本文へ移動
世界と暮らしの疑問を整理する知識ポータル
世界・国際理解

グレートソルト湖はなぜ塩辛いのか 海へ出ていかない水と古い巨大湖の跡

公開日

アメリカ西部、ユタ州にあるグレートソルト湖は、海から遠く離れているのに塩辛い湖です。しかも、その塩分は湖全体で一様ではなく、南と北で大きく違います。かつて海だった水が、そのまま残っているのでしょうか。

塩辛さの中心にあるのは、海の名残ではなく、水と塩の出口の違いです。川は少量の溶けた成分を運び込み、水は蒸発して去っても、塩は湖に残ります。現在の湖が成立する前には、同じ盆地にもっと大きく、水のあふれる出口を持った時期もあるボンネビル湖が広がっていました。

淡水の川にも含まれる、目に見えない塩の材料

淡水は、化学的に純粋な水ではありません。雨や雪解け水は地表や地下を移動する間に岩石と反応し、ナトリウムやカルシウムなど、さまざまな成分を少しずつ溶かし込みます。それらが川を通じて湖へ届きます。

一杯の川の水では塩辛さを感じなくても、長い年月に流れ込む水の総量は膨大です。塩を大量に含む川が一本あることや、海水の侵入を仮定しなくても、盆地には溶けた成分が蓄積し得るのです。

水は大気へ戻り、塩は湖に残る仕組み

グレートソルト湖には、海へ続く流出河川がありません。主な水の出口は湖面からの蒸発です。水分子は気体として大気へ移りますが、溶けていた塩類まで同じように蒸発するわけではありません。

鍋の塩水を煮詰める場合にも、水が減るほど残った水の塩分が高まります。湖では熱源が火ではなく太陽や周囲の空気であり、川から水が補給され続ける点が違いますが、水と塩が別々の収支を持つところは共通です。

したがって、出口のない湖でも、流入が多く蒸発が小さければ、大きく広がって薄まることがあります。「閉じた湖は、どんな気候でも同じ濃さになる」という仕組みではありません。

蒸発による濃縮と、築堤が生む南北差
上段は川から入る水と成分に対し、水だけが主に蒸発して去る閉じた湖の断面。下段は築堤で南北の混合が制限され、川の水を受ける南側より北側が高塩分となる関係。

水と塩の収支を示す模式図です。上段の黒点は溶けた成分を記号化したもので、実際に見える粒ではありません。下段の輪郭や開口部は実測図ではなく、塩分や流量の比率も表していません。

山腹の高い位置に残る、巨大なボンネビル湖の岸

周辺の山腹には、現在の湖面より高いところに水平に近い段や線が続く場所があります。古いボンネビル湖の波が岸を削り、堆積物を残した跡です。今の湖岸だけからは想像しにくい範囲まで、水が広がっていました。

寒冷な時代には蒸発が抑えられ、流域からの水の供給との釣り合いが現在と違っていました。湖面が高くなると、北側のレッドロック峠付近から盆地の外へ水があふれました。その後、出口が大きく削られる洪水によって水位が下がり、さらに気候の変化で湖は縮小していきます。

ボンネビル湖が大きかった時代には、現在ほど塩分の濃い湖ではありませんでした。淡水の巨大湖の名残が塩湖になったという歴史は、水の量と出口が変わったことを考えれば不思議ではありません。

鉄道の築堤が分けた、南北で異なる塩分

現在の湖を横切る鉄道の築堤は、1959年に完成しました。それ以前の橋脚で支える構造とは違い、岩や砂礫を積んだ堤は、南北の水の交換を制限しました。湖の中に、水の混ざりやすさの境界ができたのです。

主要な川の水は南側へ流入します。一方、北側は同じようには淡水を受け取れず、より塩分の濃い水域になりました。濃度の違いは微生物の組成にも影響し、衛星画像で見られる南北の色の差に関わります。

ただし、画像の色は撮影方法でも変わるため、色だけから正確な塩分を計算することはできません。築堤の開口部の変更や湖面の変動も水の交換を変えてきたので、北側・南側それぞれの塩分は固定値ではないのです。

濃くなり続けた塩水から、結晶が生まれるまで

水が減っても、塩分が無限に濃くなるわけではありません。溶けていられる量には限りがあり、条件がそろうと塩が結晶として析出します。北側の湖底では、主に塩化ナトリウムからなる厚い塩の層が調べられています。

ユタ地質調査所の研究では、湖底の塩の層が、水中に溶けるはずの塩の一部を固体として蓄えていることが示されました。後に水が増えて薄まれば、その塩が再び溶ける場合もあります。

そのため「湖にある塩の総量」と「水中に溶けている塩の量」は同じではありません。湖の化学的な変化には、蒸発と流入だけでなく、結晶になることと溶け直すことも含まれます。

浅い湖ほど大きく動く、岸の位置

深い器と浅い皿から、それぞれ少し水を減らしたら、水に覆われた面積はどう変わるでしょうか。緩い斜面を持つ浅い皿では、水位の小さな変化でも水際が大きく後退します。広さの割に浅いグレートソルト湖でも、同じ関係が働きます。

USGSの衛星画像による比較には、1980年代の多雨による拡大と、その後の縮小が記録されています。流入量には降水や雪解けだけでなく、流域で消費される水も影響してきました。ある年の岸の位置を、その湖の不変の輪郭とはみなせません。

この湖の塩辛さは、単に「塩がたくさんある場所」という性質ではありません。水が入り、蒸発し、南北を行き来し、塩が溶けたり結晶になったりする。その積み重ねが、内陸の巨大な塩湖を保っているのです。

参考資料

関連する疑問

同じ分類の近い疑問へ進む