西アフリカ沖のカーボベルデにあるフォゴ島では、大きな弧状の崖の内側に、整った円錐形の火山がそびえています。大きな火口へ小さな山を入れたような姿ですが、外側の地形と内側の山は、同時にできたものではありません。
古い火山の東側が海へ大規模に崩れ、その後も続いた噴火で新しい火山体が育ちました。山が成長した歴史だけでなく、一度に大きく失われた歴史を含む島なのです。
輪が閉じていない、東へ開いた崩壊地形
フォゴ島のボルデイラと呼ばれる急崖は、巨大な馬蹄形の輪郭を描きます。大きな火山の山腹が東側へ失われ、その跡の内側にシャ・ダス・カルデイラスの地形と、ピコ・ド・フォゴが発達しています。
カルデラという名が使われますが、単純に山頂が地下へ沈んだ丸い穴と同じ説明では足りません。島の側面が海へ移動した「側方崩壊」が、現在の大きな開口部を考えるうえで重要です。名前より、岩の塊がどちらへ失われたかに注目すると、形の理由がはっきりします。
崩れた山体の行き先を示す、海底の堆積物
大きく欠けた輪郭だけでは、山体が本当に海へ滑ったのかを十分に確かめられません。重要な証拠が、島の東側の海底に広がる大規模な崩壊堆積物です。音波を使った海底調査によって、その分布が調べられています。
失われた山体は消滅したわけではなく、砕かれて海底へ移されました。陸上の欠落と海底の堆積を合わせることで、島の輪郭だけからは分からない崩壊の規模や向きを検討できます。
崖に露出する溶岩の重なりが、島の履歴になる
大きな崖には、古い噴火の産物が縦に重なって現れています。下の溶岩を次の溶岩が覆い、その上にまた別の層が積もる。研究者はこうした上下関係を記録し、平らな地表で一つの岩を拾うだけでは分からない、噴火の前後関係を調べます。
2021年の研究では、こうした層序に年代測定と化学組成の分析を組み合わせ、崩壊の前後でマグマがどう変化したかを検討しました。崩壊年を決める作業だけでなく、地下にとどまったマグマの変化など、長期的な火山の進化を調べる材料にもなっています。
もっとも、崩壊前後で岩の組成が違うことだけでは、すべてが崩壊に引き起こされたとは限りません。深部から供給されるマグマ自体の変化と、山体の荷重が変わった影響を分ける必要があります。フォゴは、表面の劇的な出来事と地下のゆっくりした変化を、同じ岩の記録から比べられる場所なのです。
東側への崩壊と再成長の関係を示す模式図です。断面・崩壊量・新旧火山の位置差や高さは実測値ではありません。
崩壊しても止まらなかった、島をつくる噴火
山体の一部が失われても、地下からマグマが供給される仕組みまで必ず消えるわけではありません。フォゴでは、その後の噴出物が崩壊跡を埋め、新しい火山体を成長させてきました。
現在の円錐は、古い山の山頂がそのまま残ったものではありません。失われた部分へ、後の噴火が材料を加えた姿です。古い高い崖と若い火山の輪郭が近接するため、二重構造が際立っています。
古い中心からずれた、新しい火山の位置
ピコ・ド・フォゴは、復元された古い火山の中心より東側にあります。2017年の研究では、大規模な崩壊によって山の重さのかかり方が変わり、マグマの通路に影響する仕組みが数値モデルで検討されました。
地上の山は、地下のマグマに対して単なる飾りではありません。巨大な荷重を加える存在でもあります。その一部が取り除かれれば、地下の応力分布が変わり、割れ目を通って上昇するマグマの経路も変わる可能性があります。
ただし、このモデルは、個々の噴火位置を何もかも一つの原因で説明するものではありません。崩壊後の位置の変化を、地上と地下の相互作用として検討した研究です。
崩れた年代を絞る、上下に重なる溶岩
崩壊の時期は、失われる前の溶岩と、その後に覆った溶岩の年代を比較して調べられます。崩壊がこの二つの形成の間に起きたことを利用する方法です。
2021年の研究は、新たな年代測定から主要なモンテ・アマレロ崩壊を約6万8000年前と推定しました。過去の資料には異なる年代の見積もりもあり、測定対象や手法の違いを踏まえる必要があります。
フォゴの景観には、火山の成長、側方への崩壊、再び始まる成長が重なっています。火山島は噴火のたびに大きくなるだけではなく、つくられる作用と失われる作用の組み合わせで姿を変えるのです。