ニューカレドニアの南部では、緑の植生の間から、赤茶色の地面が顔を出します。白いサンゴの砂とは対照的なこの土は、もともと赤い粉が空から積もったものではありません。地下深くに由来する岩石が、地表で長い風化を受けた結果です。
色の中心にあるのは、鉄を含む鉱物です。ただし、「鉄があるから赤い」だけでは、なぜこの地域に赤土が広がり、ニッケルの鉱床とも結びつくのかまでは説明できません。岩石を地表へ運んだ地殻変動と、その岩石から成分を運び去った水が、一続きの歴史をつくっています。
赤さを生む鉄の鉱物と、ニッケル鉱石の違い
赤土の色に関わる代表的な鉱物が、鉄と酸素からなる赤鉄鉱です。細かな粒になると赤い色を強く示す一方、別の鉄の鉱物である針鉄鉱は、黄色から褐色の色合いに関係します。
金属の鉄にできるさびを思い浮かべると、鉄が赤茶色の地面に関わることは想像しやすいでしょう。ただし、土全体が鉄の塊からできたさびなのではありません。岩石の鉱物が分解され、新しい鉱物ができ、さまざまな粒や成分と混ざった土です。
ニューカレドニアはニッケルの産地ですが、赤さをそのままニッケルの色と考えることもできません。赤鉄鉱や針鉄鉱の量、粒の性質、ほかの成分との混ざり方が土の見え方を左右します。色が鮮やかだからニッケル濃度も高い、という単純な対応はないのです。
マントルの岩石を陸上へ運んだ、プレートの衝突
この赤土の重要な母材が、かんらん岩です。かんらん岩は、かんらん石や輝石などを主に含む岩石で、地殻の下にあるマントルを構成します。
通常なら深い場所にある岩石が、なぜ地面に露出しているのでしょうか。ニューカレドニアでは過去のプレート運動により、海洋プレート側の岩石が大陸性の地塊の上へ乗り上げました。海側の岩石が下へ沈む沈み込みだけでなく、上へ運ばれるオブダクションという過程が起きたのです。
その結果、グランドテール島では、かんらん岩の地質体が陸上の大きな範囲を占めるようになりました。南部にはまとまった分布があり、西岸側にも離れた山塊として残っています。赤土の景観は、現在の雨だけでなく、雨が作用する前にどんな岩石が配置されていたかにも左右されるのです。
「海の下の岩石」という表現も、海底の泥と同じ意味ではありません。ここで主役になるのは、さらに下のマントルに由来する岩石です。青い海の近くに露出する赤い地面が、地球内部の岩石とつながっている点に、この土地の特徴があります。
成分が失われることで進む、鉄の濃縮
かんらん岩が地表に出ると、雨水や地下水との反応が始まります。もとの鉱物は少しずつ分解され、マグネシウムやケイ素などの成分が水とともに移動します。
すべての成分が同じ速さで運び去られるわけではありません。風化が進む条件で鉄が比較的残りやすければ、ほかの成分が減るにつれて、残った物質の中で鉄の割合が高くなります。外から大量の鉄を足さなくても、濃縮は起こるのです。
代表的な風化断面を簡略化した模式図です。色、層の厚さ、鉱物粒の数や成分量は実測値ではなく、流れの経路も概念的です。すべての場所で層がそろうわけではなく、ニッケル濃度を色で表した図でもありません。
このような強い風化でできる物質が、ラテライトと呼ばれます。地下へ向かって観察すると、表面付近の鉄に富む硬い層、赤や黄の風化層、もとの岩石の形を残しながら変質した層、比較的新鮮なかんらん岩という違いが見られる場合があります。
ただし、どこを掘っても同じ厚さの層が、教科書の図のようにそろって出るわけではありません。斜面の侵食や水の通り道が違えば、一部の層が失われたり、成分の移動が偏ったりします。赤土は、表面を一度だけ塗った膜ではなく、地下へ続く風化の一部分なのです。
鉱物には豊かな土が、植物には厳しい理由
ニッケルを含む鉱床があるほど豊かな土地なら、作物もよく育つのでしょうか。鉱物資源としての豊かさと、植物にとっての肥沃さは別の話です。
かんらん岩に由来する土壌には、植物が必要とする窒素、リン、カリウムなどが乏しいものがあります。その一方で、ニッケルなどの金属成分が多く、一般的な植物には生育しにくい条件にもなります。
それでも、こうした土地が一面の不毛地になるとは限りません。特殊な土壌条件に適応した植物が育ち、ニューカレドニアでは固有性の高い森林や低木の植生を支えています。人間の農業に向くかどうかと、生態系として価値があるかどうかも、同じ判断ではないのです。
地表を大きく乱したあとに植生を戻すには、単にどんな木でも植えればよいわけではありません。現地の農業研究機関IACも、植物の性質や種子、増やし方、土壌との関係を調べながら再植生の技術を研究してきました。赤い地面と、そこに根を張る植物は、別々の問題ではないのです。
川へ流れた土の出所を調べる、色の科学
長い時間をかけてできた赤土も、地表が露出すれば雨で侵食され、川へ運ばれることがあります。土ができる速さと、失われる速さが釣り合うとは限りません。
ニューカレドニアのティオ川流域を対象とした2021年の研究では、土砂の色と化学組成を組み合わせ、川にたまった物質がどの場所から来たかを調べました。かんらん岩の地域に由来する赤みの強い土砂と、別の地質の地域から来る土砂の違いを、分析に利用したのです。
ただし、赤く見える土砂をすべて同じ鉱山から流れたものと決めつけることはできません。研究では実際の試料を集め、混合物をつくって分析方法を確かめています。色だけよりも元素の組成を合わせたほうが出所を区別しやすい、という結果でした。
ニューカレドニアの赤土には、マントルの岩石が陸上へ移った歴史、雨水による成分の移動、鉄の鉱物の形成が重なっています。そして今は、川に運ばれた粒の色が、陸地でどんな侵食が起きているかを調べる手がかりにもなっているのです。
参考資料
- Schwertmann・Latham(1986):Properties of iron oxides in some New Caledonian oxisols。現地土壌の赤鉄鉱・針鉄鉱などの分析。
- ニューカレドニア政府地質部門:La Nappe des Péridotites。かんらん岩体の分布とオブダクション。
- BRGM:Nouvelle-Calédonie。かんらん岩の定置、風化による成分の溶脱と濃縮。
- ニューカレドニア政府地質部門:Le nickel en Nouvelle-Calédonie。風化断面とニッケル鉱床の形成。
- IAC:Rapport d’activité 2022。超苦鉄質岩の土壌条件と、その上に成立する森林の研究。
- IAC:Revégétalisation。改変された土地の植生回復に関する研究。
- Sellierほか(2021):Combining colour parameters and geochemical tracers to improve sediment source discrimination in a mining catchment。ティオ川流域での土砂の色と化学組成を使う研究。