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コスタリカはなぜカリブ海側と太平洋側で雨の降り方が違うのか 山脈を越える風

公開日

コスタリカで「雨の少ない季節」を調べると、太平洋側とカリブ海側で、同じ月の説明が食い違うことがあります。国土が海を挟むほど広いわけでもないのに、一方で雨が弱まる時期に、もう一方では雨が多くなるのです。

その鍵は、北西から南東へ延びる山々と、カリブ海から吹く貿易風の組み合わせにあります。ただし、山の風上は雨、風下は晴れ、という図だけでは足りません。季節による風の変化や、太平洋から入る湿った空気まで含めると、この国の雨の違いがはっきりします。

一つの国を二つの降水域に分ける山脈

コスタリカの内陸には、グアナカステ、中央火山、タラマンカなどの山地が続いています。山の両側へ流れる川が別々の海へ注ぐように、空気の流れも山脈によって大きく変わります。

カリブ海側に届く北東寄りの貿易風は、水蒸気を含んだ空気を山へ押し上げます。空気は上昇すると膨張して冷え、含み切れなくなった水蒸気が雲粒へ変わるため、風を受ける斜面では雨が生じやすくなる仕組みです。

山を越えた空気が太平洋側へ下れば、今度は圧縮されて温度が上がり、雲が消えやすくなります。両側の気候の違いには、海からの距離だけでなく、途中で空気がどの斜面を上り、どこを下ったかが関わっています。

風下だからいつも少雨、とは限らない山の働き
上段はカリブ海側から来る湿った風が山を上って雨を降らせ、太平洋側へ下降する断面。下段は高い山地がその風を遮り、太平洋側の海風による上昇と雨が保たれる場合の断面。

二つの作用を比較する模式図で、同一地点の時刻別の観測ではありません。山の高さや風速、降水量は任意。下段は中部・南部太平洋岸の少雨期が弱い場所を理解するための概念で、熱帯収束帯など広域の作用は本文で補います。

太平洋側の乾季と、カリブ海側に残る雨

太平洋側では、おおむね年末から春にかけて雨が少なく、年の後半へ向かうと雨が多くなる季節変化が目立ちます。ただし、北部と南部では乾季の長さも明瞭さも同じではありません。

これに対してカリブ海側は、太平洋側と同じ意味でのはっきりした乾季がありません。相対的に雨が少ない時期はあるものの、貿易風が海から湿り気を運び、山にぶつかるため、太平洋側が乾きやすい時期にも雨が降ります。

したがって「コスタリカは今、乾季」という言い方には、太平洋側の季節感を国全体へ広げている場合があります。緯度が近い二つの海岸でも、山脈に対して風上か風下かという違いは小さくありません。

太平洋から湿った空気が入る雨季

太平洋側の雨季をつくるのは、カリブ海から山越えした空気だけではありません。季節とともに熱帯収束帯と呼ばれる雨雲の発達しやすい帯が移動し、太平洋からの湿った風や、陸地の加熱による上昇気流が雨をもたらします。

熱帯収束帯は、異なる向きから来る低緯度の風が合流し、空気が上昇しやすい領域です。一本の線が予定どおり北上・南下するのではなく、その位置や活動の強さが揺れながら、コスタリカ周辺の雨の条件を変えています。

とりわけ太平洋側の中部・南部では、海から入る南寄りや南西寄りの風が重要です。山はいつも雨を遮る壁なのではなく、海から来た湿った空気を持ち上げ、雨を増やす場所にもなります。

七月ごろの「小さな夏」と、反対側の雨

太平洋側の一部では、雨季の途中、七月から八月ごろに雨が相対的に弱まることがあります。現地でベラニージョやカニクラと呼ばれる、中休みのような現象です。

コスタリカ気象庁の研究では、北東寄りの貿易風の強まりと、山の両側の雨の対照が示されています。カリブ海側へ湿った空気が運ばれ、風上で雨を降らせる一方、太平洋側では下降する空気の影響が強まるという関係です。

このため、太平洋側の雨の中休みが、カリブ海側の少雨期を意味するとは限りません。ただし、毎年決まった日に始まる無降水期間でもなく、長さや明瞭さは場所と年によって変わります。

山に風を遮られることで、雨が続く太平洋岸

もう一段意外なのは、太平洋側の中部・南部に、雨季の中休みが弱い場所があることです。太平洋側なら一様に風下で乾く、という説明では、この違いを扱えません。

高い山地は、カリブ海から越えてくる風を遮る働きも持っています。その影響が弱い低地では、太平洋から入る海風が保たれ、午後の雲や雨を生みやすくなるのです。

気象庁の地域別資料は、中部太平洋岸の低地で雨の中休みが不明瞭なことや、同じ地域でも山地と海岸で特徴が異なることを説明しています。山の向こうで雨を失った空気が下る効果と、山がその風自体を防ぐ効果。その両方が、地形の向きや高さに応じて現れます。

雨季の違いをつくる、風向きと地形の組み合わせ

コスタリカの雨は、カリブ海側と太平洋側という二分だけでも、まだ大まかな把握です。貿易風を直接受ける斜面、峠を通る風の出口、海風が入りやすい低地では、雨雲の生まれ方が違います。

同じ海沿いでも、海と山の間にある町と、山から下る風をまともに受ける町は別の条件です。太平洋北部のはっきりした乾季を、湿潤な中部・南部へそのまま当てはめることもできません。

二つの海の違いは、単にどちらの海水が暖かいかという問題ではありません。海から来た空気を山がどう持ち上げ、遮り、別の風へ場所を譲るか。その季節ごとの組み合わせが、小さな国の中に異なる雨の暦をつくっています。

参考資料

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