中央アメリカは太平洋とカリブ海に挟まれた細長い陸地です。それなのに、火山は両側の海岸へ均等には並ばず、グアテマラからコスタリカにかけて、主に太平洋寄りに連なっています。
この偏りをつくるのは、太平洋の海底から陸の下へ沈み込むココスプレートです。ただし、火山はプレートが沈み始める場所の真上にあるわけではありません。海溝、地下深くの水、マグマの発生場所を順につなぐと、二つの海の間にある火山列の位置が説明できます。
太平洋の沖合にある、火山列の出発点
中央アメリカの太平洋沖には、中米海溝が延びています。海底が細長く深くなるこの地形は、ココスプレートが、その東側にあるカリブプレートなどの下へ入り込む境界に当たります。
海から眺めると、まず海溝があり、その向こうに海岸と陸地が続き、さらに内側に火山が並ぶという配置です。グアテマラのフエゴ火山もこの火山帯の一つで、アンティグアの町を見下ろす山々に含まれます。
国境は、こうした地下の動きを区切っていません。国をまたいで似た位置に火山が現れるのは、個々の山の下で偶然マグマが生まれたのではなく、長く続くプレート境界に沿って、似た条件がそろうためなのです。
海溝の真上に火山ができない理由
海溝では、海洋プレートがようやく地球内部へ曲がり始めたところです。沈み込む岩板は周囲に比べて冷たく、海溝の直下から大量のマグマが吹き上がる、という仕組みではありません。
岩板が斜め下へ進むと、海底で水を取り込んだ鉱物が、圧力や温度の変化によって水を放出します。その水が上側の高温のマントルへ加わり、岩石の一部を溶けやすくすることが重要です。
つまり、海溝から陸地側へ離れた地下で、マグマを生み出す条件が整うわけです。沈む角度や地下の温度は場所によって違うため、海溝から火山までの距離を、どこでも一定の幅として測ることはできません。
実測断面や地震観測データではありません。陸地の幅、海の深さ、沈み込み角度、地震の位置は説明用に単純化しています。火山帯の全区間が同じ構造という意味ではなく、タラマンカのような火山の途切れは本文で扱います。
岩板を溶かすのではなく、上のマントルの一部を融かす水
「プレートが沈み、溶けて火山になる」という説明は簡単ですが、それでは水の役割が抜け落ちてしまいます。中央アメリカのような沈み込み帯では、沈んだ岩板から供給された水によって、その上のマントルが部分的に融ける過程が基本です。
マントル自体も、全体がマグマの海になっているわけではありません。大部分は固体の岩石で、長い時間をかければ変形し、流れるように動きます。そこへ水が加わることで、同じ温度でも融解が起こりやすくなるのです。
生まれたマグマは上昇し、途中でたまったり、周囲の岩石と反応したりします。地表に届くまでの経路も違うので、同じ火山帯の山でも、噴出する岩石や噴火の特徴まで同一にはなりません。
地震の深さから分かる、見えない岩板の傾き
地下へ沈んだプレートを、地表から直接眺めることはできません。それでも、地震が起きた位置を奥行きとともに並べると、地球内部へ傾く帯が浮かび上がります。
米国地質調査所のカリブ地域の解説では、グアテマラ付近で深さ約300キロメートルに達する地震も紹介されています。こうした深い地震の分布は、冷たい海洋プレートが、目に見える海溝よりずっと奥まで続いている証拠の一つです。
ただし、火山の噴火位置と地震の位置を一対一で結ぶことはできません。地震は岩石の破壊やずれ、火山はマグマの発生と上昇を反映しており、共通のプレート運動を背景にしながら、別々の現象を示しています。
高い山脈でも火山が途切れるタラマンカ
中央アメリカの山々をすべて火山と考えると、コスタリカ南部からパナマに続くタラマンカ山脈で説明が行き詰まります。高い山があるのに、活動的な火山が連続して並ぶ帯にはなっていないためです。
この付近では、厚い地殻を持つ海底の高まり、ココス海嶺が沈み込むなど、北側とは条件が異なります。ただし「厚い海底が浅い角度で沈むので火山が消えた」と、一つの原因で決着したわけではありません。
2011年の地震波を用いた研究は、タラマンカ北部の地下にも急角度で沈む岩板を示し、単純な浅い沈み込みの説明に再検討を迫りました。山脈の隆起、沈み込む岩板の形、マグマが生まれる条件は、別々に確かめなければならない関係です。
二つの海の名前より重要な、地下への進入方向
火山が太平洋側に多いのは、太平洋の海水そのものが火山をつくるからではありません。この場所では、その側から海洋プレートが陸の下へ入っているためです。
実際、カリブ海の東側に目を移すと、小アンティル諸島にも火山の列があります。そちらでは大西洋側の岩板がカリブプレートの下へ沈み込み、中央アメリカとは別の向きからマグマの発生条件をつくっています。
中央アメリカの細い陸地は、二つの海に平等に挟まれた帯ではありません。片側から入り込む岩板、その上で生まれるマグマ、さらに隆起した山脈という、非対称な地下構造の上に成り立っているのです。