アラスカ半島の先から、太平洋とベーリング海の間を西へ伸びるアリューシャン列島。点々とした島を地図でたどると、長い弓のような形が浮かびます。波が島を一列に並べたわけでも、一本の陸橋が単に水没しただけでもありません。
列島の南にはアリューシャン海溝があり、その先で太平洋プレートが北米プレートの下へ沈み込んでいます。地下へ傾いて続くこの境界に沿って、海底の山地と火山が育ちました。海溝と島の列を一緒に見ると、弓形の配置を生んだ大きな構造が分かります。
島より南にある、もう一本の弧
海面より上に出た島だけでは、列島の全体像は見えません。海底にも大きな高まりが連なり、その太平洋側には深い溝が走っています。島の列と海溝は、離れた位置にある一組の地形です。
太平洋プレートは海溝の付近で下へ曲がり、北米プレートの下へ入り込みます。ただし、火山が生まれるのは、曲がり始めた地点の真上ではありません。沈み込んだプレートがさらに深くなる側に、マグマを生じる領域があるためです。
弧状の海溝に沿って、その内側にも火山の帯が続く。こうした組み合わせを島弧と呼びます。アリューシャン列島の形は、孤立した島を一つずつ説明するより、海底と地下を含む帯として捉えた方が理解しやすいでしょう。
上段は平面、下段は太平洋側から内側への模式断面です。実際の島数・海岸線・距離・傾斜は再現していません。青い短矢印は水分の供給、赤はマグマの上昇を示します。沈む岩板全体が溶けるという意味ではありません。
沈む岩石が運ぶ水と、マグマの発生
プレートが沈み込むと聞くと、摩擦で熱くなり、全部が溶けて火山から出てくるように感じるかもしれません。しかし、アリューシャンの火山を説明する鍵の一つは、沈む岩石に含まれる水です。
海洋の地殻や堆積物に含まれる水分は、沈み込む途中で放出され、上側のマントルへ供給されます。深い場所で水を含む鉱物が別の鉱物に変わることも、その供給源の一つ。水分が加わると岩石の溶け始める条件が変わり、一部がマグマになるのです。
これは、海水がそのまま地下の管を上って噴き出す仕組みではありません。鉱物の変化、マントルの部分的な融解、マグマの移動が段階をなしており、途中で周囲の岩石と反応したり結晶ができたりすることで、噴出する物質の性質も変わります。
同じ列島でも、東と西で異なるプレートの入り方
太平洋プレートは北米プレートに対して、おおむね北西へ動いています。一方、海溝の向きは弧に沿って変わるため、両者がぶつかる角度は場所ごとに同じではありません。
アラスカ半島に近い東部では、境界に向かって比較的正面から入り込みます。西へ行くほど斜めになり、西端に近いニア諸島付近では、相対的な動きが境界にほぼ沿う向きになる。米国地質調査所の地震活動図は、この違いを示しています。
地図では一続きの弓でも、地下で起きていることは一様ではないのです。「アリューシャンのどこかで地震が起きた」という情報だけでは、場所による動きの違いまでは分かりません。
半島の続きと、海中の山脈の頂上
アリューシャン弧には、アラスカ半島側の部分と、主に海の上へ顔を出す西側の列島部分があります。米国地質調査所の地質研究では、両者の境をウニマク海峡付近に置いて、異なる地質史を検討しています。
西側の島々は、巨大な海中の山地の一部にすぎません。水面に現れる部分だけが離れて見えるのであって、深い海底から一個ずつ独立した小山が生えているわけではないのです。
また、島の面積がそのまま火山の大きさを表すとも限りません。長い時間の噴火、地殻の変形、侵食、水面下の地形が重なって、現在の海岸線ができています。
弓形をつくる境界と、地震が示す地下の傾き
「なぜ曲線なのか」に対して、地球が丸いからとだけ答えるのは不十分です。地球上には形の異なる沈み込み帯があり、境界の配置と長い地質史、プレート同士の動きが関わっています。アリューシャンも、現在の一枚の地図だけから曲率が決まるものではありません。
一方、島の列が曲がったプレート境界に沿うことは、海底地形と地震の分布から確かめられます。海溝から内側へ進むと、沈み込むプレート内で起きる地震が地下のより深い位置にも並び、その傾きを示すからです。
米国地質調査所の整理では、列島周辺には上側の地殻内、プレートの接触面、さらに深く沈んだプレート内という複数の地震の発生場所があります。火山と地震が多いのは、どちらも同じ場所で同じ反応を起こすからではなく、一つの沈み込み帯の異なる部分に由来するためなのです。
海面に現れた、長い地殻変動の輪郭
島が一直線でないこと、海溝が列島の南にあること、西へ進むとプレートの動き方が変わること。これらは別々の偶然ではありません。海面に出た島の配置と、海底から地下へ続く境界の形が結び付いています。
列島の弓形は、いわば地下の境界が地表に残した輪郭です。ただし、その輪郭をつくる島々は同じ年齢でも、同じ火山活動の状態でもありません。大きな構造は連続しながら、個々の島には異なる履歴がある。この両方が、アリューシャン列島の成り立ちを支えています。