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ニジェール川はなぜ内陸で大きく曲がるのか 砂漠の縁へ向かう川の地理

公開日

ニジェール川は、西アフリカの湿潤な高地から出発し、いったんサハラ砂漠の縁へ向かいます。そこから大きく曲がって南東へ進み、最終的には南のギニア湾へ。海に近い所から始まるのに、なぜこんな遠回りをするのでしょうか。

川は、海へ最短で到達する経路を計算して流れているわけではありません。その時点の地面の傾きに従い、長い地形の歴史によってつながった水路を進みます。ニジェール川の大きな曲がりには、湿潤な水源地、乾いた内陸、古い排水網という三つの事情が重なっています。

海の近くから、海に背を向ける上流

ニジェール川の水源域はギニア高地にあります。大西洋へ向かって西や南へ下る川もある一方、ニジェール川は内陸側へ向かう斜面を集水域として、北東へ流れます。

水が上り坂を選んでいるわけではありません。地図では海までの直線距離が短くても、その間に分水界があれば、水は直接向かえないのです。屋根の一方に落ちた雨が、すぐ近い反対側の雨どいへは流れないのと似ています。

湿潤な高地で集めた水があるからこそ、下流の乾燥した土地にも大きな川が流れます。川岸の雨の少なさと、水面の広さは矛盾しません。上流と下流の異なる気候を、水路が結んでいるのです。

海に着く前に現れる、マリの内陸デルタ

マリの傾斜の小さい土地では、バニ川などの水も加わり、流れが多数の水路、湖沼、湿地へ広がります。これが、海のない場所にできた「内陸デルタ」。海岸でなくても、川の運ぶ水と土砂が広い低地へ分かれれば、デルタと呼ばれる地形が育つのです。

洪水期には、ふだん陸地だった場所まで水が届き、草地や湿地の範囲が変わります。その水はすべて失われるのではなく、一部が再びまとまって下流へ向かいます。海で終わる河口デルタとは、この点が違うでしょう。

川の本流を一本の細い線で示す地図では、この「いったん広がる区間」が見えにくくなります。実際のニジェール川は、同じ幅の水路が曲がりながら続くものではないのです。

内陸デルタへ広がり、砂漠の縁から海へ曲がるニジェール川
南西の湿潤な源流域から北東へ進み、内陸デルタで分かれて広がる。砂漠の縁付近で大きく曲がり、南東へ進んでベヌエ川を合わせ、ギニア湾へ至る。

川と気候帯の関係を示す模式図です。北が上ですが、国境、距離、河道、気候境界の正確な位置は表していません。内陸デルタの水路数や湿地の大きさも概念的です。

水は遅れ、量も変わる、湿地の通過

内陸デルタへ入った水は、浅く広い面へ分かれて移動します。上流で降った雨の影響が、そのまま同じ月に下流へ届くわけではありません。水を蓄える場所があるため、増水の波に遅れが生まれます。

広い水面からは水が蒸発し、湿地の植物からも蒸散によって大気へ戻ります。支流の水を合わせた分だけ、下流の流量が必ず増えるわけではありません。内陸デルタは、水を受け取り、しばらく蓄え、その一部を大気へ返す場所でもあるのです。

2022年の洪水期を紹介したNASAの衛星画像では、乾いた時期と比べて大きく緑が広がりました。これはその場所の雨だけで草が増えたというより、上流から到着した水が湿地の植生を支えた姿です。

トンブクトゥの近くで向きを変え、南東へ

内陸デルタを過ぎた川は、トンブクトゥ付近の砂漠の縁へ達し、東から南東へ向きを変えます。その後、ニジェール、ベナンとの国境付近、ナイジェリアへと続きます。

大きな曲がりがあるからといって、その地点に現在も水を回転させる特別な力があるわけではありません。地形の低い道筋がその向きにつながっており、水はそれに沿って流れます。北へ流れる区間と南へ流れる区間のどちらも、局所的には下流へ向かう勾配を持っています。

乾燥地に近づいた川が再び湿潤な地域へ戻ると、支流からの供給も増えます。ナイジェリアではベヌエ川という大きな支流が合流し、最終的にはギニア湾の河口デルタへ達します。

二本の古い川がつながった、だけでは終わらない形成史

この不思議な流路には、もともと別々だった排水系がつながったという説明があります。川が上流側へ谷を削り進め、隣の水系の水を取り込む「河川争奪」などは、実際に大きな流域を組み替える作用です。

ただし、ニジェール川について、いつ、どこで、どの区間がつながったかは、研究ごとに復元が異なります。曲がった形だけから、一回の争奪が最近起きたと決めることはできません。

2016年の研究は、古い風化面や地形面を年代と結び付け、現在につながる主要な排水配置が、少なくとも約2900万年前には成立していたと論じました。これは、大きな曲がりを比較的新しい出来事だけで説明する見方に対して、長期的な安定性を重視する解釈です。

遠回りの流路に残る、大陸の古い起伏

川の進路は、今日の雨だけで毎年引き直されるものではありません。大地の隆起や傾き、削られにくい岩盤、過去につながった谷などの影響を受けながら、既存の通り道を使い続けることがあります。

ニジェール川では、湿潤な水源地から乾燥した内陸へ水を運ぶという現在の働きと、その進路をつくった長い地形史が同居しています。内陸デルタでの蓄水と蒸発、下流の支流による増水も、その途中で加わる過程です。

海までの距離だけなら遠回りでも、川にとっては、すでにつながっている低い道筋です。地図上の大きな曲がりは、水の気まぐれではなく、大陸の起伏と排水網が受け継いできた履歴を表しています。

参考資料

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