セネガルの首都ダカールは、アフリカ大陸の西端から大西洋へ突き出すベルデ岬半島にあります。船なら海へ出られても、車はどの方向へも走れるわけではありません。半島の中心部から内陸へ向かう道路は、東側の陸地へ集まっていきます。
なぜ、この細い土地に大都市が育ったのでしょうか。答えには、半島の成り立ちだけでなく、港に向く水域、大西洋の航路、港から内陸へ延びる交通の歴史が関わります。
火山岩の岬と、低い砂の土地がつくる半島
ベルデ岬半島は、一枚の同じ岩石でできた細長い板ではありません。西側には火山活動に関わる岩石の土地があり、大陸側へつながる部分には砂や粘土などの低い地形が広がっています。
ダカールの地下を扱った研究では、溶岩、砂、粘土、泥灰岩などが重なった複雑な地質が示されています。岬の地形には火山活動が関わりますが、市街地全体を「溶岩の上の都市」と呼ぶと不正確になるでしょう。
海岸で運ばれた砂と、風が運んだ砂も、低い土地の形成に加わっています。硬い岩の岬と砂の地形が組み合わさった結果が、現在の半島の輪郭なのです。
同じ半島でも異なる、外海側と港側の条件
海に突き出しているだけで、どこでも良い港になるわけではありません。外洋の波を直接受ける岸と、岬や島の陰になる水域では、船が停泊しやすいかどうかが違います。
ダカール港の公式資料は、ゴレ島、マニュエル岬、防波堤などによって保護された泊地を説明しています。自然の地形に人工の構造物を組み合わせ、船が出入りし、岸壁で荷役を行う水域を確保してきました。
港の利点は「大陸の西端」という位置だけではなく、外海に近い場所でありながら、海の荒れ方を和らげる地形があることです。航路から近いことと、港内で作業できることは、別々に必要な条件でした。
位置関係を簡略化した模式平面図です。北が上ですが、海岸線や都市の範囲を測量した地図ではありません。赤い矢印は交通の大まかな向きで、実在の道路一本を表すものではありません。
ゴレ島から半島へ移った、港の中心
ダカール港の歴史は、近くのゴレ島と結び付いています。島は船の停泊や交易の拠点となり、奴隷交易を含む歴史を持つ場所でした。その後、より大きな港湾機能を半島側に置く方向へ発展します。
港の公式沿革では、19世紀にフランスとブラジルを結ぶ定期航路の寄港地として、ダカールが位置付けられた経緯が紹介されています。大西洋の航路に面する岬の位置が、補給や中継に適していたのです。
ただし、港の近代化をもって、地域の歴史の始まりとすることはできません。人々の集落や交易があった土地へ、植民地支配の行政・軍事・交通の機能が重なり、現在につながる都市が形成されました。
半島の南側から、北と東へ広がった市街地
NASAが2008年に紹介した衛星画像と都市の沿革では、1940年代には半島南端を中心としていた市街地が、20世紀末から21世紀初頭にかけて北や東へ広がったことが説明されています。港や行政の集まる中心部を保ちながら、居住域が周囲へ延びてきた形です。
海側へはいくらでも道路や住宅を延ばせるわけではありません。人口や機能が増えると、既存の土地を密に使うか、半島の付け根を経て大陸側へ広がることになります。
このため、中心部と郊外を結ぶ移動は、限られた方向へ集中しやすくなります。都市が地図上で横に長く見える背景には、単なる道路計画の好みではなく、半島という地形の制約があるのです。
標高の低い土地に集まる、地下水と雨水
半島の付け根付近には、砂丘の間の低地など、水が集まりやすい場所があります。砂地だから水がすべてすぐ地下へ消える、と考えることはできません。地下水面が浅ければ、それ以上しみ込める余地も小さくなります。
ダカールの地質研究では、地下水に支えられた湿った低地や、周囲より低い市街地が区別されています。高い岩の土地と低い砂の土地では、建物の下にある地盤も、水の振る舞いも同じではありません。
都市化で舗装が増え、流路が変わると、雨水の集まる先も変化します。広域の地図では小さく見える窪地でも、そこに水が集まれば周囲とは違う排水条件になる。半島という輪郭の内側にも、街づくりを左右する細かな地形があります。
海への近さと、内陸への通りにくさを持つ都市
ダカールの都市計画では、半島の中心部だけでなく、周辺地域との交通や機能の分担が課題になります。JICAが支援した2035年に向けた都市計画も、ダカールと隣接地域を一体として扱っています。
ここで地形が決めるのは、都市の将来そのものではありません。公共交通の配置、住宅と仕事の場所、港の機能などによって、同じ半島でも移動のしやすさは変わります。ただし、海を陸上交通が自由に横切れないという基本条件は残るでしょう。
ダカールを育てた海への近さは、都市が大きくなると陸地の限界にもなりました。港に向いた岬という利点と、東へ集中しやすい交通という制約。その両方を持つことが、半島都市ダカールの特徴です。
参考資料
- Underground Space:Mapping urban underground potential in Dakar, Senegal
- Loほか(1992):Cenozoic volcanism in Western Senegal and its relationship to the opening of the Central Atlantic Ocean
- Port Autonome de Dakar:Infrastructures
- Port Autonome de Dakar:Our history
- NASA:Dakar, Senegal
- JICA:セネガルの経済インフラ整備プログラム