南アメリカの西側をたどってきたアンデス山脈は、コロンビアに入ると三つの山系として広がります。西から西部山系、中央山系、東部山系。その間にカウカ川とマグダレナ川の谷が伸び、山と川が長い帯を交互につくっています。
ただし、一本の完成した山脈が三つに裂けたわけではありません。海から大陸に加わった岩盤、古い大陸側の岩盤、かつて沈んで土砂をためた盆地が、それぞれ異なる過程を経て隆起した姿です。「三つに分かれる」という地図上の形には、三者三様の地質の履歴が隠れています。
三つの山系を隔てる、二本の大きな谷
西部山系と中央山系の間にあるのがカウカ川の谷、中央山系と東部山系の間にあるのがマグダレナ川の谷です。山系は単独の尾根ではなく、多数の山や支脈を含むまとまり。三本の細い線が均等な間隔で並んでいるわけではありません。
また、川の谷は単に「川が山を削り切った溝」でもありません。岩盤の隆起や断層の運動によって相対的に低い帯ができ、そこへ周囲の山から土砂が入り、川が運び直す。地下の変形と地表の侵食・堆積が重なって、山地と盆地の配置が育ってきたのです。
東西の並びを示す概念図です。特定の緯度の断面ではなく、高さ・幅・山頂数は実際と異なります。山系の内部の盆地や支脈、地下の構造は省略しています。
西部山系に組み込まれた、海の側の岩盤
コロンビア地質調査所の地質解説によると、西部山系には、白亜紀の玄武岩、斑れい岩、堆積岩などが広く分布しています。その重要な起源は、現在の陸地の外側にあった海洋性の岩盤です。
海の側にあった岩盤が、どうして大陸の山になるのでしょうか。プレートの移動と衝突の過程では、地質体の一部が大陸の縁へ継ぎ足される「付加」が起こります。西部山系の土台の一部も、こうして大陸へ加わりました。山を高くする前に、大陸そのものの材料が増えていたのです。
中央山系に重なる、古い基盤と新しい火山
中央山系には、熱や圧力を受けて変化した変成岩や、地下でマグマが固まった深成岩などが分布しています。さらに、その古い土台の上に、比較的新しい火山活動の産物が重なっています。
山頂に火山があるからといって、山系全体がその火山の噴出物だけでできているとは限りません。土台の形成、地下の岩石の変形、隆起、火山の成長は、違う時期の出来事。中央山系では、それらの記録が一つの山地の中に重なっているのです。
沈む場所から持ち上がる場所へ変わった東部山系
東部山系の特徴は、かつて土砂を受け入れる盆地だった地域が、後に圧縮されて山地になったことです。中生代には地殻が引き伸ばされ、断層に沿って沈んだ場所に、海や陸の堆積物が厚くたまりました。
その後、力のかかり方が変わり、地域全体が押し縮められるようになると、昔の断層の一部が再び動き、地層が曲がったり持ち上がったりしました。このように、沈降性の盆地が圧縮によって隆起する変化が「構造反転」です。山脈の中に海で積もった地層があるのは、海が山頂へ押し寄せたからではありません。
古い弱点が導いた、山の成長する場所
同じように力を受けても、岩盤はどこでも一様には変形しません。以前からある断層、岩石の種類の違い、地殻の厚さの違いが、新しい変形の起こり方に影響します。東部山系で昔の盆地の構造が再利用されたのは、その具体例です。
さらに、コロンビアはナスカ、カリブ、南アメリカという複数のプレートの相互作用を受ける地域です。大陸の縁へ押し寄せる運動だけでなく、横ずれや地質体の衝突も加わります。「南米の西側だから、どこも同じ沈み込みで同じ山になる」という単純な対応にはなりません。
今の川が運ぶ砂に残る、昔の山の記録
山の歴史を調べる資料は、山頂の岩だけではありません。削り出された砂が盆地にたまると、その中の鉱物も地層に保存されます。残された年代や種類を手掛かりに、砂が運ばれる前、どこにどんな岩石が露出していたかを推定するのが、堆積物の来歴を調べる研究です。
東部山系の研究では、堆積層の重なりや変形と、砂粒の来歴などを組み合わせ、山地がいつ成長して盆地を区切ったかを復元しています。地図に見える三山系は、こうした長い変化の現在形。間を流れる川もまた、山づくりの記録を削り、運び、下流に保存し続けています。