本文へ移動
世界と暮らしの疑問を整理する知識ポータル
世界・国際理解

ボスムトゥイ湖はなぜ円形なのか 隕石の衝突が残した盆地と水の出入り

公開日

ガーナ南部のボスムトゥイ湖は、周囲を丘に囲まれた、丸い輪郭の湖です。川が削った細長い谷でも、ダムでせき止めた水面でもありません。約107万年前の天体衝突がつくった窪地に、水がたまっています。

ただし、空から見える湖の円と、衝突でできたクレーターの円は同じ大きさではありません。その違いを押さえると、湖の成り立ちだけでなく、水がどこから入り、どこへ消えるのかも理解しやすくなります。

湖より一回り大きい、衝突クレーター

湖の直径は約8キロメートル。それに対し、周囲の高まりを含めた衝突構造の直径は約10.5キロメートルあります。水面はクレーター全体を覆っているのではなく、その内側の低い部分を占めているのです。

衝突時には、飛来した天体の輪郭が型押しのように地面へ写ったわけではありません。莫大なエネルギーが岩盤に伝わり、岩を砕き、押し広げ、飛び散らせました。大きく広がった窪地の形が、水を受け止める盆地の基本形になりました。

湖底の泥の下に隠れた、中央の盛り上がり

ボスムトゥイは、単純なすり鉢状の穴でもありません。地下の調査では、クレーター中央部の隆起が確認されています。強い圧力で押された岩盤が戻る過程で、中心が持ち上がった構造です。

ところが水面に大きな中央の島はありません。隆起の上まで湖の堆積物が覆っているためです。2004年の国際共同掘削では、湖底の泥だけでなく、衝突で変形した岩石も調べられました。地表の形だけでは分からなかった衝突の仕組みと、その後の湖の歴史を、同じ場所で結びつけられるのが、この湖の重要な点です。

衝突でできた容器と、現在の湖の水収支
高い縁の内側に湖があり、雨と斜面からの流入で補給され、蒸発で水が失われる。湖底の堆積物の下に中央隆起がある。

縦方向を強調した模式断面です。地下構造・水位・泥の厚さの測定図ではなく、過去のすべての水位を表すものでもありません。

出口のない湖にも、水の出入りがある

現在の湖には、海へ流れ下るような恒常的な流出河川がありません。周囲の高い縁が、水を内側に集める集水域の境界になっています。湖面に直接降る雨に加え、内側の斜面を流れ下った水も湖へ入ります。

出口がないなら水位は上がり続けるのでしょうか。実際には、湖面からの蒸発が水を取り去るため、雨と流入がそれを上回るかどうかで増減が決まります。容器の形だけでは、水面の高さを説明できません。

なお、現在の閉じた湖という姿を、そのまま過去全体へ当てはめることはできません。古い湖岸の堆積物や地形からは、水位が大きく変動した時期が分かっています。湖岸線は固定された衝突の輪郭ではなく、気候の影響を受けて動く境界でもあります。

深い湖底に積もる、西アフリカの雨の記録

湖へ流れ込む水は、細かな土砂や植物の由来物質も運びます。風で届く粒子や湖の生物の遺骸も加わり、底には少しずつ泥がたまっていきました。その層は、単に「年数の長い泥」ではありません。

粒の大きさ、鉱物の種類、花粉などは、周囲の植生や流入の強さを調べる手がかりです。雨の多い時期と乾燥した時期では湖へ入る物質が変わるため、層を順に調べると、西アフリカのモンスーンが長い時間の中でどう変動したかに迫れます。

ただし、泥の色が濃いというだけで「雨が多かった」と即断することはできません。陸から運ばれたものが増えたのか、湖の内部で生物が増えたのかによって、意味が変わるからです。複数の成分を照合すると、一つの見た目に異なる原因がありうることも確かめられます。

掘削が確かめた、火山ではない円形の湖

円形の湖を囲む高い縁だけなら、火山の火口湖にも似ています。ボスムトゥイの起源も、かつては地形の形だけで決着していたわけではありません。衝撃を受けた鉱物や、衝突時に溶けた物質などの研究が、天体衝突という説明を支えてきました。

湖底を掘ると、通常の湖の泥とは異なる、衝突で砕けたり変形したりした岩石に到達します。後から積もった泥と、その下の衝突の産物を分けることで、「丸いから隕石」という推測を越えた検証が可能になるのです。

泥の深さだけでは決められない、過去の年代

深い層ほど古い、という順序は出発点になります。しかし、泥が毎年まったく同じ速さで積もるとは限りません。流入が増える時期も、底の堆積物が移動する時期もあります。

2024年に公表された研究では、約294メートルの湖底堆積物について、複数の年代の手がかりを組み合わせた年代モデルが検討されました。衝突年代が分かっていることは強みですが、それだけで途中の各層に正確な年号を割り振れるわけではありません。

ボスムトゥイ湖の円形は、短い衝突の出来事から始まりました。対して湖底の層は、その後の百万年ほどをかけてできた記録。一つの風景に、瞬間的な破壊と、ゆっくり進む蓄積が重なっています。

参考資料

関連する疑問

同じ分類の近い疑問へ進む