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オランダはなぜ海面より低い土地に暮らせるのか 干拓地・堤防・排水の地理

公開日

水は低い場所へ流れます。それなら、海面より低いオランダの土地は、どうしていつも水の底にならないのでしょうか。答えは堤防ですが、堤防だけでは半分しか説明できません。

外から入る海や川の水を防いでも、内側に降る雨や、地下からしみ出す水まではなくなりません。必要なのは、水を遮る仕組みと、水を外へ持ち上げる仕組みの両方。オランダの風車や運河には、その二つを組み合わせて土地を使ってきた歴史があります。

水を入れない堤防と、水を出すポンプ

堤防などで周囲と区切り、内部の水位を管理する土地をポルダーと呼びます。海や湖を囲って排水した干拓地だけでなく、もともと湿っていた低地を排水して利用する場所も含まれます。

内部の土地が外の水面より低ければ、水門を開けるだけで水を外へ流すことはできません。むしろ外の水が入ってくるおそれがあります。そこで必要になるのが、低い水路から高い水路へ水をくみ上げる動力です。

周囲より低い土地から水を持ち上げる仕組み
堤防が外の高い水面を遮り、内側に降る雨などは低い水路に集めてポンプで外へ送る。

ポルダーの排水原理を示す断面です。実際には複数段の水路や貯留場所を経由する場合があり、地形・装置の大きさは模式的です。

堤防は侵入を止め、ポンプは内部にたまる水を排出します。両者は同じ洪水対策でも別の役割を持ち、一方だけで他方を代用することはできません。

土地を盛る埋め立てと、水を抜く干拓

海に新しい陸地をつくるというと、土砂を大量に入れて水面より高くする埋め立てを想像しがちです。一方、干拓では、囲った水域から水を抜き、元の底を陸として利用します。

水を抜いても地面自体が高くなるわけではないため、周囲の海や湖より低い土地が残ります。海面より低いところに農地や住宅があることは、工事に失敗した結果ではなく、干拓という方法の性質でもあるのです。

もちろんオランダ全体が海面以下ではありません。砂丘や高い土地もあり、地形によって水を管理する方法が異なります。低地の特徴を国土全体へ広げると、実際の多様さが見えなくなります。

風車が回していたのは、粉ひきだけではない

風車には穀物をひくものもありますが、キンデルダイクで知られる風車は排水の歴史と深く関わっています。風の力で水をくみ上げ、低い土地の水を外へ送る装置として働いてきました。

一度に持ち上げられる高さには限界があるため、段階的に水位の高い水路へ移す仕組みも使われました。水路や一時的に水をためる場所を含めて、地域全体で一つの排水系を構成していたのです。

外の川の水位が高いときには、内側から水を排出しにくくなります。そこで、すぐに海や川へ捨てるのではなく、一時的な貯留場所に余分な水を受け止める工夫も発達しました。風車だけを切り取ると機械の歴史ですが、水路と貯留地まで含めると、排水に適した時を待つための仕組みが見えてきます。

その後は蒸気、電力などを利用するポンプが加わり、風が弱いときでも排水できるようになりました。現在の管理を昔ながらの風車だけが担っているわけではありませんが、水を高い方へ移す必要そのものは変わっていません。

排水が土地を下げることもある泥炭地

低地の中には、植物の遺骸が十分に分解されず積もった泥炭を含む場所があります。こうした土地から水を抜くと、土が締まり、空気に触れた有機物の分解も進むため、地面が低くなることがあります。

水を抜いて使いやすくした結果、さらに水を抜きにくくなる。この関係は、低地の管理が一度の工事で終わらない理由の一つです。排水を増やせば必ずよいというものではなく、土地の性質や必要な水位を考える必要があります。

周囲の海面が変わらなくても、地面が下がれば、土地から見た外の水面は高くなります。低地にとって重要なのは海面の絶対的な変化だけでなく、土地と水面の高さの差。この差を長期にわたって測ることが、将来必要となる排水や堤防の検討につながります。

海だけでなく、川と雨も同時に扱う国土

海の水位が高いと、川や湖の水を海へ流しにくくなります。そこへ大雨で流入が増えれば、外から守る堤防と、内側から出す排水の両方に負担がかかります。

締切堤防で海から隔てられたアイセル湖も、周囲からの水を受け、必要に応じて海へ排出する水系の一部です。淡水を蓄えることと、余分な水を逃がすことは、季節や天候によって配分を変える関係にあります。

オランダの低地は、水を永久に追い払った土地ではありません。外の水位、降雨、地盤の変化を見ながら、流れを継続的に調整することで暮らせる土地です。堤防の高さだけでなく、水の行き先を用意し続けることに、その仕組みの核心があります。

参考資料

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