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ニュージーランドの川はなぜ網目状に分かれるのか 砂礫がつくる網状河川

公開日

ニュージーランド南島の平原では、白っぽい広い河原を、何本もの青い流れが分かれたり合わさったりしながら進んでいます。水の流れる部分より、砂や石の見える部分のほうが広い場所もあるでしょう。一本の太い線では描きにくい、この川の形が「網状河川」です。

網目をつくるのは、山から運ばれてくる大量の砂礫と、それを動かす水の働きです。流れが土砂を積み上げると、水はその両側へ分かれ、別の場所を削って新しい道を開きます。できあがった地形に水が従っているだけではありません。川自身が、次の流れのための地形をつくり直しているのです。

高い山から供給される、川が運びきれない砂と礫

網状河川の材料は、上流から届く砂や礫、つまり小石です。サザンアルプスでは、地殻の運動による隆起が続く一方、崩壊や流水、氷河などの作用で岩石が削られています。ただ高い山がそびえていればよい、というわけではありません。そこから下流へ土砂が供給され続けることが、広い砂礫の河原を支えています。

川底の小石は、水に溶けて運ばれるわけではありません。流れが十分に強いときに転がったり、跳ねたりして移動します。このように主に川底付近を動く土砂を、掃流砂と呼びます。

水が運べる土砂の量は一定ではなく、流量、川の勾配、粒の大きさなどによって変わります。上流から届く量と、その場所から運び去れる量が釣り合わなければ、余った砂礫がたまることになるのです。

ここで、単に「流れが弱い川だから石がたまる」と考えると、洪水時の姿を説明できません。網状河川には、大量の礫を動かす強い流れも必要です。土砂を盛んに運びながら、その一部を積み上げていく、供給と運搬の組み合わせが川の形を生んでいます。

中州が流れを分け、流れが中州をつくり直す仕組み

川底に砂礫が集まって浅い部分ができると、水はそこを避け、両側の流れやすい道へ分かれます。間に残った中州の下流で二つの流れが再び合わされば、細長い網目が一つできるわけです。

しかし、中州は永久に同じ場所にある島ではありません。流れが集中すれば川底や中州の縁が削られ、土砂がたまる場所が変われば水の通り道も変化します。分岐と合流の位置が動くため、同じ地点でも時期によって網目の形が違って見えるのです。

砂礫の移動に伴って組み替わる、網目状の流路
川を上から見た二つの模式図。上段と下段は同じ幅の河原で、中州と流路の位置が変わる例を示す。流れは上から下へ進み、中州の周囲で分かれたり合流したりする。

特定の川の観測記録ではなく、流路が変わる仕組みを示す模式図です。上下は洪水前後の比較例で、増水中の水面ではありません。青は地表の流れ、灰色は砂礫の河原。実際の洪水ごとに、流路の本数が必ず増減するとは限りません。

この変化が大きく進む機会の一つが洪水です。水量が増すと、ふだんは動かない大きさの礫まで動き、古い中州が削られたり、新しい堆積ができたりします。水が引いたあとに姿を現すのは、洪水前と同じ河原とは限りません。

増水中は中州が水に隠れ、むしろ網目が見えにくくなることもあります。水量が少ない日にくっきり見える網目にも、それ以前の洪水がつくった地形が反映されているのです。目の前の穏やかな流れだけから、河原を動かす力を判断することはできません。

同じ川でも、谷の狭さによって変わる流路

ニュージーランドの川がすべて網状になるわけではありません。同じ川でも、山の谷間では一本にまとまり、広い平野へ出ると何本にも分かれる場合があります。ワイマカリリ川のような川を上流から下流へたどると、区間ごとに川幅や流路の姿が変わるのです。

狭い谷では、横へ広がろうとしても岩盤や斜面に制限されます。広い谷底や平原なら、流れが左右へ動き、中州を挟んで分かれる余地があるでしょう。砂礫の供給だけでなく、その砂礫を広げられる空間も必要です。

流れが枝分かれしていても、河口の三角州とは限りません。三角州は、川が海や湖へ土砂を運び込んでできる堆積地形です。一方、網状河川は流路の分かれ方を表す言葉なので、海から離れた内陸でも成立します。

何本も見える流れは、それぞれ独立した川ではありません。上流から来た水が分かれ、合わされ、再び分かれる、一つの河川の流路です。支流が次々に合流する水系全体の枝分かれとも、仕組みが異なります。

乾いて見える河原の下を通る、もう一つの水の流れ

網状河川を上から眺めると、水のある青い筋と、乾いた灰色の河原に分けたくなるでしょう。しかし、その区別が当てはまるのは地表です。砂礫の層には隙間があり、水は川底から地中へ入り、隙間を通って別の場所へ移動できます。

この流れは、地下に空洞の川が一本通っているという意味ではありません。無数の粒の間を水が通る、地下水の流れです。地表水と地下水の交換によって、流れの一部が河原の下へ潜り、下流や横の流路、湧水として戻る場合があります。

見えている流路の間にも続く、地下水の移動
砂礫の河原の断面。左の流路から水が礫の隙間へ入り、地下を通って右の流路へ戻る経路の例を青い矢印で示す。破線は地下水面の概念線。

地表水と地下水の交換を示す模式断面で、実測した水位や流向ではありません。破線は地下水面、矢印は一つの経路の例です。礫の大きさ、深さ、勾配は比例せず、実際の流向は水位や地層によって変わります。すべての流路で同じ交換が起きる意味ではありません。

このため、地表に水が見えない河原を、川と無関係な空き地とはみなせません。そこは将来流路が移る場所であると同時に、地下の水の経路にもなりえます。ニュージーランド環境保全省の網状河川の研究レビューでも、複数の流路だけでなく、河原や地下水を含む立体的なつながりが重視されています。

砂礫の粒の大きさや地層の重なりによって、水の通りやすさは異なります。どこでも同じ量がしみ込み、同じ距離で戻るわけではありません。それでも、水面に見える線だけが川の全体ではないことは共通しています。

木が増えると、川の網目が減ることもある理由

河原に木が増えれば、川の自然が豊かになったように感じられるかもしれません。ところが網状河川では、植物が砂礫を固定することで、もともとの地形や生息環境が失われる場合があります。植物の多さだけでは、川の状態を評価できないのです。

根が岸や中州を固め、さらに植物の茂みが土砂を捕らえると、流れはそこを削りにくくなります。以前のように横へ広がれなくなった水は、限られた通り道へ集中していくのです。

ニュージーランドの研究機関NIWAは、ワイタキ川下流で見られた流路の変化を、流量の調節や植物の侵入と関係づけて研究しています。裸地の多い河原が安定した植物群落に覆われ、細い流路が失われると、少数の深い流路へ水が集まる方向に変化しうるのです。

これは、川辺の植物をすべて取り除けばよいという話ではありません。流量や土砂の供給、植物の種類、根の働きが組み合わさった現象です。網状河川の形を保つには、石が動くこと、流路が移ること、開けた河原が残ることにも意味があります。

固定した一本の水路とは違う、川の広さ

ニュージーランドの網状河川の河原は、ただ水が余分な場所へ広がった景観ではありません。山から届く土砂を受け止め、洪水のたびに流路を組み替える場です。開けた砂礫地や浅い流れには、それぞれに適した動植物の生息場所もあります。

ふだん水が流れている筋だけを川として囲い込めば、石や水が移動する余地を狭めることになります。一方で、人の暮らしの近くでは洪水から土地や建物を守る必要もあるでしょう。網状河川が管理の難しい川であるのは、その自然な形が「場所を変え続けること」と切り離せないためなのです。

網目状の流れは、完成した地形の上を水がなぞった模様ではありません。水が石を動かし、石が水の向きを変え、その先でまた新しい流れが生まれます。南島の広い河原には、この相互作用が地表に現れています。

参考資料

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