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衛星写真をそのまま地図にできない理由 傾き・標高・撮影時刻の補正

公開日

上空から写した写真なら、そのまま地図の代わりに使えそうです。ところが、道路の線を重ねるとずれたり、山や高層ビルが横へ倒れたように見えたりすることがあります。写真の鮮明さと、地図上の位置の正しさは、同じものではありません。

衛星画像を地図として使うには、撮影した機器の位置と向き、地面の高さなどを使い、画像の各点を地球上の位置へ結び付ける処理が必要です。代表的なものが、真上から見たような配置へ直すオルソ補正です。ただし、位置を補正しても、写っていない場所や別の日の景色まで取り戻せるわけではありません。

写真の中心と端で変わる、地面の見え方

机の上に紙を置き、斜めから撮影すると、近い側が大きく、遠い側が小さく写ります。紙そのものが台形になったのではなく、見る方向と距離によって像が変わったのです。

上空からの撮影でも、すべての地点をそれぞれの真上から見るわけではありません。一度に広い範囲を写す航空カメラなら、写真の中央付近と周辺部では、地面を見込む角度が違います。

さらに、山頂やビルの屋上は、周囲の地面より高い位置にあります。航空写真では、写真の中心から離れた高い建物ほど、外へ倒れたように見えることがあるでしょう。これは中心投影という、撮影点へ光が集まる幾何学的な仕組みによるものです。

衛星には、細長い範囲を連続して観測し、一枚の画像を組み立てる方式もあります。航空写真と同じ一個の撮影点で全部を説明できるとは限りませんが、観測方向や機器の姿勢、地形の高さを無視できないという点は共通しています。

高さの情報がなければ、山頂の横位置も決まらない理由

ある画素が、観測機器から見てどの方向にあるかが分かっているとしましょう。それでも、視線上のどこに地面があるのかは、高さが分からなければ決まりません。

実際には山頂を見ているのに、その場所を低い平地だと仮定すると、視線を必要以上に遠くまで延ばすことになります。すると、本当の山頂とは違う水平位置に画像を置いてしまうのです。

山頂を平地だと思い込むと、画像の位置がずれる
観測点から山の点Pを見る横断面。緑の破線はPの正しい水平位置を表す。地形を無視して赤い破線の視線を平面まで延ばすと、さらに遠い位置へ画像を置くことになる。

一つの画素の視線と地形の交点を説明する、局所的な平面上の模式図です。実在の衛星軌道・山・画像を再現したものではなく、高さと距離の比率を大きく誇張しています。実際の処理では地球の曲率、衛星やセンサーの動き、採用する地図の投影なども扱います。

このずれを直すために使うのが、地形の高さを数値で表したDEM、数値標高モデルです。視線が実際の地形と出会う場所を求めることで、写真のどの部分を地図のどこへ対応させるかが決まります。

高さを間違える影響は、山の高さの数値だけにとどまりません。局所的な平面で、視線が鉛直から30度傾いているとき、高さを100メートル間違えれば、水平位置のずれは約58メートルです。100メートルに30度の正接を掛けると、この関係を確かめられます。

つまり、地図と重なる衛星画像を作るために、別の地形データが必要になるのです。写真だけを極端に高精細にしても、高さの土台が粗かったり誤っていたりすれば、正しい位置が自動的に得られるわけではありません。

地上の目印と撮影時刻で結ぶ、画像と座標

地形の高さと並んで必要なのは、撮影したときに衛星がどこにいて、どちらを向いていたかという情報です。衛星は移動しながら観測するため、撮影時刻が位置の計算に直接関わります。

Sentinel-2の処理では、画像を構成する各ラインの観測時刻を記録し、精密な軌道情報などと結び付けます。時刻は、写真に日付を付けるためだけの情報ではなく、一つ一つの観測方向を地球上へたどるための情報でもあるのです。

さらに、画像の中で識別でき、地上での位置も分かっている点が、GCPと呼ばれる地上基準点です。画像の特徴と既知の座標を照合すれば、衛星の情報だけから計算した位置を、実際の地表へより精密に合わせられます。

ただし、雲や雪に覆われれば、照合に使う特徴は見つけにくくなります。USGSのLandsat処理でも、基準点や標高データ、衛星・センサーの情報が十分かどうかによって、適用できる補正の段階が変わります。

そのため、同じ衛星の画像だから、どの場面でも同じ位置精度というわけではありません。画素の大きさは「どれほど細かく描いているか」、基準点とのずれは「どれほど正しい場所へ置けているか」。この二つは別の性能です。

オルソ画像でも、ビルの背後を自動では取り戻せない限界

オルソ画像は、地形や撮影の幾何学を補正し、地図と重ねられるようにした画像です。しかし「オルソ」と付けば、すべての建物が完全に真上から見た形になるとは限りません。

地表の高さを主に使った補正では、その上に建つ高いビルの形まで十分に扱えない場合があります。国土地理院のオルソ画像作成に関する技術報告でも、建物の倒れ込みが道路などを隠さないよう、写真の中央部を用いるなどの工夫が説明されています。

より詳しい高さのデータや、別方向から撮影した画像を組み合わせれば改善できます。ただし、一枚の画像で建物に完全に隠れていた道路を、座標の計算だけで新たに観測したことにはできません。

これは雲についても同じです。厚い雲に遮られ、光学センサーへ地表の情報が届いていない部分は、位置補正だけでは分かりません。別の時刻や別の観測を使う方法と、同じ一枚を幾何学的に直す方法は、区別が必要なのです。

継ぎ目のない画像と、同じ日に写った景色の違い

広い地域を覆う画像は、複数の撮影範囲をつないで作られることがあります。雲の少ない部分を選べば見やすくなりますが、隣り合う地域が同じ日に撮影されているとは限りません。

別の日の画像や、他の画素の情報を用いて雲や影の部分を補う研究もあります。USGSなどの研究者による2013年の手法では、二時期のLandsat画像を使い、雲・影を判別した上で代替する画素の値を求めました。

このような処理で滑らかな画像を得ても、それは雲の下をその瞬間に直接撮影した記録ではありません。現地が変化していれば、時間をそろえることと、雲のない見やすい画像を作ることの間に、両立しにくい条件が生まれます。

海岸線なら満潮と干潮、農地なら刈り取りの前後、山なら積雪の有無によって景色が変わります。位置合わせが正しくても、日付や季節の異なる画像をつなぐと、境目が土地の変化のように見えることもあるでしょう。

撮影時刻を考慮することには、衛星の位置を精密に求める役割と、何時の地表を表しているかを保つ役割があります。過去の画像を計算で「今日の景色」に直せるという意味ではありません。

画像処理によって初めて比べられる、二つの時期の地表

補正や加工が入っていると聞くと、写真の信頼性が失われるように感じるかもしれません。けれども地図との比較では、必要な処理をしないことのほうが、誤った変化を生みかねません。

たとえば位置が横へ一画素ずれた二枚を重ねれば、実際には動いていない川の岸にも、細長い差が現れます。その差を侵食や埋め立てと解釈すれば、原因を取り違えるでしょう。

オルソ補正は、景色を都合よく描き換えるためのものではなく、違う条件で観測した地表を、共通の位置で比較するための処理です。地図上の川や道路と画像が自然に重なる背後には、機器の軌道、地形の高さ、基準点、撮影時刻を合わせる作業があります。

そして、その処理で直せるのは何か、別の観測が必要なのは何かによって、画像から分かる範囲も変わります。鮮明な一枚に見えても、地図としての確かさは、写った細部の多さだけでは決まらないのです。

参考資料

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