同じクック諸島でも、ラロトンガには切り立った緑の山があり、北部のマニヒキやペンリンでは、低い陸地が礁湖を囲んでいます。国の中で、島の姿が大きく違うのはなぜでしょうか。
鍵は、火山の土台ができた時期と、その後の沈降・侵食・隆起です。北部には、古い火山性の土台をサンゴ礁が覆う低い島が多く、南部には火山の山体や、持ち上がった石灰岩の地形が残っています。ただし、北と南を分ける線が、二種類の島を完全に分けているわけではありません。
ラロトンガの山と、マニヒキの低い陸地
クック諸島は15の島からなり、一般に北部の6島と南部の9島に分けられます。首都のあるラロトンガは南部の島。火山由来の山地を、海岸の低地や浅い礁が取り巻いています。
北部のマニヒキは、これとは対照的です。中央には広い礁湖があり、その縁に低い島が並びます。陸地に高い火山の峰は見えませんが、火山と無関係に大海原へ砂だけが集まったわけではありません。
サンゴ礁は、浅い海に成長の足場があって初めて発達できます。深い海底から海面近くまでの大きな土台と、その上の礁、さらに礁の上にある砂や礫の陸地は、区別して考える必要があります。
ラロトンガでは火山の山体が地上の主役となり、マニヒキでは、その土台を覆う礁が地表の形を決めています。どちらも火山とサンゴ礁に関わる島ですが、今、水面より上に現れている部分が違うのです。
古い火山の土台を覆う、北部のサンゴ礁
北部の島々の成り立ちは、マニヒキ海台という、海底の大きな高まりとも結び付いています。これは大規模な火山活動で形成された海底地形で、南部の島々をつくった比較的新しい火山活動とは、異なる来歴を持っています。
海台とその周辺にできた火山性の高まりは、長い時間の中で侵食や沈降を経験しました。火山岩の山が海面下へ沈んでも、浅い場所で礁の成長が続けば、低いサンゴ礁の島として地表が保たれる場合があります。
そのため、低い島を「最近できた小さな島」、高い島を「古くて大きな島」と見分けることはできません。むしろ長い歴史を持つ火山の土台が、水面下へ隠れていることもあるのです。
実際、1967年に公表されたマニヒキの地震波探査では、礁の下にドーム状の火山岩の土台が推定されました。上を覆うサンゴ礁由来の層は、中央部よりも環礁の縁で厚いという結果です。低い輪の形からは見えない、火山の高まりと礁の厚さの違いが地下にあります。
ここでいう古さは、現在の砂浜の砂が、火山と同じ年代だという意味ではありません。礁をつくる生物が新たな骨格を生み、波が破片を運ぶことで、表面の陸地は更新されます。地中深くの土台と、足元の砂では、成り立ちの時間が違います。
南部に並ぶ、火山島・環礁・マカテアの島
南部を一括して「高い火山島」と呼ぶと、重要な違いを見落としてしまいます。ラロトンガのように山の目立つ島だけでなく、パーマストンやマヌアエのような環礁も含まれるためです。
アイツタキには、火山由来の陸地と、低い小島を伴う礁、広いラグーンが組み合わさっています。山のある島か、環礁かという二択の間にも、さまざまな姿があります。
さらに、マンガイア、アチウ、マウケ、ミチアロでは、古い礁の石灰岩が海面より上へ持ち上がった地形が特徴的です。このような隆起した礁の石灰岩は、マカテアと呼ばれます。
つまり、南部で標高のある土地を見ても、それが火山の溶岩を積み重ねた山とは限りません。海で生物がつくった岩が、陸になった場合もあるのです。高さだけでなく、地面がどのような岩でできているかが、島の歴史を見分ける手掛かりになります。
代表的な関係を比較する模式図で、実測断面ではありません。三つの島がこの順番で変化するという時系列図ではなく、北部・南部のすべての島を分類する図でもありません。火山の基盤や礁の厚さ、高さ、幅は変形して描いています。マンガイアの実際の台地・低地・洞窟などの細かな起伏は省略しています。
マンガイアに残る、火山の丘と石灰岩の外周
マンガイアでは、島の内側の火山性の丘を、その外側にある隆起した石灰岩の地形が囲んでいます。海岸から内陸へ向かえば、海でできた岩と、マグマからできた岩が、同じ島の中で接することになります。
島が沈降し、古い火山の周囲に礁が発達した後、今度は地盤が持ち上がる局面がありました。すると、海中にあった礁は陸上の石灰岩の地形へ変わり、内側の火山性の丘も、海面より高い場所に残ります。
なぜ古い島が再び持ち上がるのでしょうか。南部クック諸島では、周辺の火山が成長した重みなどによって、岩石圏がたわむ作用が研究されています。重みの直下だけでなく、その周囲にも上下の変形が及ぶため、同じ地域の島がそろって沈むとは限りません。
1996年の研究は、ラロトンガとマンガイアで異なる過去の相対的な海面変化を、火山の荷重や地下の浮力、岩石圏の長期的な変形と関連付けて検討しました。島を載せる土台は完全に動かない板ではなく、周辺の火山活動の影響も受けるのです。
ただし、南部のすべての島が、同じ高さへ一斉に押し上げられたわけではありません。島ごとの位置、地下の構造、火山活動の履歴が異なるため、隆起した礁の高さや残り方にも違いがあります。
北から南へ並べるだけでは作れない、島の年表
太平洋の島々を説明するとき、地下の火山活動の場所をプレートが通り過ぎ、島が順にできるという図がよく使われます。クック諸島も、すべてを一本の線へ並べれば、古い順が分かるのでしょうか。
実際には、南部クック諸島と隣接するオーストラル諸島の火山列には、複数の配列や、時期を隔てた火山活動が見られます。1998年の地形・地球力学研究も、単純な一列の火山列とは異なる、複雑な形成史を示しています。
ある島では火山活動が再び起こり、別の島では、一度低くなった後に隆起が加わりました。したがって、緯度の順、山の高さの順、噴火の年代の順は、必ずしも一致しません。
「マンガイアは太平洋最古の島」という紹介もありますが、地域の自然遺産を調べてきたCook Islands Natural Heritage Trustは、この表現を否定しています。古い火山岩が地上に露出していることと、それより古い土台を持つ島がほかにないことは、同じではありません。北部の低い島にも、さらに古い地質の歴史が隠れています。
低くても環礁ではない、北部のナッソー
北部にも、典型的な輪の形とは違う島があります。ナッソーは、低いサンゴ礁由来の島ですが、中央に礁湖を持ちません。北部の低い島が、すべて環礁だとは言えない例です。
環礁という分類で重要なのは、標高が低いことだけではなく、礁と礁湖の配置です。同じように低い土地でも、輪の中に水面があるのか、小さな陸地としてまとまっているのかによって、地形は異なります。
南部には低い環礁があり、北部には礁湖を持たない島もある。この二つの例を加えると、「北部は低く、南部は高い」という説明が、傾向をつかむための大づかみな区分だと分かります。
クック諸島の違いを生んだのは、国の中の南北という位置そのものではありません。火山が土台をつくり、雨や波が削り、サンゴ礁が育ち、地盤が沈んだり持ち上がったりしてきた履歴です。その組み合わせが違うからこそ、山の島、輪の島、石灰岩の台地が、一つの国に並んでいるのです。
参考資料
- Cook Islands Tourism:Our Islands、北部・南部の区分と各島の概要
- Gerald McCormack/Cook Islands Natural Heritage Trust:Is Mangaia the oldest island?(原文2020年)、北部の土台と南部の火山・隆起礁
- Hochstein(1967):Seismic measurements in the Cook Islands, south-west Pacific Ocean、マニヒキの礁の厚さと火山岩の土台
- Wood(1967):Geology of the Cook Islands、火山岩・礁・隆起石灰岩の地質的な区別
- Dickinson(1998):Geomorphology and Geodynamics of the Cook-Austral Island-Seamount Chain、複数の火山列と隆起・沈降
- Nakada(1996):Viscosity structure of the oceanic lithosphere inferred from the differential late Quaternary sea-level variations for the southern Cook Islands、ラロトンガとマンガイアの地盤変動
- Cook Islands Tourism:Discover Nassau、礁湖を持たない北部の島
- NOAA:What are the three main types of coral reefs?、礁と島・礁湖の位置関係