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バレン高原の岩に深い溝が並ぶ理由 氷河と雨水がつくった石灰岩の舗道

公開日

アイルランド西部のバレンには、巨大な石畳のような岩の地面が広がっています。平たい岩の間へ深い溝が入り、自然の景色なのに、人が区画を刻んだようにも見えます。

この「石灰岩の舗道」は、石を敷き詰めたものではありません。氷河などによって露出した石灰岩の割れ目を、水が長い時間をかけて広げた地形です。広い面を現した働きと、その面を細かく区切る働きは、同じではないのです。

温かい海で積もった岩が、寒い氷床に覆われるまで

バレンの石灰岩は、古い海の堆積物に由来します。現在のアイルランドの冷涼な気候からは想像しにくいものの、岩には海で暮らした生物の痕跡も残っています。

その後、地層は変形し、傾きや割れ目が生じました。さらに氷期には厚い氷が地域を覆いました。石灰岩という材料ができた時代と、現在の表面を形づくる侵食の時代の間には、長い隔たりがあります。

氷河が取り去った土と、露出した石灰岩の面

移動する氷床は、土や風化した岩を削り取り、岩盤の表面を磨くことがあります。バレンでも、この作用が広い石灰岩の露出に重要な役割を果たしました。

ただし、現在の裸の岩がすべて同じ時点で露出したわけではありません。氷期より前に露出していた場所も、氷が退いたあとも土に覆われていた場所もあります。人の土地利用と土壌の変化も含め、場所ごとの履歴には違いがあります。

したがって、今ある溝をすべて氷河が刃物のように切った跡と考えるのは誤りです。氷河が整えた面に、もとの割れ目を使って水が別の加工を加えています。

細い割れ目を深い溝に変える溶解

石灰岩には、力を受けてできた割れ目が入っています。二酸化炭素を含む水がそこへ入り、岩を少しずつ溶かすと、細い線だった部分が幅のある溝になります。

深い割れ目状の溝はグライク、溝に挟まれた岩の区画はクリントと呼ばれます。最初に別々の石が並んだのではなく、一続きの岩が割れ目に沿って区切られたものです。

ここで失われた石灰岩のすべてが、砂粒になって足元に残るわけではありません。溶解した成分は水に含まれ、流れとともに運び去られます。岩の隙間に砂利が大量に見つからなくても、岩が削られなかったことにはならないのです。

岩の割れ目に沿って発達する、石灰岩の溝
上段は石灰岩を縦横に走る細い割れ目。下段では同じ割れ目が広がり、岩の区画の間に太い溝ができている。

雨水による溶食を上から見た模式図です。実際の割れ目は規則正しい格子ではありません。氷河による表面の侵食と、割れ目を広げる溶食は別の作用で、両者の履歴が重なっています。

整然とした模様に見えるのは、岩の割れ目に一定の方向があるためです。それでも完全な方眼にはならず、割れ目の間隔や交わり方、溶け方によって区画の形は変わります。

長い溝と小さなくぼみで異なる水の働き

岩の上には、深い溝だけでなく、浅い皿のようなくぼみや細かな筋も見られます。水がたまる場所と、流れていく場所では、溶解する位置が違うためです。

くぼみでは水がとどまり、溝では一定の筋へ水が集まる。どちらも溶解に関わりますが、水が岩に触れる位置は違います。浅い凹凸や細長い溝は、同じ雨が場所によって異なる経路を通った結果でもあるのですね。

表面が乾いている日でも、地形は長く繰り返された雨の作用を残しています。一回の雨で劇的に変わる必要はなく、同じ場所で小さな変化が積み重なることが重要になります。

むき出しの岩の間にできる、小さな植物の居場所

一見すると植物が暮らしにくそうな岩の地面ですが、溝の内部は岩の上面とは環境が違います。風を避けやすく、土や水分が残りやすい場所があるためです。

岩の上面が強い風や日差しにさらされていても、数十センチ先の隙間では条件が和らぐかもしれません。地域全体の気候だけでなく、足元の小さな凹凸が生育場所を分けます。広い岩場に植物が点在する姿にも、こうした局所的な環境差が関係しています。

バレン国立公園では、石灰岩の舗道だけでなく、草地や低木などの環境が入り交じっています。裸の岩が見えることは、地域全体が生物の乏しい土地だという意味ではありません。

氷が広い面を現し、水が細かい隙間をつくり、その隙間が植物の居場所になる。バレンの石畳状の景色には、巨大な氷床の仕事と、雨粒が続ける小さな仕事が、同じ地面の上に重なっています。

参考資料

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