかであることは別問題です。水面の広さや明るさだけでは、岩の下へ集中する流れの力は分かりません。二つの流れの経路を区別すると、美しい池のすぐ近くに強い流れがあることも、不思議ではなくなります。
景観を支えるのは、池の縁より外側の地形
池が水を保つには、上流側や周辺からの供給が必要です。水源のある斜面、森林、岩の割れ目は、写真の中心から外れていても、池とつながる環境の一部です。
この場所を「段々になった川」とだけ説明すると、主流の経路も、水源の役割も抜け落ちます。上には森からの小さな流れ、下には地域を貫く大きな川。二つを隔てる岩の橋があるからこそ、セムク・チャンペイでは、静かな水面と力強い流水が同じ場所に共存しているのです。