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ニュージーランド南島はなぜ西が多雨で東が乾燥するのか サザンアルプスと偏西風

公開日

ニュージーランド南島では、西側に雨の多い森林地域があり、山脈を越えた東側には比較的乾燥した平原や盆地が広がります。島の両側が海に面していても、雨の量が似るとは限りません。卓越する西寄りの風と、南島を縦に走るサザンアルプスが、空気の動きを大きく変えるためです。

ただし、東側の川まで水が少ないとは限りません。山地に降った雨や雪が、乾燥した平原へ水を送り出すからです。同じ山脈が、空では乾いた風を、地上では豊かな流れを東へ送る。この組み合わせに、南島の景観の面白さがあります。

海から来た湿った空気を受け止めるサザンアルプス

西寄りの風が卓越する中緯度にある南島には、タスマン海を渡って湿った空気がやってきます。その空気が高い山地で持ち上げられ、膨張して冷えると、水蒸気が凝結し、雲や雨が発達するのです。

西海岸の低地だけでなく、山へ近づくにつれて雨や雪が非常に多くなる場所があります。NIWAの地域気候解説では、西海岸の低標高地点で年2,000〜3,000ミリ程度、標高の高い一部では年10,000ミリを超える降水がしばしば観測されるとされています。

これは西側のどの地点でも同じ量という意味ではありません。山の向きや谷の形、風の入り方で雨量は変わります。海に近いことに加えて、その湿った空気をどれだけ上昇させるかが重要なのです。

東へ下る風と、カンタベリーの高温・乾燥

山を越えた空気は、東側へ下るにつれて高い気圧のもとで圧縮され、暖まります。雨として水分を失った影響も重なって雲が消えやすくなり、風下に乾燥した地域が生まれるのが、雨陰の仕組みです。

カンタベリーでは、サザンアルプス側から吹き下りる暖かく乾いた北西風がよく知られています。フェーンに伴うこの風は、冬にも季節外れの暖かさをもたらし、地面や植物から水分を奪う作用を強めます。

摩擦で空気が熱くなるのが主因ではありません。空気が上下に動くときの圧力と温度の変化が中心です。また、西側で雨を降らせる経路だけがフェーンの成り立ちのすべてではなく、上空の空気の下降や混合なども実際の温度を左右します。

雨陰の平原へ届く、山地の水
上段は西の湿った風が山で雨を降らせ、東へ乾いた風が下る一方、東側の源流域の水が川で平原へ届く関係。下段は網状河川の流路を上から見た概念。

大気と河川の異なる経路を示す模式図です。特定の山や川の測量断面ではなく、山の東側の源流域にも降水があることを簡略化しています。雨量・流量・川の長さは表していません。西側の川が山を越えて東へ流れる意味ではありません。

空にかかる「ノーウエスト・アーチ」の正体

東側の乾燥を示す風景は、地上だけではありません。カンタベリーの空には、山に沿って大きく伸びる弧状の雲、ノーウエスト・アーチが現れることがあります。

山を越えた空気が上下に波打つと、波の上昇部分では冷えて雲ができ、下降部分では暖まって雲が消えます。風は強くても、こうして生成と消失が同じ場所で繰り返されるため、雲の形がほぼ動かないことがあるのです。

止まっているのは同じ空気の塊ではなく、雲のできる位置です。流れてくる水が岩の後ろで決まった形の波をつくるように、大気の流れと山の関係が雲の場所を保ちます。

乾いた平原を流れる、山地生まれの大河

ワイマカリリ川、ラカイア川、ランギタタ川などは、山地からカンタベリーの平原へ流れ出します。低地の雨が少なくても、上流の山地には多くの雨や雪があるため、川は別の水源を持っています。

サザンアルプスから海へ向かう川は、山で生じた礫や砂も運びます。広い礫の河原で流れが分かれ、再び合わさり、網目状の流路をつくるのが網状河川です。平原へ届くものは、水だけではありません。

このため、東の平原で雨が弱いときでも、山地の豪雨によって川が増水することがあります。平原の空が比較的明るいことと、上流の流域で大量の水が生まれていることは両立するのです。

「東は乾燥」だけでは収まらない局地差

南島の東側全体が、同じ乾燥した平地ではありません。山脈に近い高地には雨や雪の多い場所があり、カンタベリーでもバンクス半島や一部の海岸では、内陸盆地とは違う降水の特徴を持ちます。

さらに、南や東から湿った風が来れば、普段とは異なる斜面が風上になります。西側が多雨、東側が少雨というのは、長期間を通じた卓越風と地形の組み合わせであり、毎日の天気を固定する規則ではありません。

南島の水環境には、海から山へ運ばれる水蒸気、山を越えて下降する空気、山から平原へ流れる川という三つの経路があります。雨陰で乾く平原が、同じ山の雨に支えられていることに、山脈を挟んだ東西の深いつながりがあるのです。

参考資料

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