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ドレーク海峡はなぜ波が高くなりやすいのか 陸地に遮られない風と海流

公開日

南米の南端から南極へ向かう船は、ドレーク海峡を横切ります。荒れやすい海として知られますが、海峡の名前が付くから水が狭い隙間へ押し込まれ、必ず大波になる、という説明では十分ではありません。

まず重要なのは、強い風と低気圧が通りやすく、波が発達するための広い海面が続いていることです。そこへ遠方からのうねりや海流との相互作用が重なるため、海峡の中だけで生まれた波を相手にしているわけではありません。

南米と南極の間に開いた、南大洋の通り道

ドレーク海峡は南米南端の島々と南極半島の間にあり、南極の周囲を東向きに巡る南極周極流の通り道になります。南大洋の海と大気の動きが集中する、地理的に重要な場所です。

南半球のこの緯度帯には、東西の流れを大きく遮る陸地が少なく、広い海域が続きます。暖かい低緯度と冷たい南極側の温度差に、地球の自転が関わって、強い西風の帯ができます。南極から冷気が一直線に吹き出して大波をつくる、という単純な仕組みではありません。

低気圧の通過に伴って風向や風速が変わるため、同じ航路でも海の状態は一定ではありません。荒れやすい場所であることと、いつ渡っても同じ波に遭うことは別です。

波を育てる、風の強さ・時間・吹く距離

風は海面に力を加え、波へエネルギーを渡します。波の発達を考えるときに必要なのは、風の強さだけではありません。どれくらい長く吹くか、同じ向きの風がどれくらいの距離にわたって吹くかも重要です。

この海上の距離を「吹送距離」と呼びます。強い風でも短時間でやめば、波が育つ時間が足りません。長く吹いても、すぐ先に陸がある小さな水域なら、外洋と同じ規模の波にはなりにくくなります。

波の発達を左右する吹送距離
上段は陸に囲まれた短い水面、下段は広く続く外洋。同じ風でも波が発達する海上の距離が異なることを示す。

吹送距離の働きを単純化した模式図です。波高の予測やドレーク海峡の測量図ではありません。下段の波の拡大は概念を示すもので、距離に比例して無限に高くなるという意味ではありません。実際には風の強さ・継続時間・うねり・海流も関わります。

南大洋では広い海面と強風が組み合わさり、波が発達しやすい条件がそろいます。ただし、海が一周つながっているから波が無限に大きくなるわけではありません。風から得るエネルギーと、砕波などで失うエネルギーとの釣り合いがあります。

風が弱まっても残る、遠くの嵐からのうねり

波は、つくった風がやんだ場所で直ちに消えるものではありません。発生域を離れた波は「うねり」として遠くへ伝わり、現地の風とは違う向きから届くこともあります。船上で感じる風の強さと、海面の大きな上下動が一致しない理由の一つです。

ドレーク海峡では、その場の風で生じた波に、南大洋の別の場所から来たうねりが重なることがあります。周期や向きの違う波が混在すれば、海面の形も複雑になります。二つの海の「水が衝突する境界線」を想像するより、別々の場所で生まれた波の重なりとして捉えるほうが適切でしょう。

大きな海流と高い波を同一視できない理由

南極周極流は、膨大な量の海水を運ぶ流れです。一方、波は水面の変形が伝わる現象で、波の山が進む速さと、水塊そのものの移動速度は同じではありません。

流れがある場所では、波の進み方や間隔も影響を受け、逆向きの流れによって波が詰まり、険しくなる場合があります。ただし、周極流と偏西風による波は大きく見ればともに東向きです。「海流が風と正面衝突するから、いつも荒れる」とはいえません。

英国南極観測局が紹介する観測研究も、ドレーク海峡の流れを一様な帯ではなく、複数の強い流れや変動を伴うものとして扱っています。海流は波の状態に関わりますが、その流量の数字だけから波高を計算することはできません。

「波高5メートル」が、すべての波の高さではない理由

海の波は、同じ高さで整列しているわけではありません。天気予報などで用いる有義波高は、一般に高いほうから3分の1の波を取り、その高さを平均した値です。個々の波には、それより小さいものも大きいものも含まれます。

さらに、同じ波高でも、波の間隔が短い場合と長い場合、船の正面から来る場合と横から来る場合では、船の動きは異なります。「何メートルの波か」だけでは、海面の状態を言い尽くせません。

ドレーク海峡が荒れやすいのは、一つの巨大な渦や、二つの海の衝突があるからではありません。広い海で風が波を育て、遠方のうねりが届き、変動する流れと重なるためです。地理は荒れやすさをつくりますが、実際の波は、その日の大気と海の状態によって決まります。

参考資料

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