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南極点ではどちらを向いても北なのか 経線が集まる場所の方角

公開日

南極点に立った人が、前へ進んでも、後ろへ戻っても、右へ曲がっても北へ向かう。「どちらを向いても北」という説明は、言葉遊びのようですが、緯度と経度の仕組みからきちんと説明できます。

南極点は南緯90度で、それ以上南の緯度はありません。地表に沿ってどの方向へ離れても、南緯の数字が小さくなる側、つまり北へ進みます。ただし、目的地まで同じになるわけでも、方位磁針の針があらゆる方向を指すわけでもありません。地理の北と、目の前の道順と、磁石の北は分けて考える必要があります。

南緯90度より先がない、緯度の端点

緯度は赤道を0度とし、北極を北緯90度、南極を南緯90度とする位置の表し方です。地球儀の表面を赤道から南へたどると、南緯30度、60度、80度という順に数字が大きくなり、最後に南極点へ到着します。

そのまま直進して南極点を通り越したら、南緯91度になるのでしょうか。答えは、なりません。今度は反対側の経線を赤道へ向けて進み始めるため、緯度は再び南緯89度、88度と小さくなっていきます。

進んでいる本人が体の向きを変えなくても、地理的な南北はそこで切り替わります。「北へ向かう」とは、ずっと同じ空間方向へ進むことではなく、地球上の現在位置に対して定まる関係なのです。

すべての経線が集まる、経度を一つに選べない場所

地球儀で北極と南極を結ぶ線が経線です。東経0度の経線も、東経90度、西経90度の経線も、南極点では同じ一点を通ります。極点で一つの経度だけを特別に選ぶことはできません。

南極点から東経0度の経線に沿って出発する人と、東経90度の経線に沿って出発する人は、別の方向へ離れていきます。それでも二人とも、南緯90度より赤道寄りへ進むので北向きです。「全部北」は、道順の違いがなくなるという意味ではありません。

南極を中心にした地図では、経線が中心から放射状に広がり、北向きの矢印も外側へ向かいます。紙の上では上・右・下・左に分かれていても、中心から離れる方向という点では共通しているわけです。

南極点から放射状に広がる「北」
南極点を中心にした模式図。同心円の緯線と放射状の経線があり、中心から外へ出る八本の矢印は、紙の上では違う方向でもすべて北向きと表示される。

経緯線の関係を説明する模式図で、海岸線・基地・実際の道は描いていません。円の半径に距離尺度や特定の緯度を割り当てていないため、移動距離を測る地図ではありません。矢印は地表に沿う地理的な北であり、方位磁針の向きではありません。

南極点から離れると復活する、ふつうの東西南北

「南極点には北しかない」と聞くと、南極大陸全体で東西南北が使えないように感じるかもしれません。しかし、特別なのは厳密な極点です。そこから少し離れれば、さらに極点から離れる北と、極点へ戻る南を区別できます。

東西は、その場所を通る緯線に沿う方向です。南緯80度の緯線は極点を囲む輪になっており、同じ緯度を保って東や西へ回れます。ところが南緯90度では、この輪が一点へ縮んでしまうため、緯線に沿う東西を同じ方法で決められません。

人間の体にとっての右と左まで消えるわけではありません。目の前に二本の道があれば、別々の方向として区別できます。使えなくなるのは、極点で一意に定めようとする通常の方位の基準です。

地図の上方向と、地理的な北の違い

学校の世界地図では北が上に置かれることが多いものの、南極点を中心に置いた地図で、すべての北を紙の上側へそろえることはできません。中心の下側にある場所では、さらに下へ向かうことが北になるからです。

位置や方向を一貫して扱うには、地図に格子を重ね、その縦線に沿う一方を基準にする方法があります。これは地理的な北とは別に、平面上で共通に使える方向を設ける考え方です。地図の上向きの矢印と、地球の経線に沿う北向きの矢印は、同じとは限りません。

たとえば、南極点から別々の経線へ伸びる二本の道は、どちらも地理的には北向きでも、格子上では違う角度として表せます。南極点が方向の存在しない場所なのではなく、いつもの座標の使い方に特別な処理が必要になる場所なのです。

方位磁針が反応するのは、地軸ではなく磁場

ここまでの南極点は、地球の自転軸が地表と交わる地理的な南極点です。磁石の針が反応する地球の磁場とは、位置を決める仕組みが違います。

磁場が地面に対して鉛直になる磁極は、地理的な極点と一致しません。したがって、南極点に来た途端、方位磁針が「すべて北だから」と自由に回転するわけではありません。針はその場所の磁場に応じて向きを変えます。

ただし、高緯度では磁場が地面へ出入りする傾きも大きく、地理的な北とのずれも単純ではありません。ふつうの磁石を水平に持てば、そのまま北極点への道が分かるという道具ではないのです。「地理的に北」と「針の北側が指す方向」を同じ意味で使わないことが、この疑問を解く鍵になります。

毎年置き直される南極点の標識と、動く氷床

南極点には位置を示す標識がありますが、その標識は一度置けば永久にそこにあるわけではありません。地面だと思って立っているものが、実はゆっくり流れる厚い氷だからです。

米国立科学財団の説明によると、南極点付近のアムンゼン・スコット基地は、氷とともに一年に約10メートルも移動します。標識も置きっぱなしにはできないため、米国南極観測計画では毎年1月1日に地理的な南極点へ新しい標識を設置し、その位置を示し直しています。

これは磁極が移動する話とも別です。地球の回転を基準にした地点、流れる氷、その上の建物や標識。南極点の風景には、基準となる点と、そこを通り過ぎる物体が重なっています。

「どちらを向いても北」は、その一点から地表に沿って離れるときの、厳密で限定された性質です。経線をたどる二人は別々の場所へ向かい、方位磁針は磁場を向き、標識は氷とともにずれていく。南極点は、普段一緒に使っている位置と方向の基準が、それぞれ違うものだと分かる場所でもあります。

参考資料

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