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富士山と阿蘇山は何が違うのか 成層火山とカルデラの成り立ち

公開日

富士山といえば、山頂へ向かって高くなる整った斜面。一方、阿蘇には山だけでなく、集落や田畑のある広い平地と、その周囲を囲む外輪山があります。同じ火山なのに、どうしてここまで景色が違うのでしょうか。

富士山の形には、噴出物が積み重なって山体を育ててきた歴史がよく現れています。阿蘇の大きなくぼみには、大量のマグマを噴出したあと、地盤が陥没してカルデラをつくった歴史が刻まれました。ただし、阿蘇のくぼみの中には、その後の噴火でできた新しい山々もあります。

富士山の円すい形をつくった、溶岩と火砕物

富士山は成層火山に分類されます。溶岩流や、噴火で飛び出した岩片・火山灰などの火砕物が、何度も積み重なって山体をつくった火山です。遠くからは滑らかな斜面に見えても、内部は一枚岩ではありません。

溶岩は火口から流れ下り、火砕物は周囲へ降り積もりますが、噴火の規模や場所、溶岩の流れやすさ、粒の大きさによって、たまる範囲はさまざまです。噴火のたびに山全体が均等に一層ずつ高くなった、というわけではありません。

現在の富士山の下には、より古い火山体の歴史も重なっています。また、噴火口は山頂だけでなく山腹にも生じてきました。左右対称に近い外観は、その複雑な積み重なりを遠景として見た姿といえます。

阿蘇のカルデラは、巨大な火口と同じではない

火口は、マグマや火山ガスなどが地表へ出る場所です。カルデラは、火山活動に伴って生じる大規模なくぼみで、阿蘇の場合、大量のマグマを放出したあとの陥没が形成に大きくかかわっています。

地下のマグマだまりから大量のマグマが抜けると、その上の岩盤を支える状態が変わり、割れ目に沿って地盤が落ち込むことがあります。広いくぼみをつくるのは、この陥没です。爆発で山を丸ごと吹き飛ばした穴、とだけ考えてはいけません。

阿蘇では、約27万年前から約9万年前にかけて、カルデラ形成にかかわる大規模な噴火が4回起きたとされています。現在の地形は、たった一度の爆発の跡をそのまま保存したものではありません。複数の噴火と陥没、その後の侵食や堆積が重なっています。

積み上がる山と、陥没でできるカルデラ
上段は噴出物が積み重なった成層火山の断面。下段は陥没した広いカルデラの中に、後の噴火で中央火口丘ができた断面。

成り立ちを比べる模式図で、同じ縮尺ではありません。阿蘇のカルデラは複数回の大規模噴火で形成され、単一の山が一度に崩れた図ではありません。破線は陥没前の地表の概念です。

外輪山と中央の山々で異なる、できた順序

阿蘇の周囲に連なる外輪山は、カルデラの縁にあたります。一方、中央付近の高岳、中岳、杵島岳などは、カルデラができたあとに噴火を重ねて成長した火山です。大きなくぼみの形成が火山活動の終わりではなく、次の山づくりの舞台になりました。

そのため、富士山と阿蘇を「盛り上がった火山」と「へこんだ火山」の二択で分けるのは不十分です。阿蘇には、陥没した地形と、その内側に噴出物を積み上げた地形が同時に存在します。カルデラの中に成層火山が育つことも、矛盾ではありません。

阿蘇の平地も、陥没した瞬間の底が何も変わらず残っているわけではありません。湖や川が運ぶ堆積物、火山からの噴出物などが地面を変え、その上に人の暮らしが広がりました。外輪山から見下ろす風景には、できた年代の違う地形が一緒に収まっています。

マグマの性質だけで、火山の姿は決まらない

一般に、マグマの温度や化学組成は粘り気に影響します。粘り気の違いは、溶岩の流れ方やガスの抜け方を変え、噴火の様式にも関係しています。ただし、マグマの種類を一つ知れば、その火山のすべての噴火を予測できるわけではありません。

富士山は主に玄武岩質の噴出物からなる火山ですが、静かに溶岩だけを流す山ではありません。1707年の宝永噴火では、南東の山腹から大量の火山灰や火山礫を放出しました。噴火の初めと後半で、噴出したマグマの組成にも違いが認められています。

阿蘇にもさまざまな組成の噴出物があり、カルデラ形成後の火山の形は一様ではありません。ガスの量、マグマの供給速度、地下水との接触なども噴火に影響します。形の説明と、次の噴火の説明を同じものとして扱わないことが大切です。

噴出した量と、山として残る量の違い

火山の大きさを山頂の高さだけで比べると、阿蘇の活動規模を見誤ります。大規模噴火では、火砕流や火山灰が広い範囲へ運ばれるため、噴出した物質のすべてが火口の周りに高い山として残るわけではありません。

阿蘇の大規模噴火による火砕流堆積物はカルデラの外へ広がり、谷を埋め、台地をつくりました。その一方で、陥没した中心部は低くなる。噴火の規模が大きいほど、中心に高い山が残るとは限らないのです。

一方、富士山のように噴出物の積み重なりが大きな山体として残る火山では、標高と裾野の広がりが目立ちます。高い山ほど必ず一回の噴火が大きかった、という関係ではなく、積み上がる過程と失われる過程の収支が、今の姿を決めているのです。

二つの火山を立体的に見比べる手がかり

富士山では、山頂から裾野へ続く斜面に注目すると、噴出物が山体を育てた姿が分かります。さらに宝永火口や側火山に目を向ければ、活動の出口が山頂だけではなかったことも確かめられます。

阿蘇では、まず外輪山が囲む範囲と、その内側の平地、中央の火山群を分けると、地形の順序がつかみやすくなります。周囲の高まりが古いくぼみの縁で、中央の高まりは後の火山活動。その区別が、単に山がたくさんある風景を、時間の重なった火山地形へ変えてくれます。

成層火山とカルデラは、火山を優劣や危険度で並べる名称ではありません。物質を積み上げたのか、大量の放出後に地盤が落ち込んだのか。富士山と阿蘇の違いは、地球の内部から出てきた物質と、そのあとに動いた地面の歴史の違いなのです。

参考資料

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