沖縄の海を見渡すと、岸の近くは明るい水色、少し沖は緑がかった青、さらに遠くは濃い青に見えることがあります。ところが、足元の海水を透明な容器に入れても、絵の具のような青色にはなりません。海の青さは、水の中を光がどれだけ進み、どこで向きを変えて目に届くかによって生まれます。
沖縄らしい明るい海の色には、水そのものの光の吸収に加え、浅い水深、明るい海底、濁りの少なさがかかわっています。空の青が映っているだけでも、サンゴが海水を染めているのでもありません。
赤い光が減り、青い光が届くまで
太陽の光には、赤から紫までさまざまな波長が含まれています。水は、それらを同じ割合で通す物質ではありません。可視光の中では赤い側の光が吸収されやすく、水中を長く進むほど、光の色の組み合わせが変わっていきます。
透明度の高い海では、比較的残りやすい青い側の光が、水分子や小さな粒子によって散乱され、一部が水面を越えて目に戻ってきます。深い澄んだ海が青く見える基本は、この吸収と散乱です。水の中に青い粒が大量に浮いているわけではありません。
では、コップの水はなぜほぼ無色なのでしょうか。光が通る距離が短く、色による吸収の差が小さいからです。水中を進む距離が長くなると違いが目立ち、深い場所にある赤い物は、それを照らす赤い光が届きにくいため暗く見えます。
浅い海では、白い砂が光を戻す
浅い場所では、太陽光の一部が海底まで届き、明るい砂に反射して再び水面へ戻ってきます。ここで色を決めるのは、水だけではありません。光を反射する海底の存在が、深い海との大きな違いです。
沖縄のサンゴ礁周辺には、サンゴや貝、有孔虫など、生物がつくった炭酸カルシウム由来の明るい砂が見られます。陸の岩石が砕けてできた砂も混ざり、その割合は海岸ごとに異なります。白い砂をすべてサンゴの破片と呼ぶのは、少し大ざっぱでしょう。
明るい海底から戻る光も、水を往復する間に選択的に吸収され、海底の明るさと合わさって水色や青緑色に見えます。ただし、白い砂があれば必ず同じ青になるわけではありません。水深や砂の性質、上からの光の入り方も色を変える条件です。
光の道筋は模式的なものです。実際の色は、水中の粒子・水深・海底・空や水面の状態が重なって決まり、青さだけで透明度や環境の状態は判断できません。
海底の段差が、海面の色の境目になる理由
沖へ向かって急に濃い青へ変わる場所では、海底が深くなっていることがあります。浅い側では砂から多くの光が戻る一方、深い側では海底から戻る光が弱くなり、水中で吸収・散乱された光の影響が大きくなるためです。
サンゴ礁の外側の斜面や、水深のある水路では、水面の色の境界が海底の起伏に対応する場合があります。表面の青を眺めているつもりでも、そこには水面下の立体的な地形が映し出されているわけです。
ただし、濃い色の部分がすべて深いとは限りません。同じ浅さでも、暗い岩やサンゴの群落、海草のある海底は光を戻す量や色が違います。雲の影や水面の反射も重なるため、色だけから正確な水深を判断することはできません。
透明度と青さを変える、海水の中の粒
水の中には、土の粒、植物プランクトン、溶けた有機物などがあります。これらも光を吸収したり散乱したりするため、海の色は純粋な水だけの性質では決まりません。植物プランクトンの色素が多ければ、緑に見える成分が強くなることもあります。
沖縄の外洋側には、比較的栄養塩が少なく、透明度の高い海水が広がります。浅い海底まで光が届きやすい水に、白い砂と礁の地形。この組み合わせが、明るい青を生む条件の一つです。
一方、大雨のあとに陸から土砂が流れ込めば、同じ海岸でも茶色く濁る場合があります。風や波で海底の細かな粒が巻き上がることもあるでしょう。透明度はその海の永久に固定された性質ではなく、流入や海況によって変わるものです。
青空の日と曇りの日で違う海の表情
海面は鏡のような反射もするため、空の色が全く無関係というわけではありません。低い角度で遠くの水面を見ると反射の影響が増え、太陽の位置によっては白くぎらつきます。波の斜面がさまざまな方向を向くことも、見え方を複雑にします。
曇りの日には、海へ入る光の量や方向が変わり、空の灰色も映り込むため、晴れた日の写真より暗く見えることがあります。海底も水深も同じなのに、まるで別の海のよう。照明と見る角度だけでも、それほど印象は変わるのです。
偏光サングラスを通して海底が見えやすくなるのも、水面で反射した光の一部が減り、水中から出てきた光が目立つためです。空の映り込みと、水の中から届く色は、同じものではありません。
海の色だけでは決められない、生態系の豊かさ
透明で青い海を、すべての意味で「よい海」とみなすことはできません。緑色の海でも、植物プランクトンが食物網を支え、豊かな漁場になっている場合があります。反対に、澄んで見えることだけで、生態系の健全さや衛生上の安全性まで分かるわけではありません。
サンゴ礁の豊かさは、海水中の栄養が多いことだけで成り立つものでもありません。サンゴと共生する藻類や、礁の内部で物質を再利用する生物の働きが、透明な海に多様な生物を支えています。
沖縄の青は、一つの物質がつけた色ではなく、光、水、海底、生物がつくる組み合わせです。白い砂が見える浅瀬と、海底の届かない濃い青を見比べると、目の前の景色が水中の構造まで映し出していることに気づきます。