赤い砂丘の上に草が生え、ところどころに低木や大きな木が立つ。カラハリの写真は、砂漠と聞いて思い浮かべる一面の裸地とはずいぶん違います。それでも、名前が間違っているという話ではありません。
カラハリには強く乾燥した地域だけでなく、草原や樹木のあるサバンナも広がっています。広大な砂の分布、雨の少なさ、地表に水が残りにくい性質が重なった土地なので、「砂があるか」と「植物が育つ水があるか」を分けると、この景色の成り立ちが分かります。
カラハリ砂漠と、カラハリの砂が覆う範囲
まず、カラハリという地域名が示す範囲と、気候分類で砂漠とされる範囲は一致しません。南部アフリカの広い盆地を覆う砂の地帯は、より雨の多い北側へも続いており、その上には低木林や樹林を交えたサバンナがあります。
ボツワナ政府の生物多様性報告も、カラハリでは地表水が極めて乏しい一方、草や低木が育つことを記しています。植生のない場所だけに「砂漠」という地域名が付いているわけではないのです。
砂は地面をつくる材料で、乾燥は水の供給と失われ方に関する条件です。砂質の土地にも雨は降り、根の届くところへ水分が残れば植物は育ちます。砂の厚い層があるという事実だけで、その土地が一年を通して無植物になるとはいえません。
南西から北東へ変わる雨の量
カラハリの景観が一様でない大きな理由は、雨の量が場所によって違うことです。南部のカラハリに位置するカラガディ越境公園だけでも、南アフリカ国立公園局は年平均降水量を南西部の約120ミリから北東部の約350ミリと説明しています。
これは、カラハリ全域を120〜350ミリの範囲に収める数字ではありません。同じ公園の中でも乾燥の度合いに幅があり、さらに北の砂質地帯では、より多くの雨を受ける場所もあるということです。
雨は主に暖かい季節に集中し、乾いた期間が長く続きます。年間の合計が同じでも、小雨が細かく降る場合と、まとまった雨の後に長い無降雨期間が来る場合とでは、植物が使える水の時間配分は違います。平均雨量だけで、毎年の草の量まで決まるわけではありません。
水たまりのない地面にも残る、砂の隙間の水分
砂は比較的大きな粒でできているため、粒と粒の間へ雨水が入りやすい土壌です。地表を流れて川へ集まる水が少なくても、地中へしみ込む水までないとは限りません。
浸透した水の一部はさらに下へ移動し、一部は粒の周囲や細かな隙間に残ります。植物が利用するのは、目に見える池や川の水だけではなく、こうした根の周囲の水分でもあるのです。
もちろん、砂は水を無限に蓄える万能の貯水槽ではありません。降った量、砂の粒の細かさ、地中の層、蒸発散の強さによって、どの深さにどれだけの水分が残るかが変わります。
水の移動を示す模式断面です。根の形と深さ、水分の分布は実測値ではなく、植物種や場所によって違います。青い点は砂の隙間の水分で、地下の空洞や連続した水面を表していません。
カラハリ南部の砂丘を調べた2022年の研究でも、砂の中の水分や塩化物の分布は単純な「古い雨の年表」になっていませんでした。水の移動と混合、植生、場所による雨の違いが重なるためです。地表が乾いて見えるときにも、地下では水の履歴が入れ替わっています。
木は深く、草は浅く、とは限らない根の分布
乾燥地の木は、すべて長い根を地下深くの水まで伸ばしているのでしょうか。実際の植物の水の取り方は、それほど一様ではありません。
ボツワナのカラハリで木本植物の根を調べた2012年の研究では、調査した多くの地点で根の量が地表近くに集中していました。少なくとも、その場所の木々を一律に「深い地下水を吸う植物」と説明することはできないのです。
木の根にも浅い部分があれば、草と水を取り合う範囲は重なります。雨が降った直後に使える水、乾燥が続いてから届く水、地中に蓄えた資源の使い方は植物によって違うため、背丈だけから根の深さや生存戦略を決めることはできません。
草木が砂丘をつくる風の働きを変える関係
カラガディ越境公園では、砂丘に適応したイネ科の草や低木が広がり、場所によってはキャメルソーンなどの木も見られます。草木は砂の上にただ乗っているのではなく、その砂が動く条件にも関わっています。
地面近くを吹く風は、茎や葉に遮られると速さや乱れ方が変わり、砂を運ぶ力も変化します。根は地中の粒を結び付けるため、植物が十分にある砂丘では、裸の砂丘ほど表面全体が動きやすいとは限りません。
逆に、草が減って裸地が広がれば、同じ風でも動ける砂が増える可能性があります。ただし、その先を「必ず砂漠化する」と直結させることはできません。砂の移動には風の強さや湿り気も関係し、雨の多い年に植生が回復する場合もあるからです。
乾いた川床と緑が同居する風景
カラガディを流れるノソブ川やアウオブ川は、普段は水のない川床として知られています。川の線が地図に描かれていることと、そこを一年中水が流れていることも、同じではありません。
まとまった雨による流れがごく限られた期間にしか生じなくても、周辺の植物はその土地に残る水分を利用できます。動物の集まる草地や木陰があるからといって、人間がどこでも容易に飲み水を得られる土地というわけではないのです。
カラハリの緑は、砂漠という名前の例外ではありません。雨の届く量と季節、砂の中での水の動き、植物の根の働きがつくる、乾燥地そのものの多様な姿です。赤い砂と草木が同じ写真に収まることに、この土地の水環境がよく表れています。
参考資料
- ボツワナ政府:生物多様性条約第1次国別報告(カラハリの砂、植生、地表水の特徴)
- SANParks:Kgalagadi Transfrontier Park — Climate(公園内の降水量の地域差)
- SANParks:Kgalagadi — Major Features(砂丘の植物と乾いた川床)
- SANParks:Kgalagadi — Natural & Cultural History(砂に覆われた盆地と河川の特徴)
- Bhattachanほか(2012):Evaluating Ecohydrological Theories of Woody Root Distribution in the Kalahari(木本植物の根の実測)
- Stoneほか(2022):Reconstructing rainfall using dryland dunes(南部カラハリの砂丘内の水分移動と観測)