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バルハシ湖はなぜ西と東で塩分が違うのか 一つの湖を分ける水の流れ

公開日

一つの湖なら、水はおおむね同じ味になるのではないでしょうか。カザフスタンのバルハシ湖では、西側の塩分が低く、東側は塩分が高いという違いがあります。二つの湖が壁で隔てられているわけではなく、水は途中の狭い水路でつながっています。

違いを生むのは、淡水が入る場所の偏りと、水の混ざりにくい地形です。湖を一杯の水として平均するより、「どこから入って、どこへ動き、何が残るか」を追うと、東西の差が理解しやすくなります。

西側へ大量の淡水を注ぐイリ川

バルハシ湖の主な水源は、南から西部へ注ぐイリ川です。東側にも川はありますが、供給される水の量は同じではありません。湖全体の流入の大きな部分をイリ川が担うため、西側は継続的に淡水で薄められます。

ここでいう淡水も、成分を何も含まない純水ではありません。川の水には岩石や土から溶け出した物質が少量ずつ含まれています。それでも湖水より塩分が低ければ、流入先の濃度を下げる働きを持ちます。

東西の水交換を絞る狭い水路

湖の中央部には南岸から半島が張り出し、その先のウズナラル海峡が東西の水域を結んでいます。海ではなく湖の中でも、狭くなった水路に「海峡」という呼び方が使われる例です。

広い水面の全体がひと続きになっている場合に比べ、狭い接続部では一度に交換できる水が制限されます。西側へ入る淡水が東側もただちに同じ濃度へ変える、とはいきません。

河川の流入と狭い水路がつくる東西の塩分差
イリ川から西側へ淡水が入り、狭い水路を通じて東側と水を交換する。湖全体からの蒸発で水が失われ、東側は西側より高い塩分になる。

水域の形を単純化した概念図です。矢印は主要な関係を示し、瞬間的な流向や流量の比ではありません。蒸発は東西の両方で起こります。

ただし、水路は栓ではありません。水の移動も混合もあり、風や水位によって流れは変わります。西と東の間に永久に動かない境界面が立っているのではなく、異なる流入と不十分な混合によって、地域差が保たれているのです。

たとえば濃さの違う水を二つの容器に入れ、細い管でつないだところを考えてみましょう。長く放置すれば混ざる方向へ進みますが、片方には薄い水を注ぎ続け、同時に水分を蒸発させたらどうなるでしょうか。混ざる働きがあっても、濃度差を生む供給が続けば、全体が均一になるとは限りません。バルハシ湖でも、地形と継続的な水の出入りを一緒に考える必要があります。

水は蒸発しても、塩は同じようには消えない

バルハシ湖から外へ流れ出す川はありません。乾燥した地域にあるため、湖から失われる水の重要な経路は蒸発です。水分子が空気中へ移る一方、溶けた塩類の大部分はその場に残ります。

川の水を繰り返し入れ、水だけを減らすと、溶けた成分が濃くなります。実際には塩が湖底に沈んだり地下水と交換したりする働きもありますが、蒸発と流入の釣り合いが塩分を考える基本です。

東側では西側ほど大量の淡水による希釈を受けないため、より高い塩分が維持されやすくなります。「東にだけ塩が湧き、西には全く塩がない」という二分法ではなく、水と塩の収支が異なる二つの水域なのです。

衛星写真の色と塩分は一対一ではない

バルハシ湖の西側は、衛星写真で白っぽい緑や濁った色に見えることがあります。NASAは、浅い湖底の堆積物が風による波で巻き上げられることを、その一因として説明しています。

水の色に効くのは、溶けた塩分だけではありません。浮遊する土の粒、植物プランクトン、水深、海底や湖底から戻る光なども関わります。色の境目が目立つ写真でも、それをそのまま塩分の境界線とみなすことはできません。

食塩を水に溶かしても、必ず色が付くわけではないことを思い出すと分かりやすいでしょう。濁りの少ない透明な水が、低塩分とは限りません。塩分の比較には採水や測定が必要で、衛星写真は水面や濁りの広がりを調べる別の手がかりです。

イリ川の水量が湖と湿地の両方を支える理由

イリ川は湖に入る前に広い三角州をつくり、水路や湿地を養っています。川の水を上流で多く利用すれば、湖へ届く量だけでなく、三角州の水の巡りにも影響が及びます。

水位の変化は湖の形を変え、浅い接続部を通る水の交換にも関わります。そのため、塩分の問題を湖面だけで解決することはできません。川の上流から三角州、東西の湖水までがつながった一つの水系です。

西部を「淡水」、東部を「塩水」と色分けするのは入口として便利ですが、濃度は季節や水量に応じて変動します。バルハシ湖の面白さは分類が二つあることより、つながった水域の中でも、異なる環境が維持される仕組みにあります。

参考資料

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