日本の島の数は、長く6,852と紹介されてきました。ところが国土地理院が2023年に公表した数は14,125。二倍以上になっていますが、突然数千の島が海から現れたわけではありません。
島を数えるには、どの地図を使い、どの大きさの陸地まで含めるかを決める必要があります。満潮でも水面上に残るか、湖の中の島や人工島も含めるか。その条件は世界で一律ではないため、国ごとの数字を横に並べただけでは、同じものを比べているとは限らないのです。
日本の島が14,125になった、地図の詳細化
2023年の国土地理院の計数は、2022年1月時点の電子国土基本図などを用いたものです。かつての6,852という数は、海上保安庁が1987年に公表した数でした。
国土地理院は、差が大きくなった主な背景として、測量技術の進歩による地図表現の詳細化を挙げています。数の増加を、そのまま新しい島ができた数と考えることはできません。
詳しい地図では、以前は小さく単純化されていた陸地の輪郭も、より細かく描けます。国土地理院の比較資料には、周囲の長さが0.1キロメートル以上の陸地として数えられるものが、過去の地図表現の二か所から、新しい表現では七か所になる例が示されています。
土地がなかった場所に、新しく記号を足したというだけではありません。以前からある陸地でも、輪郭を詳しく表した結果、計数対象の条件を満たす場合があるのです。
100メートルは面積でも直径でもなく、周囲の長さ
国土地理院の計数では、法令等に基づく島を重複なく数えた上で、それ以外については、自然に形成されたと判断できる、周囲長0.1キロメートル以上の陸地を対象としました。湖などの内水面にある陸地は対象外です。
0.1キロメートルは100メートルですが、ここで測るのは島の端から端までの距離ではありません。海岸を一周する長さです。「直径100メートル以上の島」や「100平方メートル以上の島」と置き換えると、全く別の条件になります。
単純な図形で考えると、一辺25メートルの正方形は周囲100メートルで、面積は625平方メートルです。一方、縦45メートル、横5メートルの長方形も周囲は100メートルですが、面積は225平方メートルしかありません。同じ周囲長でも、土地の広さはかなり違います。
現実には海岸が曲がるため、さらに複雑です。入り江まで詳しく描けば、面積がほとんど変わらなくても、周囲長が100メートルを超えることがあります。したがって、何を一個と数えるかだけでなく、その一個をどの精度で描けるかも、総数の違いから切り離せません。
満潮でも残る島と、干潮時だけ現れる陸地
海洋法に関する国際連合条約の第121条は、島について、自然に形成され、水に囲まれ、満潮時にも水面上にある陸地という条件を置いています。日本の2023年の計数も、この定義に基づいています。
これに対し、干潮時には水面上にあっても満潮時には沈む自然の陸地は、同条約第13条の「低潮高地」です。引き潮の写真で陸が見えるからといって、同じ条件の島として数えられるとは限りません。
水位と陸地の高さの関係を示す模式断面図です。各地形は自然に形成され周囲を水に囲まれていると仮定し、潮位差・高さ・幅は実測ではありません。高潮災害や波の上下を表す図ではなく、この図だけで個別の地形の海域上の権利を判定することはできません。
「岩礁」という日常的な呼び方だけでも、判定はできません。岩でできた小さな陸地が満潮時にも出ているのか、干潮時だけ現れるのか、常に水中なのかは別の問題です。岩石でできていることと、海面に対してどの高さにあるかを分けて考える必要があります。
また、島の定義を満たすかどうかと、どの海域の権利を生むかも、同じ問いではありません。第121条第3項は、人の居住や独自の経済的生活を維持できない岩について、排他的経済水域と大陸棚を持たないとしています。単に「小さいから島ではない」と言い換えられる規定ではないのです。
湖の島も人工島も含める、スウェーデンの統計
島という言葉は、海の自然地形だけに使われるわけではありません。湖の中の島、掘割で囲まれた土地、人工的に造った島も、日常では島と呼ばれます。
スウェーデン統計局の2013年の島の統計は、湖や大きな河川を含む地図データを使い、人工の水路に囲まれた土地や人工島も集計しています。堀で完全に囲まれた城や、運河で切り離された土地まで入るのです。海に浮かぶ自然の陸地だけを想像していたら、かなり意外な顔ぶれでしょう。
この統計で最小の島は9平方メートルとされています。日本の2023年の計数にある「周囲長100メートル以上の自然の陸地」とは、集めている対象も、細かさも同じではありません。
したがって、両国の総数をそのまま比べて、自然の島が何倍あると断定するのは難しいでしょう。海の島だけにそろえるのか、湖も含めるのか、どの大きさで線を引くのかによって、比較の結果は変わります。
一つの島を、複数の自治体が数える場合
世界の島を数える難しさには、もう一つ落とし穴があります。自治体ごとの島の数を全部足せば、国全体の島の数になるとは限りません。
一つの島に二つの自治体があれば、それぞれの自治体は、その島を「自分の区域にある島」として数えられます。二つの集計を足すと、一個の島が二個になるわけです。
スウェーデン統計局の表は、この点を明記しています。島が複数の自治体や県にまたがる場合は、それぞれで数えられるため、自治体別の数を単純に合算して、県や国の総数にすることはできません。
これは地形の認識に失敗したのではなく、集計の単位が違うことによる重複です。国境をまたぐ島でも、同じ問題が起こり得ます。「島という地形の個数」と「島を領域に含む国の数」は、一対一とは限りません。
数え直しだけでは増えない、領土の面積
島の総数が二倍になったというニュースから、日本の領土も増えたと受け取るのは誤りです。国土地理院は2023年の発表で、この計数結果が国土の面積や領土・領海に影響するものではないと説明しています。
面積の計測では、島の個数を数える際の条件とは別に、電子国土基本図の陸地を計測しています。数の集計から外れた小さな陸地が、面積計算でも一律に存在しないことにされるわけではありません。
もちろん、火山活動で新しい陸地ができたり、侵食で失われたりする現実の変化もあります。その場合は地形そのものが変わったのであって、地図の精度向上や集計条件の違いによる増減とは、原因が異なります。
「世界には島がいくつあるか」という問いに、条件を付けず一つの答えを出しにくいのは、このためです。満潮時の姿、自然か人工か、海か湖か、大きさの基準、重複の除き方。これらをそろえて初めて、多数の島を同じ物差しで数えられます。