ギリシャとトルコの間にあるエーゲ海は、海面のあちこちに島が顔を出しています。サントリーニ島のような火山島が有名なため、噴火でできた島々が集まる海と思うかもしれません。しかし、島の成り立ちはそれだけでは説明できません。
この地域では、プレートが沈み込む一方、その上にある地殻が引き伸ばされ、山地とくぼ地が複雑に配置されてきました。そこへ海面の上下が重なり、高い部分が島として残っています。火山活動、地殻の変形、海面変化という三つの作用が、異なる時間幅で島々をつくったのです。
海で隔てられた島の下にも続く大陸の地殻
島は、必ず海底火山から積み上がった土地とは限りません。大陸に属する地殻の高まりが水面上に出て、その間の低地が海に覆われても島になります。
エーゲ海の多くの島には、古い地層や変成岩などが見られます。地表に現れる岩が、長い山地形成の歴史を受け継いでいるのです。島の周囲に海があるという現在の姿と、岩盤が形成された環境は同じではありません。
一方、サントリーニやミロスなどには火山活動の大きな影響があります。島を一つずつ火山として説明することも、逆にすべてを水没した山頂として説明することもできません。複数の成因が同じ海域に重なっています。
沈み込むプレートの上で、地殻が伸びる仕組み
クレタ島の南方では、アフリカ側のプレートに属する東地中海の海底が、エーゲ海側の下へ沈み込んでいます。プレートが近づくなら、上側もすべて押し縮められそうに思えるでしょう。
ただし、沈み込みの境界は同じ場所に固定されているとは限りません。エーゲ海では沈み込む板や海溝の後退に伴って、上側の地殻が広く引き伸ばされてきました。沈み込む板の後退は「スラブ・ロールバック」と呼ばれ、その背後の地殻が伸びる動きと関係しています。
地殻が伸びると、断層を境に沈む区画と相対的に高く残る区画ができます。ただし、島々が等間隔の積み木のように並ぶほど単純ではありません。もともとの地質構造や、横ずれを伴う運動も、実際の配置に影響します。
エーゲ海全域の復元断面ではありません。断層の動きと海面上昇という別の作用を分けて示しています。火山由来の島もありますが、すべての島が火山ではありません。
サントリーニを含む火山弧と、島の多さの違い
沈み込むプレートから放出される水などは、その上のマントルで融解が起きる条件を変えます。そこで生じたマグマが上昇し、エーゲ海南部では弧状に火山が分布しています。
サントリーニは、その火山弧に属する島です。噴出物の堆積や陥没によってできた地形は、火山活動の結果として理解できます。
しかし火山弧の存在は、エーゲ海全域の島の数を直接説明するものではありません。火山帯から離れた島も多く、火山島にも古い地殻が土台として存在します。「島が多い海」と「火山が弧状に並ぶ帯」は、重なる部分があっても同一の現象ではないのです。
氷河期の低い海面がつないでいた陸地
地殻変動が大まかな高低をつくったあとも、海岸線は固定されませんでした。氷河期に海面が低下すると浅い海底が陸へ現れ、現在は別々の島となっている土地がつながる場合があります。
エーゲ海の古地理を復元した研究では、キクラデス諸島の多くが、低い海面のもとで現在より大きな陸塊を形成していたことが示されています。東部の島々にも、アナトリア側の陸地とつながっていた例があります。
その後の海面上昇で低い部分が沈むと、陸塊は分断されます。島が増える原因は、地面が新しくできることだけではありません。大きな一つの土地が水路で分かれれば、水面上の陸地の総面積が減る一方で、島の数が増えることもあるのです。
現在も動く島々と、時間尺度の異なる三つの作用
エーゲ海の変形は過去だけの話ではありません。2020年のサモス島付近の地震について、米国地質調査所は、地域全体の南北方向の伸張に関わる断層運動を説明しています。島の形成史と現在の地震活動は、別々の物語ではないのです。
ただし、一度の地震や噴火で島の配置全体ができたわけではありません。長い地殻変動が起伏をつくり、火山活動が一部の地形を加え、海面変化が陸と海の境界を動かしてきました。
エーゲ海に島が多いのは、この三つの作用が重なった結果です。青い海面に散らばる輪郭の下には、かつてつながっていた土地と、今も変形を続ける岩盤が広がっています。