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東アフリカの湖はなぜアルカリ性になるのか 火山の大地と蒸発する水

公開日

東アフリカには、岸が白い塩に縁取られ、水が強いアルカリ性を示す湖があります。ケニアのマガディ湖や、タンザニアのナトロン湖などです。「火山の近くにあるから」と言いたくなりますが、それだけでは十分な説明になりません。

重要なのは、岩石から何が水に溶け込むか、水と一緒にその成分が外へ出られるか、蒸発がどれほど進むかという三つの条件です。水だけが空へ去り、溶けた成分が湖に残る。その繰り返しが、普通の雨水からは想像しにくい湖の化学をつくります。

「塩辛い」と「アルカリ性」は別の性質

まず、塩分が高いことと、アルカリ性が強いことは同じではありません。塩分は水に溶けている塩類の量に関わり、酸性・アルカリ性は水素イオンの状態を表すpHなどで扱います。

海水では塩化ナトリウムに関係するイオンが大きな割合を占めるのに対し、ソーダ湖ではナトリウムとともに、炭酸イオンや炭酸水素イオンが重要になります。したがって、ソーダ湖の水は、海水を濃くしただけの水と同じではありません。

「塩湖」という広い分類の中に、化学成分の異なる湖が含まれているわけです。白い結晶が岸にあるという見た目だけで、同じ塩が同じ過程でできたと判断することはできません。

雨水が岩石に触れることで始まる、成分の供給

湖へ入る水は、純粋な水のままではありません。雨が土や岩石に触れ、地下を通り、川となって流れる間に、鉱物との化学反応によって成分を取り込みます。火山岩が広がる東アフリカでは、その岩石の性質が水質に関わります。

地下で温められた水が湧き出す場所では、温泉なども成分の供給源になります。ただし、すべてのソーダ湖で温泉が同じ割合を担っているわけではなく、雨水の流出や地下水などの寄与は湖ごとに違います。

大切なのは、蒸発は成分をゼロから生む作用ではないという点でした。もともと水へ入った物質があり、それが外へ出にくい場所に集まることで、濃い水へ変わっていくのです。

出口のないくぼみで、水だけが失われる過程

地溝帯では、断層や火山活動によって水を受け止めるくぼみが生まれます。そこから外へ流れ出す川がなく、蒸発が大きな出口になっていれば、水に溶けた成分は取り残されやすくなります。

鍋で塩水を煮詰めると濃くなるのと、基本的な質量の釣り合いは似ています。ただし、湖では水と成分が入り続け、地下への流出や鉱物の沈殿もあるため、単純に同じ塩水を煮詰めるだけではありません。

雨の多い時期には薄まり、乾いた時期には濃くなる。水位の上下と成分の変化が重なるため、一回の測定値を、その湖のいつでも変わらない性質と考えるのは適切ではないのです。

流入・蒸発・鉱物の沈殿が変える湖水の組成
岩石から成分を取り込んだ水が湖へ入り、水分は蒸発する。カルシウムなどが鉱物として沈殿すると、水に残る成分の比率が変わり、条件によってナトリウムと炭酸塩に富む水になる。

ソーダ湖形成に関わる代表的な過程の模式図です。すべての塩湖が同じ組成になるわけではありません。結晶や矢印の量は測定値ではなく、温泉・地下水などの経路は省略しています。

濃くなる途中で、一部の成分が先に抜ける理由

水が蒸発すれば、すべての成分が同じ割合で増えるのでしょうか。実際には、濃縮の途中で溶けきれなくなり、鉱物として沈殿する成分があります。

ソーダ湖へ向かう変化では、カルシウムやマグネシウムが炭酸塩などとして水から取り除かれ、残る水がナトリウムと炭酸塩に富む場合があります。すべての成分が同じ割合で濃くなるわけではありません。蒸発と沈殿が組み合わさることで、水の量だけでなく、成分同士の比率まで変わるのです。

2023年の東アフリカの塩水を扱う研究では、炭酸イオンと炭酸水素イオンの比やpHが、どの鉱物がどの順序で結晶化するかに関わることが検討されました。白い塩の地面には、濃縮の程度だけではない化学的な履歴が残っています。

同じ地溝帯でも淡水を保つ、ナイバシャ湖

東アフリカの湖がすべて強いアルカリ性の塩湖になるわけではありません。ケニアのナイバシャ湖は、地表に明瞭な流出河川がないにもかかわらず、淡水湖として知られています。

その説明に欠かせないのが、地下への流出です。湖水が地下水系へ抜ければ、水とともに溶けた成分も運び出されます。地図に青い川の出口が描かれていなくても、水文学的に完全に閉じているとは限らないのでした。

国際湖沼環境委員会の資料や地下水の研究は、ナイバシャ湖と周辺の帯水層の関係を扱っています。湖岸の形だけでなく、地下の岩石が水を通すか、どちらへ水が動くかまで考える必要がある例です。

過酷に見える水に成立する、独特の生態系

強いアルカリ性で塩分も高ければ、一般的な淡水の生き物には暮らしにくい環境です。しかし、生き物が全くいないわけではありません。そうした条件に適応した微生物の集団があり、光合成や有機物の分解などを担っています。

2019年に報告されたソーダ湖の微生物研究では、遠く離れた湖でも共通する微生物群が検討されました。住める生物が限られることと、生物活動が乏しいことは別なのです。

東アフリカのアルカリ性の湖は、火山、断層、水の流れ、蒸発、化学反応が重なった場所です。見た目には似た白い岸でも、その背後にある水の出入りを比べると、淡水湖との違いまで説明できるようになります。

参考資料

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