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富士五湖はどうやってできたのか 溶岩が変えた水の行き先と湖底の地形

公開日

富士山の北麓に並ぶ五つの湖は、火山の近くにあるからといって、五つの噴火口に水がたまったものではありません。山中湖、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖。名前をまとめれば「富士五湖」ですが、水面の高さも深さも、周囲に残る溶岩の姿も大きく違います。

成り立ちの鍵は、富士山から流れ下った溶岩が、山麓の谷や水の通り道を変えたことです。流れをせき止める場合もあれば、すでにある湖へ入り込んで水域を分ける場合もありました。五湖は一回の噴火で同時にできた、同じ形の器ではないのです。

噴火口の湖とは違う、山麓にせき止められた水

湖になるには、水が来ることに加えて、その水をためておける地形が必要です。くぼみがあっても、底や出口から同じ勢いで水が抜ければ、深い湖にはなりません。富士五湖では、火山活動以前からあった山地や低地に、溶岩などの噴出物が加わり、水の出口や湖岸を変えてきました。

国土地理院は、富士五湖を日本の典型的な堰止湖の例に挙げています。堰止湖とは、谷や川の出口がふさがれてできる湖のこと。天然の堤防となるものは溶岩だけでなく、崩れ落ちた山の土砂などもあります。

ここで大切なのは、溶岩が湖底全体を新しくつくる必要はないという点でしょう。水の出口に低い壁ができるだけでも、その上流側の水位は変化します。逆に、湖へ大量の溶岩が入り込めば、以前は水面だった場所が陸になることもあるのです。

青木ヶ原溶岩に残る、湖と陸の組み替え

五湖の西側では、青木ヶ原樹海の下に広がる溶岩が重要な手がかりになります。864年に始まった貞観噴火では、富士山の北西麓へ溶岩が流れ出しました。国土地理院の地形資料で本栖湖・精進湖・西湖との位置関係を確かめると、森に覆われた地面と湖の輪郭が、同じ噴火の歴史につながっていると分かります。

溶岩は平らな絵の具のように、山の周囲へ均等に広がるわけではありません。斜面を下り、低い場所を選びながら進みます。もとの谷の形が溶岩の進路を決め、その溶岩が今度は水の進路を変える。二つの地形の関係が重なっています。

水の器を埋めるだけでなく、水域を分ける溶岩
上段は一続きの水面。下段は赤色の溶岩が上側から入り込み、水面を二つに分けた概念図。

湖の分割を説明する模式図です。富士五湖の実際の輪郭や、貞観噴火前の水域を復元した地図ではありません。五湖すべてが一つの湖から同時に分かれたという意味でもありません。

水域へ入り込んだ溶岩が陸の仕切りをつくる場合、湖の表面積は減っても、残った部分の深さが同じように減るとは限りません。埋められなかった深いくぼみが残るためです。現在の湖の輪郭から過去の水面を考えるときには、湖岸だけでなく、周辺の溶岩分布と湖底を一緒に調べる必要があります。

広い山中湖と深い本栖湖という、別々の大きさ

五湖で水面が最も広いのは山中湖ですが、最も深いのは本栖湖です。国土地理院の湖沼調査一覧では、山中湖の最大水深は12.9メートル、本栖湖は121.2メートル。調査時点の値を比べると、本栖湖の深さは山中湖のおよそ九倍にもなります。

湖を上から見た広さは、器の口の面積に当たります。一方、水量を左右するのは、その下にどれだけ空間が続いているかでしょう。広く浅い皿と、口が狭くても深い鉢では、同じように水をためることにはなりません。

西湖も最大水深71.5メートルと深い湖です。それに対して精進湖は12.6メートル、河口湖は14.0メートル。同じ富士山の麓にあっても、もとの地形、溶岩の入り方、その後にたまった土砂が異なるため、湖底は同じ形にならないのです。

水深は水面から湖底までの距離なので、湖の水位によっても変わります。上の数字は国土地理院の調査に基づく比較であり、毎日固定された水位で測り直した値ではありません。それでも、深い本栖湖・西湖と、比較的浅い三湖という違いは明瞭です。

同じ高さにある三湖と、高さの違う二湖

湖の深さとは別に、水面の標高にも注目できます。国土地理院の調査一覧に載る基準水面の標高は、本栖湖・精進湖・西湖がいずれも約900メートル。河口湖は約831メートル、山中湖は約981メートルです。

五湖をひと続きの水平な水槽として考えると、この違いを説明できません。少なくとも、五つの水面が同じ高さで自由につながっているわけではないのです。西側の三湖に共通点があることと、五湖すべてが一つの地下空洞で結ばれていることは、別の話になります。

地表に川が見えないから、水の出入りがないとも限りません。火山の岩石には割れ目や隙間があり、地表とは異なる経路で地下水が移動できます。ただし、湖ごとのつながりを確かめるには、水位変動や水の成分、地下の地質などの調査が必要です。湖が近いという理由だけでは、具体的な地下水路の形まで決められません。

湖底の形が変える、水の温まり方

深さの違いは、水中の季節にも表れます。山梨県の研究が指摘したのは、本栖湖や西湖の多い水量が、熱を蓄える大きな容量にもなっていることでした。短期間の気温変化の影響を受けにくく、一日暖かくなったからといって、湖の底まで同じように温まるわけではありません。

一般に、夏の湖では表面に温かい水、その下に冷たい水が残ることがあります。風が水を混ぜる力、湖の深さ、周囲から入る水の量によって、この上下の分かれ方は変化します。水面が同じように青く見えても、水中にできる温度の構造は同じではありません。

溶岩が変えたのは、湖の景色だけではありませんでした。水をためる場所と器の深さを変えたことで、湖の水量や熱の蓄え方にも違いが生まれています。富士五湖の個性は、噴火の歴史が水の性質にまで届いた結果なのです。

参考資料

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