スペインの内陸には、見渡す限り畑が続く場所があります。平らに見えるため海に近い低地を想像しがちですが、その土地が海抜数百メートルの高さにあることは珍しくありません。半島の中央部には、メセタと呼ばれる広い高原があるためです。
メセタは、古い山地が削られた土台に、後の地殻変動による隆起や盆地の形成が重なった地域です。一枚の板を丸ごと持ち上げたような地形ではなく、山脈と堆積盆地、川が掘った谷が組み合わさっています。
平らに見える土地と、海面からの高さの違い
地形の「平らさ」は、近くの場所との高低差です。一方、標高は海面を基準にした高さ。この二つは別の尺度なので、起伏の小さな畑が高い標高に広がっていても矛盾はありません。
スペイン国土地理院の地形解説では、メセタの平均標高は約660メートルとされています。ただし、平均値は内部の山脈や盆地の違いを一つにまとめたものです。どこへ行っても同じ高さという意味ではありません。
半島全体がメセタなのでもありません。北東のエブロ川流域や南西のグアダルキビル川流域、沿岸の低地、ピレネーなどの山地は、別の地形単位として区別されます。中央の高い土地の周りに、性格の違う地域が配置されているのです。
古い山地を削った土台と、後から加わった隆起
メセタの土台には、古生代以前の岩石や、古生代のバリスカン造山運動に関わる岩盤があります。かつての山地は長い侵食で低く削られましたが、岩石そのものが消え去ったわけではありません。
その後、アルプス造山運動に関係する圧縮がイベリア半島の内側にも及び、古い岩盤は断層で区切られたブロックとして持ち上がったり、相対的に低い盆地をつくったりしました。古い山の形がそのまま残った高原ではないのです。
低い部分には、周囲の高地が削られてできた堆積物がたまりました。その表面が広く平らに見える場所もあります。古い岩盤、後の隆起、新しい堆積物という異なる時代を重ねて考えると、メセタの成り立ちを整理できます。
南北の関係を示す模式断面で、高さ・距離は実測値ではありません。川は紙面の左右へ一列に流れるのではなく、それぞれおおむね西の大西洋方面へ向かいます。
中央山系が分ける北メセタと南メセタ
メセタの内部に横たわる中央山系を境として、北メセタと南メセタが分かれます。高原は一続きの平らな土地ではありません。内部の山脈が、雨水の向かう先も区切っているのです。
北メセタにはドゥエロ川の流域が広がります。南メセタはさらにトレド山地などによって区切られ、タホ川とグアディアナ川の流域が並びます。地名としての高原と、川が水を集める盆地は、同じ範囲ではありません。
山脈は景色の背景というだけでなく、雨水をどちらの川へ送るかを決める分水界です。内部の山並みを省いた地図では、メセタの河川の配置が分かりにくくなるのです。
大西洋へ向かう大河と、高原を刻む峡谷
ドゥエロ川、タホ川、グアディアナ川の大きな流れは、西の大西洋へ向かいます。メセタが大きく西側へ傾く配置と関係し、スペインからポルトガル方面へ水が運ばれます。
高原の上を流れる川も、海へ出るまでには高度を下げなければなりません。場所によっては岩盤へ深く切り込み、狭い峡谷をつくります。平らな上面から突然深い谷へ落ちる景色は、高原の高さと河川の侵食が組み合わさった結果です。
ただし、現在の流路が高原の形成当初から同じだったとは限りません。盆地の堆積と外へ抜ける河川の発達には、それぞれの歴史があります。西向きの大河が多いという全体像と、個々の谷ができた過程は分けて考える必要があります。
高原の外縁に並ぶ山々と、内陸の独立した景観
メセタの北にはカンタブリア山脈、東にはイベリア山系、南にはシエラ・モレナなどがあります。内部の山脈だけでなく、外側の高まりも、高原と周囲の地域を隔てています。
そのため、海からの距離がそれほど遠くなくても、沿岸と内陸で景色や気候が変わります。標高の高さに加え、湿った空気が山を越える条件や、海の温度調節作用が弱まることも関係するのです。
スペインの内陸の高さは、鋭い山頂の多さだけでは測れません。広い畑の面そのものが高い位置にあり、その間を川が刻んでいます。メセタは、山の姿をしていない高い土地が、半島の地理を支えている例なのです。