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白夜と極夜はどこから始まるのか 極圏・地軸の傾き・太陽の見え方

公開日

真夜中なのに太陽が沈まない場所と、昼になっても太陽が出てこない場所。世界地図の北極圏・南極圏の線は、この特別な昼と夜の境目に関わっています。けれど、その線を一歩越えれば必ず白夜が見られる、というほど単純ではありません。

地軸の約23.4度という傾きから、北緯・南緯約66.6度という極圏の緯度が決まります。ただし実際の空では、太陽の大きさや大気による光の曲がりも無視できません。地図上の線が何を表し、観測では何が加わるのかを分けると、境界の意味がはっきりします。

一回転しても夜側に入らない、高緯度の夏

昼と夜が交代するのは、地球が自転しているためです。普段暮らしている場所は、自転によって太陽に照らされる側と、地球自身の影になる側を行き来しています。

ただし地軸は、公転する面に垂直な方向から約23.4度傾いています。北半球の夏至ごろには北極側が太陽へ最も傾くため、北極近くの場所は一回転しても照らされる側から出ません。太陽が低くなる時間はあっても、地平線の下まで沈まないのです。

太陽そのものが地球の周りを特別な経路で回り始めるわけではありません。同じ自転をしていても、地球のどの緯度に立つかで、太陽が空を通る道筋が違う。その違いが最もはっきり現れるのが、夏の極地です。

夏至の北極圏と、昼側から出ない緯線の輪
左から日光が届く地球を横から見た図。北極側の地軸が左へ約23.4度傾き、北極圏の境界の緯線は昼夜の境界に接する。より北極に近い緯線は自転しても昼側のまま。南極側は反対に夜側にある。

球形の地球と点の太陽を仮定した幾何学的な説明図です。緯線の輪を真横から見ているため線分として表示しています。大気の屈折、太陽の円盤の大きさ、地形は省略しており、実際に太陽の上端が見える境界を厳密に示す図ではありません。

90度から地軸の傾きを引いた、約66.6度の境界

極圏の緯度は、北極・南極を示す90度から、地軸の傾き約23.4度を引いた値です。つまり、およそ66.6度。北半球では北極圏、南半球では南極圏の境界となる緯線が、この付近を一周しています。

太陽を点とみなし、大気や山を無視した球形の地球を考えると、夏至の極圏上では、太陽の中心が最も低くなった瞬間に地平線へ接します。さらに極に近い場所なら、その最低位置も地平線より上。同じ場所でも冬至には反対になり、太陽が最も高くなる時間にも地平線へ届かなくなります。

このため、極に近づくほど、太陽が沈まない日や昇らない日の続く期間が長くなります。極圏のそばの短い期間と、極点での何か月もの昼夜は、別の現象ではありません。同じ傾きが、緯度に応じた長さの違いを生んでいるのです。

地軸の傾きは長い時間をかけて変化するので、極圏の厳密な緯度も永遠に固定された数値ではありません。ただし、毎日の天気によって線が南北へ動く、という意味ではありません。

日の出・日の入りを決める、太陽の上端

実際の太陽には円盤としての大きさがあります。日の出は中心が出た瞬間ではなく、上の縁が地平線に現れた時点。日の入りも同様に、上端が見えなくなる時点を用います。中心だけで計算するより、太陽が見える時間は長くなるわけです。

さらに大気は光を曲げ、地平線付近の太陽を、空気がなかった場合より高い位置に見せます。米海軍天文台の日の出・日の入りの標準的な計算では、この屈折と太陽の半径を合わせ、中心が地平線より約0.83度低い位置を目安にしています。実際の屈折量は大気の状態によって変わるため、一定ではありません。

こうした効果によって、幾何学的な極圏より少し赤道側でも、夏至近くに太陽の一部が沈まず見える場合があります。冬も太陽を見える側へ押し上げる効果は同じなので、一日まったく太陽が現れない領域は、単純な中心の計算より極側へ寄ることになります。

太陽のない昼に残る、薄明という明るさ

極夜は、太陽が地平線の上に昇らない状態です。しかし、「一日中太陽が出ない」と「一日中真っ暗」は同じではありません。太陽が地平線のすぐ下にある間は、大気で散乱した光が空を照らします。

この明るさが薄明です。日没後の帰り道で、太陽は見えなくても建物や雲の色がまだ分かる経験があるでしょう。極地では太陽が地平線に対して浅い角度で動くため、その状態が長く続くことがあります。

南極のモーソン基地が紹介する冬の映像でも、太陽が出ない時期の昼に、空と雪原がほのかに明るくなっています。太陽の中心が地平線下6度までの「市民薄明」は、天気がよければ地上の物を見分けられる明るさの目安。さらに深くなるにつれ、薄明の段階も変わります。

極夜が始まったばかりの場所と、極点で冬の最も暗い時期を迎えた場所では、昼の景色も大きく違います。日の出の有無だけでは、一日の空の明るさを言い尽くせません。

沈まない太陽と、沈んでも暗くならない夜

白夜という日本語は、太陽が一日中沈まない現象を指すほか、太陽は沈むものの薄明が続く明るい夜についても使われます。写真の空が明るいだけでは、その場所で真夜中の太陽まで見えていたとは限りません。

太陽の円盤が地平線の上に残るのか、それとも沈んだ後の光で明るいのかは、分けなければなりません。後者は太陽が沈まない地域より赤道側でも起こるため、「北極圏より南なのに白夜の街と呼ばれる」という説明が、必ずしも地理の間違いとはいえないのです。

また、日の出・日の入りの計算は、開けた地平線を想定しています。近くの山の裏に太陽が隠れることや、厚い雲で見えないことは、地球の裏側へ沈むこととは別。高い場所から遠い水平線を望む場合も、海面近くでの見え方とは条件が変わります。

北と南で半年ずれる、長い昼の季節

北極側が太陽を向く6月ごろ、南極側は太陽から背を向ける側です。12月ごろには関係が逆転し、南極で長い昼、北極で長い夜を迎えます。北極と南極が同時に白夜になるわけではありません。

極点そのものでは、太陽は毎日東から昇って西へ沈むというより、地平線とほぼ平行に空を巡りながら、季節とともに少しずつ高さを変えます。春ごろに姿を現し、秋ごろに姿を消す、大きな周期です。その前後に薄明があるため、半年の昼と半年の完全な暗闇が瞬間的に切り替わるものではありません。

極圏の線は、寒さや国境で決めた境界ではなく、地球の傾きが昼夜に刻む境界です。地図に引かれた一本の緯線と、真夜中の低い太陽は、同じ地球の姿を平面と空から見たものなのです。

参考資料

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