アメリカ西部を横断する地図を見ると、太平洋の海岸からロッキー山脈までには、さらに別の山地や盆地が広がっています。プレートの境界で大地が押し合って山になるのなら、なぜ山脈はこれほど内陸まで入り込んでいるのでしょうか。
有力な説明は、かつて北米大陸の下へ沈んでいた海洋プレートの角度にあります。地下深くへ急に潜らず、浅い角度で大陸の下に入り込んだため、変形を引き起こす力が海岸から遠くまで及んだ、という考え方です。ただし、カナダからアメリカ南西部へ続く山系全体を、一度の出来事だけで説明することはできません。
海岸沿いの山脈とは別に並ぶ、内陸の高山帯
ロッキー山脈は一本の細い稜線ではなく、多数の山地と、その間の盆地からなる広い山系です。アメリカ国内でも北部・中部・南部では地質構造が異なり、ワイオミングのように大きな盆地を挟む地域もあります。
そのうち、中部・南部の主要な山地を高くした出来事として重要なのが、白亜紀末ごろから古第三紀にかけてのララミー造山運動です。場所によって開始と終了は異なりますが、南部ではおよそ7000万〜4000万年前の隆起が大きな役割を果たしました。今の海岸線ではなく、当時の大陸西縁と地下の動きを考える必要があるのです。
浅く潜り込んだファラロンプレート
当時、北米大陸の西にはファラロンプレートという海洋プレートがありました。これは現在の太平洋プレートを、そのまま過去へ延ばしたものではありません。大部分が大陸の下へ沈み込み、地表から姿を消したプレートです。
沈み込む板の傾きを緩くしたら、何が変わるでしょうか。急角度なら内陸へ進むほど深く潜りますが、浅い角度では、大陸側のプレートに近い深さを長い距離にわたって進めます。両者の相互作用が内陸まで及び、地殻を縮める変形につながった、というのがこのモデルの骨格です。
ここでいう「浅い」は、地表すれすれという意味ではありません。地下の巨大な構造を比較した表現です。板が山の真下で直接岩を突き上げる、という図だけを想像すると、地殻の中で広く力が伝わる点を見失ってしまいます。
角度の違いを比べる模式断面です。実測断面ではなく、プレートの厚さや深さ、変形の範囲は縮尺どおりではありません。浅い板が山を直接突き上げることを示す図ではなく、アメリカ中部・南部ロッキーの形成を考える代表的なモデルです。
地層だけでなく、古い岩盤まで動いた造山運動
山づくりには、堆積した地層が薄い敷物のように折れ曲がる場合もあれば、その下の厚い岩盤まで断層に沿って動く場合もあります。ララミー造山運動による内陸の山地では、後者の「基盤岩」を巻き込んだ隆起が目立ちます。
基盤岩は、地層を下から支える古い火成岩や変成岩などです。圧縮を受けてその一部が断層沿いに持ち上がると、上に載る地層も傾いたり、曲がったりしました。山の周囲に急傾斜した地層が現れるのは、山体の変形が周囲まで及んだ証拠の一つです。
隆起した場所の隣には、相対的に低い盆地も生まれました。山を削った川は、その土砂を盆地へ運び込みます。高い山と堆積物の厚い盆地は別々の偶然ではなく、同じ造山運動の両側の姿なのです。
岩石の年齢と、山脈の年齢の違い
ロッキー山脈の古い岩石からは、山が隆起した時期よりはるか昔の年代が得られます。古い本を昨日作った棚に載せても、本まで昨日生まれたことにはならないでしょう。岩石が形成された時期と、それが高所へ持ち上がった時期にも、同じような区別が必要なのです。
さらに、現在の山脈に先立ち、約3億年前には「祖先ロッキー山脈」と呼ばれる別の山地がありました。それは侵食を受けて失われ、地域によっては後に浅い海に覆われています。今のロッキーは、同じ山が3億年間そのまま高く残ったものではありません。
昔の山を削った堆積物が地層となり、後の造山運動で再び高所へ運ばれることもあります。山の一部をつくる岩の中に、さらに古い山の破片が入っているわけです。
持ち上がった大地を、川と氷河が彫り直すまで
ララミー造山運動でできた起伏が、現在の鋭い峰や深い谷と同じ形だったわけでもありません。その後の地域的な隆起や断層運動に、川の侵食と氷河の作用が重なりました。南部では、地殻が引き伸ばされるリオグランデ地溝帯の形成も後の地形に関わっています。
氷河は既存の谷を広げ、山腹を削りました。雪や氷が去った後には、深い谷や切り立つ斜面が残ります。大地を高くする作用と、その高い大地を削って輪郭をつくる作用は、分けて考えると分かりやすいでしょう。
内陸の山から復元する、失われたプレート
ファラロンプレートを当時の姿のまま地表で眺めることはできません。そこで研究者は、断層が動いた年代、変形の広がり、火山活動の位置などを照合して、地下で何が起きたかを復元しています。浅い沈み込みは有力な枠組みですが、山系の各地域でどのように力が伝わったかまで、すべて一様に確定したわけではありません。
海岸から遠いロッキーの位置は、プレート境界と山脈の関係に対する例外として片付けるより、地下の板の傾きを知る手掛かりになります。地表に残った山並みが、すでに沈み込んだ海洋プレートの動きを伝えているのです。