カナディアンロッキーのルイーズ湖やペイト湖には、青い絵の具を薄く溶いたような水の色があります。空が映っているだけなら、なぜ普通の池や川とこれほど違って見えるのでしょうか。
あの鮮やかさは、必ずしも水が透き通っている証拠ではありません。上流の氷河が削り出した微細な岩の粒が水中で光を散らし、水そのものによる光の吸収と組み合わさって、明るい青緑色をつくっています。一見すると清らかな色の主役は、細かな粒による濁りなのです。
氷の下でつくられる、小麦粉のような岩の粉
山に積もった雪が氷となり、重力でゆっくり流れる氷河。その動きは、水の移動とは違った方法で山を削ります。底や内部に取り込んだ岩片を岩盤に押しつけながら進むため、やすりをかけるように岩をすり減らし、砂よりも細かい粒まで生み出すのです。
これがロックフラワー、つまり「岩の粉」です。小麦粉を意味する flour にたとえた呼び名で、水に溶けた青い色素ではありません。川が運ぶ大きな礫や砂と違い、微細な粒は沈むのに時間がかかるため、湖へ入った後も水中にとどまりやすい性質があります。
氷河から湖へ続く、粉の運搬経路
氷河が岩を削るだけでは、湖の水は変わりません。融けた水が粉を拾い、川を通じて湖へ運ぶことで、初めて水の色に影響が現れます。氷河、流出河川、湖は、土砂の移動によってもつながっているのです。
氷が直接運んで置いていく堆積物には、大きな岩から微細な粒までが混在します。一方、水が運ぶ途中では、流れの弱まった場所から大きな粒が沈み、細かな粒ほど先へ進みやすくなります。湖へ届く粉の量は、氷河の大きさだけで決まるわけではありません。
地形と光の経路を単純化した模式図です。岩粉や光線の大きさは実物と異なります。赤い線は水が赤い波長を吸収しやすいことを示し、岩粉が青い光だけを選んで反射するという意味ではありません。濃度・粒径・鉱物・水深でも色は変わります。
水の吸収と、粒による散乱の組み合わせ
太陽の光に混ざるさまざまな波長を、水は同じ割合で通すわけではありません。赤側の光を比較的よく吸収するので、透明な水でも、十分に長い距離を通して眺めると青みが現れます。水自体にも、色を生む性質があるということです。
氷河湖では、さらに岩の粒が光の進む方向を変え、一部を水面の上へ戻します。これが散乱で、水中を一直線に進む光だけを考えていては説明できません。水がどの光を吸収するかと、粒がどれほど光を戻すかの組み合わせが、湖面の明るさや青緑色を左右するのです。
粒の大きさや鉱物の種類が違えば、光の散り方や吸収も変わります。「岩粉が入れば必ず同じ青色になる」という単純な関係ではありません。白っぽい灰色、乳白色、緑がかった色など、氷河から水を受ける湖にも幅があります。
鮮やかな青緑色と、透明度の違い
明るい色の湖は、水底までよく見える湖とは限りません。多くの光が浅いところで散らされて目に届けば、鮮やかでも、その下を見通しにくくなります。岩粉による乳白色の濁りと、深い青色の透明な水は、別の光学的な状態なのです。
2014年の研究では、ニュージーランドや北米ロッキー山脈の氷河湖を調べ、水中で光が弱まる要因を、岩粉、水、藻類、溶存物質などに分けて検討しています。景色の色を決める粒は、水中の生物に届く光の量も変えます。湖の色は、単なる表面の飾りではありません。
同じ湖でも変わる、融雪期と季節の色
粉を運ぶ水の量は、融雪や氷河の融解、雨によって変化します。湖に流れ込む粒が増える時期もあれば、供給が減り、水中の粒が少しずつ沈んでいく時期もあります。さらに、途中の池や湖で粒が沈めば、その下流へ届く量は変わるでしょう。
ただし、融解が多いほど鮮やかな青になるとは限りません。濃い土砂を含む流入水は灰色や白色に見える場合があり、粒の濃度が高すぎれば、青緑色よりも濁りが目立ちます。氷河との距離や水の滞在時間も関わるため、すべての湖に共通する「最も青い月」を一つに決めることはできません。
空の反射だけでは説明できない湖面
空や雲、周囲の山が湖面に映り込むことも、もちろんあります。晴天と曇天、岸辺と高い展望地点では、光の入り方や反射の見え方が変わります。しかし、湖の内部から戻ってくる光まで、空の映り込みだけで説明することはできません。
ヨーホー国立公園のエメラルド湖も、ブリティッシュコロンビア州の地名資料で、岩粉と光の散乱が特徴的な色に関わる湖として紹介されています。ルイーズ湖やペイト湖の色と合わせて考えると、山で岩を削る力が、離れた湖面の色として現れていることが分かります。
目を引く青緑色の背景には、氷の運動、岩の細分化、水による運搬、そして光の性質があります。冷たい氷が融けたから水も青いのではありません。氷河が岩を削り、その細かな痕跡を湖まで届けているのです。
参考資料
- Parks Canada:Glaciers and icefields, Jasper National Park
- National Park Service:Glacial Till and Glacial Flour
- USGS Water Science School:Water Color
- Roseほか(2014):Light attenuation characteristics of glacially-fed lakes
- NASA Earth Observatory:How Glaciers Turn Lakes Turquoise
- British Columbia Geographical Names:Emerald Lake
- European Geosciences Union:Rock flour in suspension in Lake Louise