ブライスキャニオンには、赤や白の細長い岩が、石の群衆のように立ち並んでいます。フードゥーと呼ばれるこの岩の塔は、地下から一本ずつ押し上げられたものではありません。もとはつながっていた岩盤が削られ、その一部が残った地形です。
名前に「キャニオン」が付いていても、中心的な景観は、一本の大河が掘った長い谷とは異なります。高原の縁を後退させる侵食と、岩の割れ目で凍る水の働きが、入り組んだ半円形の斜面をつくっています。
湖や川の堆積物が、高原の縁に露出するまで
岩の塔をつくるクラロン層は、遠い過去の湖や川などにたまった堆積物が固まった地層です。現在の乾燥した高原の景色からは想像しにくくても、岩そのものには、かつての低地の環境が引き継がれています。
その後、地層が高い場所へ持ち上げられ、侵食を受けるようになりました。高原の端では、割れ目へ水が入りやすく、削られた物質も斜面を下って運び出されます。岩の材質と、侵食される位置の両方が、塔の集まる場所を決めるわけです。
乾いた高原で大きな役割を持つ、凍結と融解
ブライスキャニオンの岩を壊す重要な力は、割れ目の中で生じます。入った水が凍って体積を増やすと、周囲の岩へ力を加えるためです。昼夜や季節の温度変化が繰り返す場所では、一度の凍結だけを考えても、長い時間のうちに進む岩の分離は説明しきれません。
したがって、乾燥地だから水が地形づくりに重要ではない、とはいえません。長時間流れ続ける川がなくても、雪解け水や雨水が割れ目に入り、そのあと凍れば、岩を壊す作用が働きます。水の量だけでなく、液体と氷を行き来する条件が効いているのです。
特定の塔の履歴を再現した図ではありません。凍結だけでなく溶解や流水も作用し、全ての塔が同じ形の窓を経るわけではありません。
壁、窓、塔という順に変わる岩のつながり
割れ目に沿って侵食された岩盤は、細い壁のような形になります。その壁に穴が開けば窓のように見えますが、まだ上部はつながったままです。さらに穴の上部が崩れると、独立した塔へ。つながっていた岩が分かれることで、柱の本数が増えていきます。
すべての塔が、まったく同じ順序と時間で生まれるわけではありません。それでもこの変化を知ると、壁や穴や孤立した柱を、別々の珍しい岩ではなく、つながりが失われていく異なる段階として理解できます。塔が増えることは、岩が新たに増えることではないのです。
硬い帽子が守る、柔らかな下の岩
地層は、どの部分も同じ速さで削られるわけではありません。比較的硬い層が上に残れば、その下の柔らかい部分を保護する場合があります。頭の大きな柱や、くびれを持つ塔は、こうした侵食への強さの違いを反映しています。
凍結による破壊だけが作用するわけでもありません。弱い酸性を持つ雨水は、岩石に含まれる炭酸塩を溶かし、形を変える一因になります。割れ目を広げる力、成分を溶かす作用、壊れた物質を運ぶ流れが、同じ斜面で重なっています。
完成形ではなく、崩れていく途中の塔
塔の上を守る硬い部分も、いつまでも残るとは限りません。帽子に当たる岩が失われたり、柱の弱い部分が壊れたりすれば、塔そのものが崩れます。現在見えている形は、長い変化の中の一場面です。
ブライスキャニオンでは、新たに壁が切り離される場所がある一方で、古い塔が姿を失っていきます。景観をつくるのは、岩を積み上げる過程ではなく、岩のつながりを少しずつ解いていく過程。無数の塔は、高原の縁が侵食によって後退している証拠でもあります。