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アパラチア山脈はなぜロッキーよりなだらかなのか 古い山脈と侵食の時間

公開日

北米大陸の東を走るアパラチア山脈には、丸みを帯びた峰と長く続く尾根が目立ちます。西のロッキー山脈の険しい姿と比べれば、「古い山なので削られた」という説明はもっともらしく聞こえるでしょう。

ただ、山脈の年齢だけで現在の形が決まるなら、同じ年代の山はすべて同じ高さになるのでしょうか。実際のアパラチアには深い峡谷や急斜面もあり、長い侵食時間だけでは説明しきれません。削られやすい岩と残りやすい岩、地盤の上下動、川が谷を掘る速さの違いも、地形に刻まれています。

大西洋が開く前、大陸同士が衝突した場所

現在の北米東岸は大西洋に面していますが、アパラチアの主な造山運動が起きたころ、ここには別の大陸との衝突帯がありました。古生代の複数回の衝突を経て、最後にはアフリカ側の大陸と北米側が接し、超大陸パンゲアの一部になったのです。

岩石には、そのときの圧縮の跡が残っています。厚い地層が折り畳まれ、断層沿いに古い岩が若い地層の上へ押し上げられました。地下の熱と圧力で性質の変わった変成岩も、山脈の長い形成史を物語ります。

後に大陸が分裂し、大西洋が開き始めると、同じ場所で大陸同士が押し続ける時代は終わりました。ロッキーの主要な隆起よりずっと以前から、侵食を受ける長い時間が続いてきたわけです。

山を丸くする、斜面と川の共同作業

雨水との化学反応や、割れ目に入った水の凍結などで岩石が壊れ、その粒や岩塊が斜面を下って川に運び去られる。山から物質が失われるのは、こうした一連の過程によります。岩をもろくする風化と、その場所から取り除く侵食・運搬が組み合わさるのです。

川だけが細い溝を掘るのではありません。谷へ向かって斜面が崩れたり、土がゆっくり移動したりするため、谷の幅も広がります。こうした作用が長く続けば、鋭い起伏が和らぐ場合があります。

ただし、侵食の結果は常に平坦化とは限りません。山頂が低くなる以上の速さで川が谷底を掘れば、峰と谷の高低差はむしろ拡大します。「侵食が進む」と「なだらかになる」は、同じ意味ではないのです。

山を削る二つの働きと、起伏の違い
上段は山の斜面が削られて丸くなる例。下段は山頂がわずかに低くなる一方、川が谷底を大きく下げ、山頂と谷底の高低差が増す例。破線が変化前、実線が変化後。

侵食と起伏の関係を示す模式断面です。アパラチアの実測断面や過去の地形の復元ではありません。地盤の上下動や岩石の違いは省き、地表の削られ方だけを比較しています。

硬い地層が尾根になり、弱い地層が谷になる仕組み

アパラチアの一部には、尾根と谷が帯のように並ぶ地形が広がっています。地層が押されて曲がった後、すべてが同じ速さで削れたわけではないためです。侵食に強い砂岩や珪岩などの層が高い部分に残り、相対的に弱い層のところが低くなりました。

そのため、もともと上に膨らんだ地層が、今も必ず尾根になっているとは限りません。上部の硬い層が失われ、下の弱い層が露出すれば、そこが谷になることもあります。地層の曲がり方と地形の凹凸は、一対一では対応しないのです。

グレートスモーキー山地のケーズコーブでは、古い岩が断層によって若い石灰岩の上へ移動し、その古い岩が侵食されて、下の石灰岩が露出しています。地形を低い方へたどると、単純に古い地層へ進むとは限らない好例です。

削られた山が、すぐには消えない理由

荷物を降ろした船は、先ほどより水面に浮き上がるでしょう。侵食で岩を失った地殻にも、長い時間では似た応答が生じます。荷重の減少に伴って地殻が持ち上がる、アイソスタシーによる調整と呼ばれる作用です。

山頂から1メートル削れたから、標高も必ず1メートル下がる、とはいえません。削る作用の一部が隆起で補われるため、古い山脈でも高地が長く維持される可能性があります。もっとも、補われる量は岩石の密度や地下構造などで変わり、失った高さが全量戻る仕組みではありません。

2003年のグレートスモーキー山地の研究は、宇宙線によって岩石中につくられる核種を調べ、長期の侵食速度を推定しました。著者らは、侵食とアイソスタシーによる隆起の釣り合いが、古い山地の維持に関わると論じています。

古い山脈の中にある、新しく険しくなった谷

別の研究は、「長く同じ起伏を維持してきた」だけでは説明しにくい場所に注目しました。2013年に発表された南部アパラチアのカラセイジャ川流域の解析では、川の勾配が急変する地点より下流側で、谷が深く、斜面も急になっていました。

研究チームは、比較的穏やかな上流側に古い地形が残り、下流から谷を掘り込む作用が広がったと解釈しました。復元結果は、中新世以降に起伏が増したことを示し、地域的な隆起を支持しています。アパラチア全域が同時に同じ割合で高くなった、という結論ではありません。

古い造山帯でも、その後の地形の歴史は続いています。丸い峰の隣に深い峡谷があることは、矛盾ではないのです。

ロッキーとの違いは、年齢だけでなく地形の履歴

ロッキーでは、より新しい隆起に加え、高山の氷河が谷や稜線を鋭く整えたことも重要です。一方、アパラチアのグレートスモーキー山地自体は、大陸氷床に覆われませんでした。寒冷な気候の影響を受けることと、氷河に直接削られることも別の作用です。

アパラチアの穏やかな輪郭には、長い侵食時間が表れています。しかし、その内側にあるのは、削られて消えるのを待つだけの地形ではありません。岩の強さの違い、地下の応答、新しい谷の掘り込みまで重ねた履歴が、今の山並みをつくっているのです。

参考資料

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