インド洋に浮かぶセーシェルの海岸では、白い砂浜のそばに大きな花崗岩が露出しています。遠く離れた海の島なら、海底火山が成長してできたのだろうと思うかもしれません。けれども、マヘ島などの花崗岩の島々は、その説明には収まりません。
これらの島の土台は、インド洋が開く過程でマダガスカルやインドから切り離された、古い大陸地殻の一部です。周囲が海であることだけでは、海底火山由来とは判断できません。現在の陸地の小ささとは対照的に、島には大陸の長い歴史が残っています。
火山島の玄武岩とは違う花崗岩
花崗岩は、マグマが地下で比較的ゆっくり冷え、石英や長石などの結晶が育ってできた岩石で、大陸地殻で広く見られます。もともと砂浜で固まったわけではありません。地下でできた岩が、長い侵食などを経て地表に現れているのです。
一方、海洋の火山島では玄武岩質の溶岩が大きな役割を果たします。ただし、岩石を一種類見れば地殻の性質が必ず決まる、というほど単純ではありません。セーシェルでは花崗岩の年代に加え、地震波や重力の調査が、地下に厚い大陸地殻があることを裏付けています。
約7億5000万年前の岩と、ずっと若い海
セーシェルの花崗岩の多くは、約7億5000万年前に形成されたものです。これは、現在のインド洋ができるよりはるか昔に当たります。砂浜にある岩の年齢を、その島が今の海に孤立してからの年月と取り違えてはいけません。
2001年の年代測定研究では、調べた花崗岩類の年代の大部分が約7億4800万〜7億5500万年前に集まりました。鉱物が持つ放射性元素を使って調べるのは、主に岩石が形成された時期です。大陸が分裂した時期や、海岸で岩が露出した時期には、それぞれ別の証拠が必要になります。
マダガスカルとの分離、その後のインドとの分離
セーシェルは、かつてゴンドワナ大陸を構成した地域の一部でした。大陸分裂は一度に全部の境界で起きたのではありません。マダガスカルとインド側の陸塊が離れ、その後、インドとセーシェルの間にも新しい海底が生まれました。
2008年の研究は、海底の磁気の縞模様や地震探査、岩石の年代を組み合わせ、インドとセーシェルの間の組織的な海底拡大の開始を約6340万年前と推定しました。大陸が引き離されると、その間にマグマ由来の新しい海洋地殻がつくられます。海の上に花崗岩の塊が浮かび、単独で流れてきたわけではありません。
新しい海底の岩石には、形成時の地球磁場の向きが記録されます。地球の磁場は過去に何度も逆転しているため、海底に残った磁気の並びを既知の逆転年代と照合すると、海底拡大の時期を推定できる仕組みです。花崗岩の年齢だけでは分からなかった分離の年代に、周囲の海底から迫れるようになりました。
大陸分裂の概念を示す模式断面です。二つの地域の現在位置や地殻の実測厚さを再現したものではありません。海面の変動や複数段階の裂け目の移動は省略しています。
小さな島の地下に続く、厚い大陸地殻
2013年の研究では、島々に設置した地震計の記録と重力データを使い、セーシェル台地の下に約30〜33キロメートルの厚さの地殻があると推定しました。地震波は岩石の境界で速度や伝わり方を変えるため、地表から直接見えない地下構造を調べられます。
海面上に出ている島だけを地図で囲むと、大陸の断片もその小さな面積しかないように見えるでしょう。しかし、断片のかなりの部分は海面下に続いています。陸地か海かは水面との高さの関係であり、大陸地殻か海洋地殻かは岩石や地下構造の違いなのです。
セーシェルの島すべてが花崗岩ではない理由
セーシェルという国には、花崗岩の島だけでなく、サンゴ礁に由来する石灰岩や砂からなる島も含まれます。政府の生物多様性資料も、中央の花崗岩の島々と、南や南西へ広がるサンゴ性の島々を区別しています。同じ国の島だから、同じ方法でできたとは限りません。
地下の調査でも、セーシェル台地を外れた島々のすべてに大陸地殻が確認されたわけではありませんでした。2013年の研究は、アミラント列島北部のデロッシュ島付近に大陸物質の存在を示唆する一方、ほかの地域については同じ証拠がないとしています。国境の範囲を、そのまま一枚の大陸片の輪郭に置き換えることはできないのです。
大陸の分裂は、二つに割れるだけではない
大陸の分裂は、一本の線に沿って左右へ離れるだけとは限りません。裂け目や海底拡大の場所が変われば、その間に小さな大陸片が取り残されることがあります。セーシェルは、単純な二分割では表せない分裂史を調べる手掛かりなのです。
また、分裂の時期に近隣で大規模な火山活動があったからといって、花崗岩の島自体がその火山活動でできたとはいえません。古い岩の成立、大陸の切り離し、現在の島の姿を順に区別すると、砂浜の岩がインド洋よりずっと古いことにも矛盾はなくなります。
参考資料
- Tucker et al.(2001):U–Pb geochronology of Seychelles granitoids: a Neoproterozoic continental arc fragment(公開抄録)
- Collier et al.(2008):Age of Seychelles–India break-up(著者所属大学の研究記録)
- Hammond et al.(2013):The extent of continental crust beneath the Seychelles
- セーシェル環境担当省:Status and Trends
- セーシェル環境担当省:Species(島々の地質と生物多様性)