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ヨーロッパとアジアの境界はどこにあるのか 一続きの大陸を分ける線

公開日

ヨーロッパからアジアへ陸路で移動しても、必ず海を渡るわけではありません。二つの地域は、ユーラシアという一続きの大きな陸地にあります。それなのに、地図では別々の大陸や地域として扱われるのはなぜでしょうか。

ヨーロッパとアジアの境界は、海岸線のように一つの自然現象だけで決まる線ではありません。歴史的に使われてきた地域区分を、山脈や川、海峡などに沿って具体化したものです。ウラル山脈が代表的な目印ですが、南側の引き方や、国を丸ごと分類するときの扱いには違いがあります。

ウラル山脈から黒海へ続く、代表的な境界

ナショナル ジオグラフィックの地図制作方針は、両地域を分ける目印として、ウラル山脈、ウラル川、カスピ海、コーカサス山脈、黒海、さらにボスポラス海峡とダーダネルス海峡を挙げています。

大まかには、北のウラル山脈から南へ下り、カスピ海の付近で西へ曲がり、黒海を経て地中海側へ抜ける線です。一本の川や山脈が最初から最後までつながっているわけではありません。

ウラルから黒海へ、地形をつないだヨーロッパ・アジア境界
ユーラシア西部の陸地を同じ色で描き、代表的な境界を赤線で示す位置図。ウラル山脈と川からカスピ海へ南下し、コーカサスと黒海へ向きを変え、トルコの海峡へ続く。ヨーロッパとアジアの陸地はつながっている。

基図はパブリックドメインのNatural Earth 1:110m国別陸地データを国境線なしで表示。経緯度を平面へ写し、南北方向を拡大した概略図です。赤線はNational Geographicの地図制作方針に挙がる目印を手作業で結んだ位置説明で、測量された境界や国際的に唯一の境界を示すものではありません。河道・海峡・山脈内部の細部は省略しています。

この区分では、ウラル山脈の西側はヨーロッパ、東側はアジアに当たります。山脈より東のシベリアは、ロシア領であっても地理的にはアジア側です。

ただし、地図上で線を細く描けるからといって、細部まで唯一の取り決めがあるとは限りません。山脈の分水界をたどるのか、山麓を使うのか、どの低地へつなぐのか。代表的な線を示す地図も、こうした選択を含む区分を採用しています。

一続きのユーラシアと、歴史から生まれた地域名

海で隔てられた大きな陸地を一つずつ数えるなら、ヨーロッパとアジアを分けるのは不自然に見えるでしょう。実際、陸地の連続性に着目するときには、両者をまとめてユーラシアと呼びます。

一方、アジアという地域名の使用は、古代ギリシャまでさかのぼります。ナショナル ジオグラフィックの地理教材も、古代ギリシャ人が東方の文明を表す地域名として使ったことを説明しています。地球全体を衛星で眺め、同じ大きさの陸の塊に番号を振ったのが、地域区分の出発点ではありません。

人々の知っている範囲が広がっても、以前からの地域名は残りました。その結果、一続きの陸地を一つと捉える見方と、歴史や文化の大きなまとまりとして分ける見方が、どちらも使われています。

したがって「ユーラシア大陸」と「ヨーロッパ・アジア」は、どちらか一方が誤りという関係ではありません。陸のつながりを説明する場合と、歴史的な地域区分を説明する場合とで、注目しているものが違うのです。

二つの引き方が残る、コーカサス周辺

境界の違いが分かりやすいのが、黒海とカスピ海の間です。この地域にはコーカサスの山々がありますが、その北側のクマ・マヌィチ低地を境界とする考え方もあります。

1911年版の『ブリタニカ百科事典』のコーカサスの項目にも、すでに二つの考え方が記されています。一つは低地を自然の境界として採るもの、もう一つはコーカサス山脈の主要な分水界に沿うものです。これは当時の地理認識を示す資料であり、1911年の記述を現在の唯一の基準とするわけではありません。

低地に線を引けば、その南にあるコーカサスの山々はアジア側になりますが、山脈の分水界に沿わせるなら、山域の一部はヨーロッパ側に入ります。同じ山の位置を測り間違えたのではなく、山の北を境にするか、山脈の中を境にするかという違いです。

こうした場所では、「山が境界だから自然に決まる」という説明だけでは足りません。どの地形を境界に選ぶかという判断が、その前にあります。自然の地形は線を引く目印になりますが、その目印を選ぶ目的までは決めてくれないのです。

二つの地域にまたがる国を、一つにまとめる統計

ロシア、トルコ、カザフスタンには、代表的なヨーロッパ・アジア境界の両側に領域があります。それでも地域別の統計表では、国全体をどちらか一方へまとめて載せることがあります。

国連統計部のM49という区分では、ロシアは東ヨーロッパ、トルコは西アジア、カザフスタンは中央アジアです。各国・地域を一つの地域だけに掲載するという集計上の仕組みによります。

仮に、ロシアの国全体の人口をヨーロッパにもアジアにも足せば、世界の地域別人口を合計したときに同じ人を二度数えてしまいます。国単位の数字を重複させず整理するには、一方へまとめる方法が便利です。

ただし、その便利さを地形の説明へ持ち込むことはできません。「国連の表でロシアはヨーロッパにある」ことから、「シベリアも地理的にヨーロッパである」とは導けません。国の分類と、国内を通る地域境界は、違う粒度の情報なのです。

キプロスのEU加盟と、地理的な地域区分

国際機関への参加も、別の基準です。キプロス共和国は2004年5月1日に欧州連合EUへ加盟しましたが、国連M49の地域区分では西アジアに分類されています。

一方、ナショナル ジオグラフィックは地図制作方針で、キプロスの文化的・歴史的な関係やEU加盟に触れ、ヨーロッパの範囲に含めています。同じ島を扱っていても、何を重視するかによって分類が違う実例です。

EUは条約に基づく政治・経済の連合で、ヨーロッパという地域そのものと同義ではありません。EUへの加盟を地図上の地形の移動と考える必要はなく、逆に、ある統計で西アジアに分類されることが、EU加盟を否定するわけでもありません。

「どちらに属するか」という問いには、地形上の区分なのか、統計の分類なのか、国際機関の加盟なのかという複数の答え方があります。キプロスの例では、それらが異なることを具体的に確認できます。

大陸の境目と、プレートの境目は別の線

ウラル山脈は、大地が長い時間をかけて変形してきた証拠でもあります。英国王立地理学会の教材では、およそ2億5,000万〜3億年前のプレートの衝突と山脈の隆起が説明されています。

しかし、古い衝突で山脈ができたからといって、現在そこを境に「ヨーロッパ・プレート」と「アジア・プレート」が分かれて動いているわけではありません。現在の主要なプレート区分にはユーラシア・プレートがあり、ヨーロッパとアジアの代表的な境界を、そのままプレート境界に置き換えることはできません。

そもそもアジアと呼ばれる範囲も、一枚のプレートだけに載っているわけではありません。インドとユーラシアの衝突によってヒマラヤ山脈が発達したことは、アジア内部にプレート同士の境界がある一例です。

地図には、海岸線、国境、地域の境界、プレート境界など、性質の異なる線が重なります。ヨーロッパとアジアを分ける線は、その中では歴史的な地域区分を地形に沿わせたもの。山や川が目印になっていても、国境や現在の地殻運動を表す線と同一ではありません。

参考資料

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