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クック海峡はなぜ潮流が速いのか 二つの島の間で変わる潮の時刻

公開日

ニュージーランドの北島と南島の間にあるクック海峡では、強い潮流が生じます。狭い所へ海水が集まるという説明だけでは、「なぜ海水が流れ込もうとするのか」まではわかりません。大きな原因は、海峡の両側で満潮・干潮の時刻がずれ、海面に高さの差ができることです。

同じ場所で海面が上下する幅は小さめでも、少し離れた二つの海の間に差があれば、強い流れを生む場合があります。クック海峡は、潮の高さと潮流の速さが別の量だと実感できる場所なのです。

潮の上下と、海水の横移動

港の岸壁を見ていると、潮は水面が上がったり下がったりする現象としてわかります。これに対し、潮流は海水が水平方向へ動くこと。浮かぶ物が岸に沿って流されるような動きです。

海面がどこでも同じ高さで上下するなら、場所同士の水位差は生まれません。しかし現実の潮汐は、海底や海岸の形、広い海での波の伝わり方の影響を受け、満潮の時刻や高さが場所ごとに変わります。

クック海峡が結ぶのは、西のタスマン海側と東の太平洋側です。両側の海が違うタイミングで上下するため、海峡を通じて海水を動かす圧力の差が生じるのです。

島の東西を回り込む潮の時間差

ニュージーランド付近の潮は、月による半日周期の成分が強く、満潮から次の満潮までの代表的な周期は約12時間25分です。ただし、その変化が全国へ同時に届くわけではありません。

国土情報局LINZの説明では、島々の東岸を北へ伝わる潮と、西岸を南へ伝わる潮が、クック海峡で異なる段階にあります。一方が高い水位のとき、もう一方は低い水位に近いという、大きな時間差が生まれます。

このずれは、海の潮を、月の真下でだけ水面が持ち上がる簡単な絵から考えると理解しにくいでしょう。月や太陽の力に対して、海水が大陸、島、海底のある地球上でどう動くかまで含める必要があります。

潮の時間差によって逆転する海面の傾き
海峡の両側の水位が異なると、海面の高い側から低い側へ向かう力が生じる。潮の段階が変わって水位差が逆になれば、流れを駆動する向きも逆になる。

水位差による駆動の向きを示す模式図で、実際の時刻別潮流図ではありません。海面の傾きは強調しており、滝や段差がある意味ではありません。矢印は駆動の向きで、慣性を持つ実際の流れがその瞬間に同じ向きへ反転するとは限りません。航行判断には使えません。

水位差を流れに変える、海峡の形

二つの水槽を管でつなぎ、片方の水位を高くすると、水は低い側へ向かいます。クック海峡でも海面の差が流れを駆動しますが、実際には管ではなく、幅も深さも変わる海底地形の上を流れます。

同じ量の水が通るなら、通り道の断面が小さい所では速く流れる必要があります。ただし海峡では、流れる量そのものも水位差や摩擦、慣性によって変わります。「幅が半分なら、いつでも速さが倍」といった固定した計算にはなりません。

クック海峡の観測研究では、毎秒数メートルに達する流れが報告されていますが、海峡全域が常時その速さという意味ではありません。潮の状態に加え、岬、海底の高まり、深い溝などによって、流れの方向や強さは細かく変わります。

満潮の時刻と、潮流が止まる時刻の違い

満潮になったら流れも止まる、と考えたくなるかもしれません。しかし、満潮は一地点の水位が最も高くなる時点であり、流れを決めるのは周囲との水位差などです。こちらが満潮でも、向こう側の水位が低ければ、流れを駆動する差は残ります。

さらに、一度動き始めた水は慣性を持ちます。水位差が小さくなる時刻と、流速が最小になって向きを変える時刻が一致するとは限りません。潮流の弱まる「憩流」と、満潮・干潮の関係は場所によって異なるのです。

クック海峡では、単一の港の潮位表だけから海峡全体の流れを再現することはできません。潮の複数の周期成分に加え、風などの影響もあるためです。潮位と潮流には、それぞれの観測や予測が必要になります。

速い潮流、海の混合、風浪の重なり

速い流れが複雑な海底を通ると、渦や乱れが生じ、海水の混合にも関わります。2018年の観測研究は、クック海峡の流れを測って、乱れの大きさやエネルギーの失われ方を調べました。速く流れる海は、単に水が水平移動するだけの場所ではないのです。

ただし、強い流れがあるから水温や塩分が上下に完全に均一になる、とも限りません。研究では弱いながら層構造が残ることも扱われており、流速だけから混合の結果を決めることはできません。

海峡では、島の地形に沿って強まる風が波をつくり、潮流と逆向きの波や風が重なると、海面の状態がさらに複雑になります。ただし、潮流の速さ、波の高さ、風の強さは別々の量です。一つの「荒さ」にまとめては、それぞれの原因を区別できません。

クック海峡の強い流れを生む出発点は、島の両側の海が同じ時刻に同じ高さにならないことです。その差を地形が受け止め、摩擦や慣性とともに実際の流れへ変える。地図上では短い海の通路に、広い海の潮の動きが集まっているのです。

参考資料

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