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チリ中部はなぜ地中海に似た気候なのか 南半球の冬の雨と夏の乾燥

公開日

地中海から遠く離れたチリ中部にも、「地中海性気候」と呼ばれる気候があります。地中海の水や風が届くからではありません。夏は乾燥し、冬に雨が多いという、一年の雨の配分が似ているためです。

ただし、チリは南半球です。サンティアゴ周辺で夏の乾燥が目立つのは、おおむね12〜2月の暖かい季節。北半球の地中海沿岸とは、雨の多い季節も少ない季節も、暦の上では半年ほどずれています。

地中海性気候を決める「暑さと雨のすれ違い」

温暖な地域では、夏に空気が暖まって雨雲が発達する光景を想像しがちです。しかしチリ中部では、最も暖かい時期が雨の少ない時期と重なります。気温が上がれば必ず雨が増える、というわけではありません。

チリ気象局は、中部の気候を冬雨・夏乾燥の地中海型と説明しています。ただし、中部全域がサンティアゴと同じ雨量や気温ではありません。北寄りほど乾期が長く、南へ進むと雨のある季節が長くなる傾向もあります。

気候の名前は、ある地域だけの固有名ではなく、似た季節配分をまとめる分類でもあります。チリ中部と地中海沿岸の共通点は、国や文化ではなく、暑い季節と雨季が重なりにくいことにあります。

夏の雨雲を抑える、南太平洋の亜熱帯高気圧

チリの沖合にある南太平洋の亜熱帯高気圧は、大きな大気循環の中で下降流が生じやすい領域です。下る空気は圧縮されて暖まるため、上へ伸びる雨雲の発達が抑えられます。

南半球の夏には、この高気圧帯やその影響が南寄りへ広がり、中部まで前線が入りにくくなります。地表が強く暖められても、上空の大気が雲の発達を抑える状態なら、まとまった雨にはつながりません。晴れて暑いのに乾燥が続くのは、そのためです。

南半球の夏の乾燥と冬の雨
チリ中部の夏は高気圧の影響で雨雲が発達しにくく、冬は低気圧や前線が届きやすくなる季節対比。

季節ごとの代表的な大気の働きを示す概念図です。雨量のグラフや特定の日の天気図ではありません。高気圧の位置と強さには季節内・年ごとの変動があります。

高気圧を、同じ場所に一年中置かれた蓋のように考えるのも正確ではありません。チリ気象局は、南北だけでなく東西の位置の変化も雨の入り方に重要だと説明しています。冬に高気圧が沖へ離れることも、中部へ雨が届く条件に関わります。

冬に届く前線と、南北に変わる雨季の長さ

冬には偏西風に伴う低気圧や前線が、中部まで届きやすくなります。暖気と寒気が接する場所で上昇が起こり、海から来た水分が雨や雪へ変わるため、夏とは大気の配置そのものが違うのです。

南へ行くほど、こうした擾乱の影響を受けやすくなります。北部の長い乾期、中部の冬の雨、さらに南の湿潤な気候は、互いに無関係な区画ではありません。高気圧帯と偏西風帯に対する位置関係が、連続的な違いを生んでいます。

なお、一年の降水量が同じ二つの土地でも、雨が毎月分散する場合と、冬に集中する場合とでは、水の使える時期が異なります。地中海性気候で重要なのは、年間の合計だけでなく、いつ雨が降るかという配分です。

海の涼しさと、アンデスに蓄えられる冬の雪

チリの沿岸では冷たい海水や海風が気温を穏やかにする一方、内陸の谷では海の影響が弱まり、夏の日中に気温が上がりやすくなります。「チリ中部の夏」という一言でも、海岸と内陸の体感は同じではありません。

ただし、冷たい海流だけで冬雨・夏乾燥が決まるわけではありません。雨の季節をつくる大きな要因は、高気圧や前線の季節的な配置です。海の温度と大気の循環は、区別したうえで組み合わせる必要があります。

東側のアンデスでは冬の降水の一部が雪として蓄えられ、春から夏に解けることで、平地に雨の少ない時期にも川へ水を送ります。山に降った水がすべて冬のうちに流れ去るわけではありません。この時間差が、夏の水利用に重要なのです。

毎年の夏の乾燥と、何年も続く干ばつの違い

夏に雨が少ないのは、この気候にもともとある季節性です。一方、本来雨が降るはずの冬にも不足が生じ、それが何年も重なると、別の問題になります。普段の乾期と、平年より水が足りない干ばつは同じではありません。

チリの気候研究センターCR2は、2010年代の長期的な降水不足を「メガ干ばつ」として調べてきました。雨が少ない年が続けば、河川や貯水池だけでなく、山の積雪による季節をまたぐ蓄えにも影響が及びます。

地中海性気候は「一年中過ごしやすい気候」の言い換えではありません。暑い季節ほど雨が少なく、その水不足を別の季節の雨や雪が補う仕組みです。チリ中部の気候を特徴付けるのは、この季節をまたぐ水のつながりなのです。

参考資料

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