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ショット・エル・ジェリドは湖なのか塩原なのか 雨の後だけ変わる砂漠の地形

公開日

チュニジア南部のショット・エル・ジェリドは、地図では湖のように示されるのに、写真では白い平原に見えることがあります。どちらかが間違いなのではありません。ここは水が集まる窪地であり、広い水面を保つ時期と、水が引いて塩類を含む地表が現れる時期のある場所です。

水が少ないときの姿は「塩原」、一時的に水がたまったときの姿は「塩湖」。同じ土地の、異なる状態を表しています。雨の後に広がる水面は分かりやすい変化ですが、乾いて見える時期にも、地下水の蒸発や塩の析出は続いています。

水を集めても、長く保ちにくい窪地

ショット・エル・ジェリドは、北側の山地と南側の砂漠の間にある広大な塩性の窪地です。周辺からの流出水が集まる一方、乾燥した気候の下では蒸発が強く、流れ込んだ水が長く水面として残るとは限りません。湖としての輪郭が固定しにくい理由は、この水の収支にあります。

海への流出口がない窪地では、水に溶けた成分も下流へ運び出されにくくなります。水そのものは蒸発して空へ戻れても、塩類は同じようには出ていけません。流入と蒸発を繰り返すほど両者の行き先が分かれ、窪地に塩が蓄積していくのです。

白い地表は、ただ砂の色が薄いだけではありません。乾燥した堆積物に加え、水の蒸発によって生じた塩などの鉱物が表面を覆っています。砂丘とは、材料が集まる仕組みも形も異なります。

雨の後に戻る水面と、再び現れる塩の皮膜

NASAのランドサット画像の解説は、ショット・エル・ジェリドで、大雨の後に水がたまり、その蒸発に伴って白い鉱物の層が形成される例を紹介しています。いつでも満水の湖ではなく、水面が現れたり消えたりする「一時湖」としての性質を持つのです。

たまった水には、すでに地表にある塩の一部が溶け込みます。やがて蒸発で水が減り、溶かしておける限度を超えると、成分は再び鉱物の結晶に。白い皮膜は永久に同じ形を保つ蓋ではなく、水の増減に伴って作り替えられる表面なのです。

水の増減によって溶け直し、再び析出する塩
上は流入した水が地表の塩を溶かした状態。下は蒸発で水面が引き、塩が結晶として地表に残る状態。浅い地下水からも地表付近へ水が供給される。

塩原の水と鉱物の関係を示す模式断面です。赤い上向き矢印は蒸発する水で、塩が蒸発する意味ではありません。結晶の大きさや水位差は実測値ではありません。

同じ場所を撮影しても、日付によって色や水面の広さが違うのは不思議ではありません。平坦な地形では、わずかな水位の違いでも水が広がる範囲が大きく変わり、風の影響も受けます。写真一枚の水際が、そのまま恒常的な湖岸になるわけではないのです。

乾いて見える地面からも失われる地下水

地表に湖がないから、水の動きも止まっている。そう考えやすいところですが、塩原では地中の水も重要です。浅い地下水が地表付近へ供給され、そこで蒸発すれば、水面が見えなくても塩類が残ります。

2003年の研究は、ショット・エル・ジェリドの衛星レーダー観測を使い、地下水の蒸発と塩の結晶による地表の粗さの変化を調べました。推定した蒸発量には、塩分などの仮定に伴うずれも報告されています。重要なのは数値をそのまま一般化することではなく、乾いた表面の凹凸に、地下の水の動きが反映されるという関係です。

雨が目に見える湖をつくる過程と、地下水が目立たないまま蒸発する過程。この両方があるため、雨の直後だけを見ても塩原の変化のすべては分かりません。

塩があることと、海水が流れ込むことの違い

白い塩の平原を見ると、昔の海がそのまま干上がった跡なのか、現在も海水が来ているのか、と考えるかもしれません。しかし、塩湖をつくるのに、現在の海とのつながりは必須ではありません。流域の岩石や堆積物から溶け出した成分を、水が窪地へ運び込む場合もあります。

ジェリド地方の地下水研究では、水と岩石の反応、塩水の影響、灌漑後に地中へ戻る水など、複数の過程が水質に関与するとされています。塩が濃くなる原因を、蒸発だけで説明しきれるわけでもありません。何が溶けた水なのか、どの経路から来たのかが、できる鉱物にも影響します。

さらに、析出する塩類は食塩の成分である塩化ナトリウムだけとは限りません。水に含まれる成分と濃縮の進み方によって、現れる鉱物の組み合わせも変わります。白いという見た目だけで、中身まで一種類と判断することはできません。

塩原の周囲にオアシスが成立する理由

塩分の多い窪地の周辺に、ナツメヤシの育つオアシスがあるのは矛盾ではありません。植物を育てるために取り出す地下水と、窪地で蒸発・濃縮された水は、常に同じ水質とは限らないからです。ラムサール条約の登録情報も、周辺のオアシスを支える古い地下水の帯水層に注目しています。

ただし、深い帯水層から取り出した水も、畑で蒸発し、地中へ戻る過程で塩分が濃くなる場合があります。ジェリド地方の研究では、この灌漑の戻り水が浅い地下水の水質に関わることが示されました。オアシスと塩原は、緑の土地と白い土地として隣り合うだけでなく、水の移動を通じても結び付いています。

水面のない時期も含めた「湿地」の姿

ショット・エル・ジェリドは、国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録されています。湿地と聞いて一年中水をたたえる沼を想像すると、白い塩原との落差に驚くでしょう。季節的・一時的な水域も、乾燥地の生態系の一部です。

周辺の植生や鳥類にとって、水が集まる場所があること、そしてその状態が変化すること自体に意味があります。塩湖か塩原かという二択ではなく、水が入り、蒸発し、鉱物を残す一連の過程として捉えると、同じ場所が違う名前で呼ばれる理由も明確になります。

参考資料

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