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プエルトリコの北にはなぜ深い海溝があるのか 大西洋とカリブ海のプレート境界

公開日

プエルトリコの北の海には、深さ8,000メートルを超えるプエルトリコ海溝があります。大西洋で最も深い海域ですが、近くの島が巨大な火山列としてそびえているわけではありません。

ここは、北アメリカプレートがカリブプレートの下へ入り込みながら、境界に沿う方向へも大きくずれる場所です。正面からの衝突だけでは説明できない、斜めの動きが特徴。深い海溝の理由を考えるには、沈み込みと横ずれを分け、海底が上下する動きも加える必要があります。

島の北側で急に落ち込む、大西洋の海底

プエルトリコ海溝は、プエルトリコやヴァージン諸島の北に延びています。海面下に隠れているため地上の山脈ほど目立ちませんが、島から北へ向かう海底には、陸上に匹敵する大きな起伏があります。

深いのは、海溝の最も低い線だけではありません。米国地質調査所の測深調査は、プエルトリコへ向かう南側にも、異常に深い海底が広がることを示しています。

海溝の周辺は、低い地形ばかりではありません。NOAAが2018年に調べたモナ海山は、海溝側からの比高がおよそ7,700メートルに達しながら、頂上も海面下です。平らな水面は、その下の大きな高低差を覆い隠しています。

正面衝突ではない、プレートの斜めの動き

沈み込み帯と聞くと、一方のプレートが境界へまっすぐ進み、その下へ曲がる断面が思い浮かびます。プエルトリコ付近では、その図に、境界とほぼ平行にずれる動きを加えなければなりません。

北アメリカプレートは、カリブプレートに対して西寄りへ動き、同時にその下へ入り込んでいます。実際の変形は一本の断層に集中せず、プレート境界と周辺の断層へ分かれて現れます。

このように、境界を横切る成分と、境界に沿う成分を持つ動きを、斜めの収束と呼びます。地図の上の横ずれと、地下へ向かう沈み込みは、どちらか一方だけが正しい説明なのではありません。

横ずれと沈み込みは、同じ相対運動の別の側面
北側のプレートの相対運動を、境界に沿う長い成分と、境界を横切る短い成分へ分けた模式平面図。赤い斜めの矢印が両方を合わせた向きで、地下へ沈む動きそのものはこの平面図では表示していない。

斜めの収束を示す概念図で、速度・角度は実測値ではありません。境界の湾曲、複数の断層、小さな地殻ブロックは省略しています。実際の沈み込みは紙面の下方向ではなく、地表から地下へ向かいます。

沈み込みが強い場所ほど深い、とは限らない海溝

プエルトリコから東、さらに小アンティル諸島に沿って南へ進むと、プレート境界の向きが曲がります。そのため、同じようなプレートの相対運動でも、境界へ正面から近づく成分の割合が変わります。

ここで興味深いのは、沈み込みの成分が大きくなる東側で、海溝が必ずしも深くならないことです。単純に「押す力が強いほど、大きな溝ができる」という関係では説明できません。

海溝の深さには、沈む岩板の曲がり方、周囲を引き下げる働き、上側の地盤の動き、堆積物による埋まり方などが関わります。プエルトリコ海溝は、プレート運動の方向だけでは深さを決められない好例なのです。

傾いた石灰岩の台地が残す、上下運動の証拠

この地域の海底には、浅い海で積もったはずの炭酸塩の地層が、北へ傾いて深い水中に続く場所があります。サンゴ礁などに由来する地層が深海にあることは、その場所が形成後に大きく動いた手がかりです。

2005年の研究では、沈み込む岩板の角度が変化し、海溝側が沈む一方で、島側が上昇したという説明が提案されました。地形や地震、重力の観測を結び付けた仮説です。

ただし、岩板の内部でどのような変形や裂け目が生じたのかまで、すべて確定したわけではありません。観測される台地の傾きと、その原因を説明するモデルは区別しながら、地下の形を推定していきます。

音で測る海底と、地球内部を探る重力

海溝の地形を調べるときは、船から発した音が海底へ届いて戻るまでの時間を測り、水中の音速を考慮して水深を求めます。真下の一点だけを測る必要はありません。多数の方向へ音を送るマルチビーム測深なら、船の通った下を帯状に測れます。

NOAAは2022年にもプエルトリコ周辺で海底地図の空白を埋める調査を行い、海溝を通過する際には深海用測深装置の性能も確かめました。測深地図は、海の深さが既知だと思われがちな場所でも、今なお詳しくなっています。

一方、重力の測定は、目に見えない岩石や水の分布を考える資料です。この海溝周辺には大きな負の重力異常がありますが、重力が逆向きになるという意味ではありません。基準として予想される値より小さいという差を、海底地形や地下の密度構造と合わせて調べます。

深さだけでは決まらない、海溝と島の関係

海溝の最深部の数字だけを比べると、大きな沈み込みほど深い穴と高い火山をつくるように思えるかもしれません。しかし、海底の深さと、マグマが地表へ届く条件は同じものではありません。

プエルトリコ付近には、斜めにずれるプレート境界、沈み込んだ岩板、上下に変形した地盤が重なっています。その結果として深い海溝があり、島の東方では、別の向きの境界に沿って小アンティルの火山列が続きます。

海溝は地球の表面に開いた空洞ではなく、動く岩板の形が海底へ現れたものです。縦の断面だけでなく、地図上のずれの向きも加えて初めて、プエルトリコ北方の深い海の位置が理解できます。

参考資料

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