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タンガニーカ湖はなぜ細長く深いのか 断層で沈んだ大地にたまる水

公開日

タンガニーカ湖は、東アフリカを南北に長く走る青い帯です。細長い形だけでも目を引きますが、最大水深は約1470メートル。湖面の広さだけでは想像しにくいほど、深い水を抱えています。

この形をつくったのは、大地が引き伸ばされるときに生じた断層です。ただし、地面が一気に裂けて空洞ができ、そこへ雨が落ちたという話ではありません。岩盤の塊がずれ、傾き、複数のくぼみが連なってできた湖なのです。

東アフリカ地溝帯の西側に延びる、細長い湖

東アフリカの地溝帯は、一本の直線ではなく、枝分かれした帯状の地形です。タンガニーカ湖はその西側の枝にあり、周囲には高い山地や急な斜面が迫っています。

地殻が横へ引き伸ばされると、岩盤はどこまでも均一に薄くなるわけではありません。割れ目に沿ってずれが起き、その片側が相対的に下がることがあります。こうした正断層が並び、低い帯をつくった場所に水がたまりました。

湖が長いのは、断層によって沈降する範囲が長く延びているためです。川の蛇行跡や火山の火口にできる湖とは、水を受け止める器のつくり方が異なります。

片側に深く傾く「半地溝」という器

地溝の図では、両側の断層に挟まれた中央のブロックが、水平なまま沈む形がよく描かれます。しかし、タンガニーカ湖の地下はそれほど左右対称ではありません。

反射法地震探査などで調べると、主な断層の側へ深く傾いた盆地がいくつも認められます。このような構造が「半地溝」です。傾いた床の深い側と、比較的ゆるやかに上がる側では、岸の形も土砂のたまり方も違ってくるでしょう。

さらに、湖に沿って進むと、深くなる側が切り替わる場所があります。一つの巨大な溝ではなく、向きや発達の歴史が異なる器がつながっているのです。水面は続いていても、その下の岩盤まで同じ形とは限りません。

主な断層に向かって傾く、タンガニーカ湖の半地溝
上は左の断層側へ深くなる盆地、下は右の断層側へ深くなる別の盆地。湖に沿う位置が変わると、主な断層と傾いた床の向きも変わる。

湖の異なる区間を横から切った模式図です。上下は過去と現在ではありません。湖底の堆積物は上段の一部だけに簡略表示し、実際の水深や断層角度を再現していません。

深い盆地を隔てる、水面下の高まり

半地溝同士のつなぎ目には、周囲の深い盆地より高い岩盤が残ることがあります。タンガニーカ湖の調査では、こうした高まりや複雑な断層の接続が確認されてきました。湖底には、いくつもの深い部分と、それを隔てる地形があるわけです。

これは湖岸の風景にも関係します。主な断層に近い急な岸では、斜面から落ちてくる土砂が限られた場所にたまりやすくなります。一方、ゆるやかな側や盆地の端では、川が広い流域から土砂を運び込める場合があるでしょう。

その結果、同じ湖の中でも、粗い礫が多い場所、砂が広がる場所、細かい泥が沈む場所に分かれます。地殻の動きは湖の外形だけでなく、湖底の環境をも区分しているのです。

水深よりさらに下に続く、厚い堆積物

湖が深くなれば、周囲から流れ込む土砂は底に積もります。それなら長い時間のうちに埋まってしまわないのでしょうか。重要なのは、土砂がたまる一方で、断層運動によって器自体も変わってきたことです。

地震波を使った研究では、湖底の下に数キロメートルに及ぶ堆積物がある部分が示されています。現在の水深は、水面から泥などの表面までの距離。地殻が変形してできた盆地の深さ全体とは違います。

堆積物は単なる埋め草ではありません。粒の大きさや化学成分、生物の遺骸を調べることで、過去の雨や湖の状態を探れます。ただし、場所ごとに土砂の供給や沈降の歴史が違うため、一本の試料が湖全体の出来事をそのまま代表するとは限りません。

深い水が、魚のすめる水とは限らない理由

深く巨大な湖なら、底まで魚がすんでいるのでしょうか。タンガニーカ湖では、深い部分の水は酸素に乏しく、表層と同じような環境ではありません。

暖かい表層水と、それより冷たい深層水には密度差があり、上下の水が混ざりにくくなります。表面から供給される酸素が深くまで届きにくい一方、沈んだ有機物の分解では酸素が使われる。この釣り合いが、水中の生き物の分布を制約します。

風による混合や深い水の湧き上がりは、表面付近へ栄養塩を戻す働きも担います。2010年の湖底堆積物の研究では、表面の温暖化と成層の強まり、栄養供給や生産性の変化との関係が検討されました。湖の深さは、水量の話だけで終わらないのです。

海につながる出口があっても残る、深い湖

タンガニーカ湖の水は、ルクガ川を通じてコンゴ川水系へ流れ出ます。出口のある湖ですが、それによって底まで水が抜けるわけではありません。出口より低い盆地に水が残るからです。

浴槽にたとえるなら、底の栓を抜くのではなく、側面の高い位置に出口がある状態に近いでしょう。ただし、現実の湖では流入、蒸発、水位、出口の地形が変わり、一定の水面を保証する装置があるわけではありません。

細長い外形は断層の延び方、深さは沈降と堆積の歴史、水の量は流入と流出の釣り合いに関係します。タンガニーカ湖の青い帯には、地殻の運動と水の循環という、異なる仕組みが重なっているのです。

参考資料

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