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ボラボラ島はなぜ山を青い礁湖が囲むのか 火山島から環礁へ向かう地形

公開日

ボラボラ島の写真では、険しい山の周囲に明るい青の水面が広がり、その外側を細い礁や低い島が取り巻いています。山からいきなり深い外洋へ続くのではなく、海が一段階、内側へ囲い込まれたような地形です。

この水面が礁湖、外側を囲むサンゴ礁が堡礁です。火山島が侵食や沈降によって小さくなる一方、周囲の礁が成長することで、山と礁の間に海が残りました。ただし、実際に地面を掘って調べると、現在の地形は、火山が沈むという一つの過程だけでは説明し切れません。海面の上下と、古い礁を足場にした新しい成長も重なっています。

オテマヌ山と、沖合の堡礁の異なる成り立ち

フランス領ポリネシアのソシエテ諸島にあるボラボラは、火山由来の島です。中央のオテマヌ山などは、もとの火山体が長く侵食を受けて残った部分。外側のサンゴ礁とは、岩のでき方が違います。

堡礁の「堡」は、とりでの意味です。礁は陸へ直接続くのではなく、岸から離れて礁湖を囲むため、内側の水面には、外洋の波がそのまま届くわけではありません。浅い礁で波が砕け、海の様子が外側と内側で変わります。

礁の上には、モツと呼ばれる低い小島もあります。白い砂や礁の破片が集まった小島と、中央にある火山岩の山とでは、同じ陸地でも材料が違うのです。

NASAが比較した衛星画像でも、陸の高低差を示す標高データと、浅い海底まで見える光学画像では、捉えられる地形が異なります。山の高さだけを測っても、海中の礁の広がりまでは分かりません。水面より上の陸地と、その下へ続く礁の両方が、ボラボラの地形を形づくっているのです。

島が低くなっても、礁が海面近くに残る理由

熱帯の浅い海で礁を築くサンゴの多くは、体内に共生する微細な藻類から、光合成でつくられた栄養を受け取っています。そのため、成長には光の届く水深が重要です。

島の土台が少しずつ沈んでも、サンゴなどが上へ礁を積み重ねる速さが十分なら、礁の上面は浅い場所に保たれます。島の斜面は海面下へ入る一方、外側の礁は海面近くへ残り、両者の間に礁湖が広がるわけです。

サンゴが、水に浮くように礁全体を持ち上げているのではありません。古い骨格や堆積物を土台に、新しい骨格がつくられていきます。生きている部分の厚さと、長い時間をかけてできた礁全体の厚さは、同じではないのです。

この延長で、火山の陸地が完全に海面下へ隠れ、輪状の礁が残ると、環礁に近い形になります。ボラボラは、中央に火山の山を残した堡礁の島として、その関係をよく示しています。

掘削で見つかった、古い礁の上の新しい礁

では、今の堡礁は、最初に火山の周囲へできた礁が、そのままずっと伸び続けたものなのでしょうか。2016年に公表された掘削研究は、現在の礁の地下から、その問いに答える材料を取り出しました。

研究では堡礁と岸近くの礁から6本のコア、つまり柱状の試料を採取し、サンゴの年代などを調べています。外側の堡礁では、およそ1万年前から成長した部分の下に、約11万7000年前の古い礁が確認されました。

二つの年代の間には、大きな隔たりがあります。氷期には海面が低くなり、以前は海中にあった礁が陸へ出る時期もありました。その後、海面が再び上昇すると、古い礁の高まりが、新しいサンゴ礁の足場になったのです。

ボラボラの現在の礁は、火山の沈降だけでなく、氷期とその後の海面変動を経験した、重層的な地形です。外からは一枚の礁に見えても、内部には違う時代の海が残した構造があります。

掘削試料が示す、ボラボラの堡礁と裾礁の足場の違い
上段は古い礁の上に新しい堡礁が成長した模式断面。下段は火山岩側の斜面に新しい裾礁が成長した模式断面。いずれも新しい成長を濃い緑で示し、調査で得られた代表的な年代を添える。

Gischlerほか(2016)の掘削研究を基に、足場の違いを示した模式図です。年代は同研究の結果を丸めて記載し、図形の高さや厚さは実測値ではありません。約1万年前・約8800年前は調査地点で確認された新しい礁の成長の年代で、火山島の誕生年ではありません。上下は別の場所であり、一つの礁の前後の姿ではありません。

堡礁の内側でも育った、岸近くの裾礁

先ほどの掘削では、岸近くの礁にも重要な違いがありました。こちらでは、古い火山岩や土壌を足場に、およそ8800年前からの礁の成長が確認されています。

岸に接するか、ごく浅い水面を挟む礁は、裾礁と呼ばれます。よくある模式図では、裾礁が成長し、島が沈むにつれて堡礁へ変わるという順序で描かれますが、ボラボラでは、新しい堡礁と裾礁が同じ時代に並行して育っていました。

これは、島の沈降という考え方が全部間違っていたという話ではありません。長い時間にわたる島と礁の関係と、最後の氷期後にどこで新しい礁が成長したかは、扱う時間の幅が違います。

昔の堡礁が沖合に高まりを残し、岸近くにもサンゴが定着できる場所があれば、両方で成長できます。現在の礁を理解するには、「一つの礁が別の種類へ変わった」という説明に加え、古い地形のどこが再利用されたかも重要なのです。

礁湖がすぐに埋まらず、青い水面を保つ仕組み

外側で礁が大きくなるなら、内側にも同じ速さで物質が積もり、礁湖は埋まってしまわないのでしょうか。

礁の本体が上へ成長する速さと、礁湖の底へ砂や泥がたまる速さは同じではありません。2019年の研究は、ボラボラを含む三つの海域の掘削資料を比較し、この違いが、縁が高く内側がくぼんだ礁の形を保つ重要な要因だと示しています。

生物がつくった物質のすべてが、その場に残るわけでもありません。波や流れで運び去られる分があり、細かく砕かれたものが別の場所へ堆積する場合もあります。礁湖の底は、新しい物質がただ一様に降り積もる平面ではないのです。

水深の違いは、水の色にも関わります。水は太陽光の赤い成分を吸収しやすく、すべての色を同じように通すわけではありません。さらに浅い場所では、海底の白い砂や礁が光を返すため、明るい青緑色に見えるのです。

白い海底からの反射が、浅い礁湖の色を明るくする仕組み
上段は浅い海へ入った光が白い砂で反射し、水を通って戻る経路。下段は海底が深く、底から戻る光が少ない水面を示す。

光の経路を示す模式図で、実測の色や深度、光量を描いたものではありません。水が赤い光を吸収しやすい性質に、海底からの反射などが加わって水の色が決まります。図では屈折・散乱・水面の反射を省略し、下段の海底は枠の外にあります。下段で戻る矢印を省いたのは、海底の反射光が少ないことを示すためで、目へ届く光がゼロという意味ではありません。色だけから水深や水質を判定する図ではありません。

深い水路では、海底から戻る光が少なくなり、濃い青に見えることがあります。空を映しているだけではなく、水深と海底の性質が、青の濃淡を生み出しているのです。

ただし、色は水中の粒子、底の生物、天候や見る角度によっても変わります。明るい青だけを手掛かりに、水深や水質を正確に判定することはできません。

環礁への変化を決める、沈降以外の条件

火山島から堡礁の島、そして環礁へ。この順序は地形の関係をつかむうえで有用ですが、すべての島が一定の速さで同じ経過をたどる予定表ではありません。

海面が速く上がって礁の成長が追いつかなければ深くなる一方、地盤が隆起すれば、海中だった礁が陸へ出ることもあります。しかも、礁を築く生物の状態や、波によって失われる物質の量も一定ではありません。

ボラボラで山と青い礁湖が共存しているのは、火山岩の山がまだ海上に残る一方、その周囲に、古い地形を足場とした礁が発達してきたためです。険しい中央の島と低い外周は、同じ速度で削られたり成長したりしているのではありません。

写真に写る青い帯は、単なる山の背景ではないのです。火山の山体が低くなる時間、生物が礁を築く時間、氷期に海面が変わる時間が重なり、今そこに水が入る余地を残しています。

参考資料

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